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残念美少女ツブテ  作者: 空知音
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第50話 残念美少女、学園へ行く



 アレク、ドン、そして私は、駅馬車に乗り、王都キンベラへやって来た。

 アレクの話だと、私たちがこれから行く『タルス魔術学園』は、王都の郊外にあるらしい。


 お土産にポンポコ印のケーキを大量に買いこむと、王都と学園間を往復している専用馬車に乗る。

 馬車は坂を登り、丘の上にある学園に着いた。


 学園は丘の上に広がっており、その全てが見渡せないほど広かった。

 

 大きな石造りの門があり、そこには警備のためだろう、ワンドを腰に刺した青年が二人立っていた。

 彼らにアレクが羊皮紙を見せる。


 青年が頷き、私たちは門から中へ入った。


「メグミさん、ドンさん、『タルス魔術学園』へようこそ」


 門から入ると、よく整えられた美しい庭園が広がり、その向こうにレンガ造りの立派な建物が見えた。


「アレク、ここに来るまで、誰も学生を見なかったわね。

 今は休みなの?」


「いえ、逆です。

 今日は休養日でもないから、普通に授業が行われています。

 だから、誰にも会わなかったんですよ。

 この学園は、全寮制ですから」

 

 アレクは勝手知ったる足取りで、どんどん校舎の中を進んでいく。

 鐘の音がすると、静かだった周囲が急に騒がしくなった。

 アレクと同じ青ローブを身に着けた学生たちが、通路に出てきたのだ。


 その多くが、こちらを見て立ちどまっている。


「ねえねえ、すごく綺麗な人ね。

 新しい先生かしら」

「隣の女の子も、可愛いね。

 新入生なら、同じクラスにならないかな」


 そういう声が聞こえる。

 アレクは、近寄ってくる生徒をかき分けるように階段を昇る。

 三階まで上がり、そこだけ絨毯が敷いてある区画まで来た。

 アレクが大きな黒い木の扉をノックする。

 

「入りなさい」


 落ちついた女性の声がする。

 部屋の中は、教室の半分ほどの広さで、壁三面には書架が並び、残った面はガラスのようなものが入っており、丘陵の緑が見渡せた。

 その美しい景色を背景に、大きな黒い机が置いてあり、二十台後半に見える女性が座っていた。

 

「学園へようこそ。

 私が学園長のヴェルテールです。

 メグミさん、ドン先生、歓迎します」


 ドン先生?

 

「メグミです」


「ボク、ドンです」


「アレク、ご苦労様。

 あなたは、隣の部屋でお待ちなさい」


「はい、学園長」


 アレクが部屋を出ると、少しを置いてから、学園長は呪文を詠唱した。

 彼女を中心に、光の輪が広がった。


「これでいいでしょう。

 この部屋で話すことが外に漏れないよう、魔術障壁を張りました。

 魔術で中を覗こうとしたり、聞き耳を立てる不心得者がいますからね」


 彼女は一つため息をつくと、机のこちら側に出てきて膝を着いた。


「メグミ様、ドン様、あなた方二人は、国を救った英雄と陛下からうかがっております。

 ただ、学園で生活する上は、他の生徒と同じ扱いとさせてください」


「分かりました」


「どうか、救国の件はご内密にお願いします。

 あなたが、『青い悪魔』だと生徒に知られると、大騒ぎになりますから」


「もちろんです」


「では、メグミ様は平民クラスへ。

 ドン様は教師としての心得をお伝えしますから、このままここにお残りください」


「えーっ、ボク、お姉ちゃんと一緒がいい」


「ドン、学園長の言うとおりにしましょう。

 後で会いに行くから」


「お姉ちゃん、絶対だよ」


 ドンが子犬のような目で私を見る。


「必ず行くから、心配しないで。

 二人で買ってきたケーキ食べようね」


「わーい!」


 学園長は呆れたような顔でそれを見ていたが、机の上に並べているクリスタルの一つを手に取った。


「アレク、来てちょうだい」


 すぐにノックの音がして、アレクが入ってきた。


「アレク、メグミさんを教室に案内してあげて。

 あなたと同じ四回生がいいでしょう」


「分かりました」


「それから、手間をかけるけど、その後、職員ホールへ来てくれる?

 ドン先生を彼の研究室まで教頭に案内させるから、あなた、後でその場所をメグミさんに教えてあげて」


「はい、学園長」


 ◇


 私は通路を歩きながら、アレクに話しかけた。


「アレク、学園長って若いわね」


「ふふふ、ああ見えて、実はウチの母さんより年上なんですよ」


「ええっ!?」


「若いころは、『黒き魔女』として大陸中に名を轟かせていたそうです」


 なにそれ、なんかワクワクする名前ね。

 ポチ(カニ)たちがいたら、つっこまれそうだけど。

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