EP2 α-04
登場人物の紹介は後書きに書いてありますのでよかったら目を通してください
2032年5月1日
今年のゴールデンウィークは兄と友達と田舎に泊まりに行くことになった。
僕は都会から出たことがなくて、田舎に行くのは初めて。
普段勉強漬けだから、少しでもゆっくり時間が取れればいいな...。
──ピンポーン
「お、来たか。ちょっと待ってろー。」
「にしても時間はやくねぇか?」
「!!」
あの感覚だ...。背筋が凍る。
「あ、えーっと聞こえるっスか?」
猪野くんじゃない...けど聞き覚えのある声だ。
「蓮先輩、少し時間もらえるっスか?」
「あ、蓮の友達か?ドア開けてきてくれるか?」
「うん。」
あの後輩くんか...。この子から感じるのかな、この感覚。
あ、変な意味じゃなくてね。
「お、先輩!おひさっス!」
「うん、久しぶり。こんな時間にどうしたの?」
「少し話があるっス。」
「とりあえず上がろっか。」
こっちも色々聞きたいことあるし、都合がいい。
でもなんでこのタイミングで...。
「えっと、僕も色々聞きたいことあるんだけど大丈夫かな?」
「えぇ、それは承知の上っスよ。」
「そっか、じゃあ話したいこと先に話してもらっていいかな?」
「了解っす。いくつか話すことがあるっス。それも大事な話。」
「大事な話...??」
「あぁ、そんな緊張しなくていいっス。まず一つ、先輩今日遠出するつもりっスね?」
なぜそれを知ってるのか...本当この子は不思議。
やはり心を読まれているのか??
「うん。それがなにか...??」
「俺もついていくっス。」
「え?」
ふと、入学式の時の発言が頭をよぎった。
この子、やっぱり本物のホモってやつなのか??
ここで許可したら夜中襲われる的なBL展開に陥るとかないよね??
さすがに兄が居て友達がいて、襲うとか...いや、ないよね!!普通できないよね!!
...やっぱり少し心配。
「そんな期待されても困るっスよ、夜中に襲う的なBL展開なんてお兄さんの目の間じゃさすがの俺も無理っスよ笑」
...やっぱり読まれてる。
でも不思議とそれが慣れてしまった。
そんな自分が怖い。
「心が読めるわけじゃないっスよ。耳が良いだけっス。」
「耳が良いって冗談はよしてよ...君はメンタリストか何か?」
「冗談じゃないっスよ、先輩の声が聞こえたからそれに答えただけっス。」
要するに僕は思ってることを口に出してた、っていうわけか...。
なんというか恥ずかしい。
「話戻すっスよ。もちろん同行はしないっス、先輩を観察するわけでもないっスし、安心して楽しめることは保証するっス。」
なんの為にそんなことするかは全くわからない。
彼なりの事情があるのだろうか?
「それは良いとして、どうしてそんなことを?」
「先輩の今後について関係してくるっスよ。街から出たことないっスよね?」
「うん、そのはずだけど。でも街から出たことないって君の前では思ったこともないし言ったこともないはずだよ...??」
「その要件で来たんスよ、下調べくらいはするっス。」
どっからそんな情報を...。
「情報くらい、生徒会長なんスからそこらに転がってるっスよ笑」
「まあそんな冗談は良いし、無理に突き止める気にもなれないから、この件に関しては許可するよ。」
それについては後で色々聞こう、来られて困るような理由はないし。
「んで、もう一つっス。これはさっきから気にしてるようっスね。変な感覚しないっスか?」
「えっと...確かにする。というか入学式の時にもしてた。」
きっとそれは君への拒絶反応だと思うよ。
「封印...っスか。」
「え?今なんt」
「よーし蓮、準備は整ったぞー!ってお前...。」
兄は後輩くんをみて少し戸惑った顔をした。
知り合い?友達?あ、もしかしてネットの友達なのかな?
兄はネットとかでは顔が広い方で、GROというMMOではトップ3入りするくらいの実力者。
もしかしたらこの後輩くんもそうなのかな?
「...」
なんだろうこの間は。
「お兄ちゃんと知り合い?」
「あぁ、そうっス。GROって知ってるっスか?」
「うん、お兄ちゃんがバカはまりしてるやつ。」
「そのゲームで同じギルドに所属してるんスよ。ね、ジェイドさん!」
「あ、あぁ。というかハンネで呼ぶのはやめてもらえるか?」
あー、やっぱりそんな感じな関係なのね。
それなら納得がいく。
ギルドのメンバーでオフ会というものをやったりするらしいし、おそらく顔は知ってるんだろう。
「いやぁ、まさか先輩のお兄さんとは...世の中狭いっスね!」
「俺は蓮と知り合いってことにびっくりしたよ。」
「えっと、話の続きは...。」
「あー、俺からはもうないっスよ。先輩、聞きたいことあるんスよね?」
「あ、うん。えっとまず...名前、教えてもらえるかな?」
「ヴォルク・グリフォードっス。あ、海外出身でちゃんとした本名っスよ。ヴォルって呼んでほしいっス。」
なるほど、通りで顔立ちが良いわけだ。
ヴォルは金髪なのだが、きっとこれは地毛なのだろう。
「よろしくね、ヴォル。」
「よろしくされるっス!」
「じゃあ本題ね。入学式の日にどんなに辛い過去でも知りたいと思うかって言ったよね?」
「さすが、記憶力良いっスね!」
「僕があの日みた夢のこと、それについてもきっと知ってるんだよね?」
「わかるっスよ、悪夢ってやつっスね!」
「適当に流してるよね?」
「そうっs...んなことないっスよ!」
「なるほど、それについては今は答えられない。察してくれ、と。」
「そういうことっス。あの時はまだ答えられたかもしれないっス、でも状況が変わったっス。」
その状況とやらが気になるところだけど、まあ彼なりの事情があるんだろう。
今は触れないであげよう。
「ではもう一つ、過去に僕と会ったことは?」
「それも何とも言えないっス。会ったことあるような...ないようなって感じっスね。あの時は色々先走っちゃったっスけど、会ったのは海外で先輩は街から出たことないって話なんで、おそらく人違いっスね。」
ちなみに僕はアルビノらしく、髪や肌が白く、人違いなんてあまりしなさそうな見た目。
それに、今の父や兄と出会うまでは自分が何をしていたのかがわからない。
可能性は0ではないからますます気になってくる。
「さっきの状況が変わったってのもそうっス。おそらく人違いなんで、気にしないでほしいっス。あの時は変なこと言って申し訳ないっス。」
「そっか、ありがと。それであの時僕が見た君が言う悪夢ってのはどうしてわかったの?」
「さっきも言った通り、俺は耳が良いんスよ。」
耳が良い、とここでも言うか。
無意識に声に出しちゃう癖でもあるのかな、僕は。
「聞きたいことはこれで終わり。わざわざありがとう。」
「いやいや、役に立てなくて申し訳ないっス。」
「なぁお前ら。俺のこと忘れてねぇか?」
正直すっかり忘れてた。
というかこの内容は兄に聞かれても平気だったのだろうか。
「忘れてないっスよ!あ、じゃあ俺はこれで失礼するっス。」
「うん、またね。」
「おう、んじゃまた今度な。」
尾行の件について兄には話してなかったし、これは黙ってた方が良いのだろうか。
──ピンポーン
「夜咲ー、ちょっと早いが準備できてるかー?」
そんなこと考えてたらどうやら猪野くんが着いたみたい。
「あぁ、準備はバッチリだぜ!」
「僕も大丈夫。」
「了解、駅まではうちが送ってくれるから。」
「おう、んじゃ今出るわ。」
5月の強い日差し...やっぱ外は慣れないなぁ。
直射日光は僕の敵だし...。
「あら、玲くん?久しぶりね。」
猪野母だ。
「こっちの子は?真っ白で可愛いわねぇ。」
「あぁ、俺の弟の蓮。初めましてだったっけ?」
「初めまして、夜咲 蓮と申します。この度はお忙s((」
「あぁーもう堅っ苦しい、ほらリラックスリラックス。」
「こういう時は目上の方に礼儀正しく接するようにと...。」
はっきり言ってどうすればいいかわからなかった。
猪野くんなんかクスクス笑ってるし。
「礼儀正しい子なのねぇ。でももっと子どもっぽくしていいのよ?玲くんでさえこんなに子どもっぽいのに。」
「これでも兄と同じ年齢ですよ。」
「え?そうなの?ごめんなさい、てっきり歳の離れた兄弟かと...。」
「えぇ、一応。」
「俺ってそんなに子どもっぽいか?」
「お兄ちゃん、“ぽい”はいらない。」
「このやろ蓮、チビのくせに子どもとはなんだまったく。」
と、会話しているうちに駅に着いた。
駅に着いた時、ヴォルの気配を感じた。
「本当に尾行してるのか...。」
「ん?なんか言ったか?とりあえずついたし降りろよ。」
「あ、うん。」
ついに電車、ゴールデンウィークだからか人も多く、なんだか番号のついた看板がいっぱいあって、何が何だかわからなくなった。
好きな番号のところに行けばいいのだろうか。
「おーい蓮!こっちこっち!」
「あ、うん。」
兄は7番が好き...と。
ここにきて驚いたのが、1つの駅に電車がいくつもあること。
てっきり1つの駅に1台かと思ってた。
というか5分程で1本の電車がくるって...一体どんな速さなんだろうか。
──間もなく、7番線に電車が到着します。
「ほら、きたぞ。蓮は本物見るの初めてだな。」
そう言いながら電車に乗り込んだ。
電車の中もすごく混んでいる。
「え、まじかよ。この人混み怖くて1人じゃ駅もこれねぇのか?」
「猪野くんみたいに頭悪い人に言われるとムカつく...。」
「確かにな。」
「秀才兄弟にそう言われると傷つくよぉ...。」
「というか、いつもこの人混みなの?」
「そりゃそうだろ、まさか知らなかったのか?だっs...っ痛てぇ。」
「ちょ、蓮。本気で蹴ってやるなよ猪野死ぬぞ?」
「本気じゃないし、本気でも死なないから大丈夫だよお兄ちゃん。」
平然と会話していたのだが、少々兄の様子がおかしい。
なんかソワソワしている。
「お兄ちゃん、トイレでも行きたいの?なんかソワソワしてるけど。」
「あ、いや、なんでもない普通だ普通!ハハハッ。」
こうしてちょっとした僕の初めての長旅が始まった。
名前:夜咲 玲
身長:178cm
年齢:17歳
趣味:ネトゲ、筋トレ
【その他】
面倒くさがり屋
結構素直
いろんな意味で馬鹿
名前:猪野 優翔
生年月日:4月21日
年齢:18歳
趣味:バスケ、ネトゲ
【その他】
夜咲家とは幼い頃からの関係があり、今でもその仲は変わらず。
学校では浮かれてるが、ちょっとした人気者