第56話 残念美少女、懐かれる
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その夜、夢の中で、私はミーちゃんに会っていた。
ミーちゃんは、子供の頃、実家で飼っていた長毛種のネコで。
私が中学二年生の時、どこかへ行ったきり帰ってこなかった。
朝起きた私は、自分が寝ながら泣いていたと気づいた、
そして、なぜ、ミーちゃんの夢を見たかも分かった。
毛布の中に、白い魔獣が丸まって寝ているのだ。
それは、昨日、森の中で見たスカンプという魔獣に間違いなかった。
窓を開けて寝ていたから、そこから入ったのだろう。
私が頭を撫でると、ちいさな声を出す。寝言かもしれないわね。
「ククゥ」
すごく可愛い。
私は、朝から幸せな気持ちになった。
◇
「ねえ、メタリ。
寄宿舎で魔獣を飼えるかしら?」
「ダメに決まってるでしょ。
どうして、そんなこと聞くの?」
「いや、ちょっと聞いてみただけ」
「それより、昨日は大変だったらしいわよ。
ミャートたちが、森でスカンプに襲われたんだって」
「メタリも、スカンプの事を知ってるの」
「まあ、近づいちゃダメって、子供のころに習うからね」
「そ、そうなんだ」
「ミャートは嫌なヤツだけど、今回はさすがに可哀そうね」
私とメタリは、授業が始まる前、そんな会話をした。
◇
お昼時間、私は大急ぎで学食で食事を済ませると、寄宿舎へ帰った。
部屋のドアを開けると、白い魔獣は、まだベッドで丸くなっていた。
ただ、私が近づくと目を覚ました。
「ククゥ」
そう鳴くと、近づけた私の手を舐めている。
学食から持ってきた、ナンのようなパンを手のひらに載せてみた。
スカンプは少しそれを匂ったあと、小さな口で美味しそうに食べていた。
そのしぐさが余りに可愛くて、また撫でてしまった。
◇
その夜も、私と一緒に寝たスカンプは、次の朝、私が寄宿舎を出ようとすると、足元にまとわりつき、離れようとしなかった。
強引に引きはなそうとすると、例の可愛い声で鳴く。
「ククゥ」
それを聞くと、どうしても彼女を捨ておくことができなかった。
私は教室に行かず、彼女と出会った森に向かった。
もし、親がいれば、そこへ帰えした方がいいからだ。
私が歩いていくと、スカンプも私の後をついてくる。
一昨日、彼女と出会った草原に来た。
「じゃ、またいつか会おうね。
さようなら」
私はそう言うと、後ろ髪引かれる思いで草原を後にした。
後ろから彼女のかわいい鳴き声が追いかけてくる気がした私は、途中から全力で走り、森を後にした。
作者「おおっ! カニとは別のぺっとか?」
ポチ(カニ)『えっ!? 私たち、お払い箱?』
作者「学園エピソードだけの我慢だよ」
ポチ(カニ)『ほっ』




