表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/8

3話

 びっくりした目、つめたい目、敵視する目。

 まわりの仲間たちの目が一斉にうさ子に集まります。

 さあ、こんな時こそ、自慢の足の出番だ。

 どうせ私の足なんて、こんな使い道しかないんだ。

 さあ、げひんな捨てぜりふでもはいて、逃げ出そうかと、うさ子が考えていたその時です。


「ぷっはー、どうだ見たか、今日はもっと高く飛んだぞ、わっはっは」

 かめさんは、楽しそうに笑い出しました。


「ふふっ」「ぷっ」「わははっ」


 そんなかめさんの様子を見て、急にみんなが笑い出しました。


「なーんだ、そこのうさぎさんに飛ばしてもらってただけかー」


 さっきまでの敵意はどこへやら、みんながうさ子を見る目が急にあたたかいものになりました。


「いいわねー私にもあれやってー」

 すっぽんが言いました。

「ばかねー、あんたなんか重すぎて無理よー」

 小鳥さんが言いました。

「なんですってー」


「ねーねーうさぎさん、僕も飛ばしてー」


 あたりは、わいわいがやがやと、楽しいふんいきに包まれました。

 そして、その話題の中心は、もちろんうさ子でした。


「あ、え、その……」

 こんなのはうさ子には初めての経験でしたので、戸惑ってしまいました。


 それと同時に、うさ子はとても不思議な感情がうかんでくるのを感じました。

 初めて感じる気持ちなので、うさ子はこれをなんと表現して良いか分かりません。


「じゃあ、昨日もうさぎさんとかめさんは一緒に遊んだんだね、いいなー」


 そんな声に、うさ子は戸惑ってしまいました。


「そうだったかな、わっはっは」

 うさ子が答えるすきもなく、かめさんはそう言って笑いました。


 いったいこのかめは、何を考えているのか。

 何も考えていないのか。


 うさ子が不思議に思ってかめさんの方を見てみると、満面の笑みのかめさんと目が合ってしまいました。

 つい顔が赤くなり、目をそらしてしまいました。


 なに、あの目。

 私は今まで、あんなにあたたかい笑顔を見たことがない。


 うさ子はかめさんとは、まだ一度もちゃんと話していません。

 それなのに、兄にも話したことのない心の内を打ち明けたいような気持ちになりました。


「どうしたんだい、うさぎさん」

 そんなうさ子を見て、かめさんが満面の笑みで話しかけてきます。


 うさ子は、なぜか心が透けて見られている気がしました。

 そんなはずないことはわかっているのですが。

「な、なんでも……」

 なんでもない。うさ子はそんな一言が、なぜか上手く言えませんでした。顔が赤くなってしまいます。


 しかし、ぷらいどだけは人一倍高いうさ子は、そんな様子をみんなに見られたくありませんでした。


 うさ子は突然かめさんを持ち上げ、逆さまにひっくり返しました。


「な、なにをするんだ、うさぎさ……」


 逆さになったかめさんを、しゅぴーっと、かーりんぐの要領で、いんさいどきっくで池へ蹴り入れました。


 池との間に障害物はなく、ぼっちゃーんと、すとれーとに、いんしました。


 みんなは、何が起きたのか分からず、ただあぜんとしてしまいました。


「ぷっはー、なんだいこれは、わっはっは」

 かめさんが笑うと、みんなも笑い出しました。

 変なことをされても、わるくちひとつ言いません。なぜかめさんの周りにこんなに仲間が集まるのか。

 その笑顔が物語っていました。


「うわあああ、何よ、何よー」

 うさ子は、訳の分からないことを叫びながら、ものすごいすぴーどで、逃げ出して行きました。

 その足のはやさに、みんなおどろきの表情を浮かべていました。



 うさ子は、帰ってからかめさん達とのことをずっと考えていました。


 なぜ私が、私なんかが好かれているのだろうか。


 うさ子は、かれらにいじわるしかしていません。

 その原因は、なんとなく分かっていました。


 うさ子のしたことを、あのかめさんが、すべて笑いに変えてしまうのです。

 ついさっきかめさんに感じた暖かい気持ちなどすっかり忘れ、うさ子は嫉妬が抑えられませんでした。

 きっと、あのかめさんには特別な才能があるに違いない、と。


 ふざけんな、私には何も……何もないのに。


 うさ子は、心の中で、訳の分からない怒りをかめさんにぶつけていました。


 翌日。


 もう、あのかめには会わない。

 そう決めて、うさ子は家を出ました。


「ようし、今日は気の向くまま、てきとーに散歩してみよう」


 どうせ、友達なんていないんだ。一人をまんきつしよう。


 ただふらふらーっと、のんびりと、うさ子は歩き出しました。


 そのはずだったのに、気がついたら、昨日の池に着いていたのです。


「やあ、昨日のうさぎさんだ、こんにちは。どうしたんだい、そんなに息をきらせて」

 最初にうさ子に気が付いたのは小鳥さんでした。


 うさ子は、小鳥さんに言われて、初めて自分が駆け足でここに向かっていたことに気が付きました。

 うさ子は訳が分かりませんでした。


 おかしいな、のんびり歩いていたはずなのに。


 うさ子はなぜか、自然とかめさんの行方をさがしていました。


「わっはっは」

 かめさんの笑い声がするので、そちらを見てみました。

 すると、なんと、昨日うさ子がやったように、かめさんが逆さまにひっくり返されていました。


「ようし、いくよー」

 ねこさんが、昨日のうさ子のようにかめさんに、いんさいどきっくをかましました。


 ぽっちゃーん、とかめさんは池に落ちていきました。

「わっはっは」「あっはっは」

 笑い声が広がります。

 蹴られたかめさんも笑っています。


 どうやら、昨日うさ子がやった意味不明の行為が、楽しい遊びとして流行っているようです。


 気が狂ってる。

 うさ子はそう思いました。

次話すぐに投稿します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ