7話
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次の日、うさ子は朝ごはんを急いで食べると、かめさんたちの元へ駆け足で向かいました。
今日を境に、毎日、朝が来るのが楽しみで仕方なくなりました。
そして、数日が経ちました。
いつものように、朝ごはんを食べてから、かめさんたちの所へ向かう途中、うさみちゃんたちに会いました。
「あら、あいかわらず、足がおはやいこと」
「おほほほほ」
みんなで嫌味を言ってきます。
以前のうさ子なら、こんなの耐えられませんでしたが、今ならへっちゃらです。
「そうよ、私は足がはやいの。すごいでしょ」
うさ子は誇らしげにそう言うと、急いでかめさんたちの所へ向かいました。
うさみちゃんたちは、ぽかんとした顔でうさ子のそんな様子を見ていました。
うさ子は思いました。
私の足のはやさは、立派な才能よ。
だって、この足のおかげで、あんなに素敵な仲間たちと仲良くなれたんだもの。
毎日がこんなに楽しいんだもの。
うさ子は、自分にしかない宝物を見つけていました。
かめさんの才能に嫉妬することはもうありません。
「あ、うさ子ちゃーん」
「うさ子ちゃん、今日は何をしようか」
うさ子がかめさんたちの所へ行くと、すぐにみんなが声をかけてくれました。
「おはよう、ねこさん」「おはよう、小鳥さん」
うさ子は、大切な仲間1人ひとりに挨拶をしていきます。
「お、おはよう、かめさん」
ただ、かめさんに挨拶をする時だけは顔を赤くしたり、にやけたり、態度があからさまでした。
お調子者のねこさんは、その様子を見て、にやにやしています。
「ねえ、今日はうさ子ちゃんとかめさん、競争してみたらどう?」
ねこさんが急にこんな提案をしてきました。
「ちょ、ちょっとねこさん、かめさんと競争って、私が負けるわけないじゃない」
「だって、うさ子ちゃんにはみんな負けちゃったから、あと勝てる可能性があるのは、まだ競争してないかめさんだけじゃない。ふたりきりで競争したらどお?」
「ふ、ふたりきり……」
ふたりきり。うさ子は、そんな言葉にちょっと胸が高まりました。
そんなうさ子の反応を見て、ねこさんはにやにやしています。
ねこさんは、ただかき回して楽しみたいだけなのでしょうか。
「わ、私がかめさんに負ける訳がないわ。もし負けたら、なんでもしてあげる」
うさ子がそういうと、おおぉー、という歓声があがりました。
「じゃあ、かめさんにつきあってくれって言われても?」
ねこさんが、調子に乗ってこんなことを言ってきます。
「え、つ、つきあう?」
うさ子は、その言葉を聞いただけで、顔がまっかになりました。
「う、うん……ま、負けないから、関係ないもん」
うさ子はまっかな顔のまま、答えました。
おおぉーっと、仲間たちがこれ以上ないくらい盛り上がります。
「頑張れ、かめさーん」
「きゃー、何これ、どうなるのー」
「よーし、さっそくすたーとと、ごーるを決めよう」
周りがどんどんと勝手に盛り上がって、準備が進んでいきます。
「僕の意見は誰も聞かないんだな、はっはっは」
完全にかめさんのあたまごしに進んでいますが、かめさんはいつものようにのんびりと構えていました。
どうせ勝てないから関係ないと思っているのか、なんとなく面白そうだから乗っかってるだけなのか、分かりません。