10 伏見十六の初公演
演目第二番「お祭りが始まる」
演目第三番「桜咲く日の本」
伏見城で、披露した曲
休憩
幕間で、名古屋山三、出雲阿国、長部長兵衛の三人による舞踊曲
「ふたつの罠」
伏見十六 衣装変え
演目三番までの桃色の衣装から、赤の衣装に。裾が膝までであることは同じ。黒い羽織を重ね着。羽織は、足首までの長さ。
演目第四番「邪魔」
これまでは、にこやかな表情で演じていたが、無表情で舞う。
演目第二番、第三番が、伏見十六としては、比較的緩やかな速さの踊りであったが、演目第一番同様、速く激しい踊り。
演目第五番「妾の好きな若武者様」
演目第六番「着物の裾をひるがえし」
羽織を脱ぐ
さびの、着物の裾をひるがえし、の詞のところで、
十六人、一斉に旋回。着物の裾がひるがえり、太股まであらわとなる。
休憩
伏見十六 衣装変え。黄色の通常の丈の着物
演目第七番「伏見十六」
十六人、謡の中でひとりひとりを紹介。
最後に紹介された、お香。爆発的な歓声を浴びる
演目第八番「抱きしめるだけ」
演目第九番、最終演目「天下の殿下」
尾張中村 生を受け
信長公に お仕えし
いくさのたびに 手柄たて
太閤殿下は 天下人
天下 殿下
天下 殿下
天下 殿下
天下の殿下
思えば中国 大返し
山崎合戦 明智討ち
柴田を破った 賤ヶ岳
太閤殿下は 天下人
天下 殿下
天下 殿下
天下 殿下
天下の殿下
伏見のお城の その中で
可愛い乙女が お取り巻き
お口説き上手で 床上手
太閤殿下は 天下人
天下 殿下
天下 殿下
天下 殿下
天下の殿下
三番の途中、見物の皆ははっとし、太閤の様子をうかがった。
太閤秀吉の高笑いが聞こえてきた。
見物の衆は、皆、沸き立った。
三番が終わると、太閤殿下は、舞台に上がった。
大歓声が起こった。
あらあらそれは いけませぬ
たとえ殿下の 求めとて
恋はご法度 伏見の娘
太閤殿下の 天下でも
天下 殿下
天下 殿下
天下 殿下
天下の殿下
太閤は剽軽にただ体を動かすだけ。謡詞に合わせて、伏見十六の乙女たちに戯れかける。それを柔らかく拒む乙女たち。
伏見十六舞踊場は、大きな笑いに包まれた。
終わった。
再び起こる大歓声。
太閤が舞台を降り、席に戻った。
しばらくして
「もう一度」
という声がかかった。
「もう一度」
「もう一度」
「もう一度」
場内全体の声がひとつになる。
誰かが
「殿下」
と叫んだ。
「殿下」
「殿下」
「殿下」
今度は、殿下という叫びで場内の声がひとつになった。
三成は、実は太閤から密命を受けていた。
もし、そのような声があがらなかったら、もう一度を促す声をかけよと。
その必要はなかった。
声は場内から自然にかかった。
秀吉は、再び舞台に上がった。
起こる大歓声
「天下の殿下」が再び流れる。
中央に立つお香と並んで踊る、太閤豊臣秀吉。
五十八歳とは思えない、切れ味鋭い踊りを見せた。
伏見十六の初公演が終わった。




