表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念美少女ツブテ  作者: 空知音
47/58

第46話 残念美少女、喜ぶ


「さあ、ここは、とっておきの場所じゃよ」


 次に陛下が私たちを案内したのは、今までで一番大きな部屋だった。

 大きなクリスタルの向こうには、水辺の景色が作ってあった。

 壁一面に自然を描写した美しい絵があり、まるで自然の中にいるようだ。

 わざわざ水を溜めた池や草の生えた砂地があるという凝りようだ。


「ここは、一体何のお店ですか?」


 私は思わず尋ねた。


「これは水辺を疑似的に作りだしたものじゃよ」


 いや、そのままなんですが。


 奥から現れた青年に陛下が合図すると、彼はさっと奥に引っこみ、水槽の片隅にある扉から現れた。

 手に椅子と何かを持っている。

 それを水槽の中央、水辺付近に置くと、青年は奥に引っこんだ。



「あれは何です?」


 椅子には、黒髪の少女をかたどった人形が座っていた。


「すごいじゃろ。

 王国一の魔術人形師に造らせた、そなたの人形だ。

 水辺にはカニを放す予定でおる」


「これ、どんな展示なんです?」


 陛下は水槽の下にある布を取った。 

 

『青い悪魔と愉快な仲間たち』 


「この部屋は、銀貨一枚で入れるようにする予定じゃ」


 ふ~ん、銀貨一枚ね……って、一万円じゃない!

 誰が見るのよ、こんなもん!


 この部屋がこの施設で最も収益を上げることになるとは、予想もできなかった。


 ◇

 

 私たちは、新しいドアの前まで来た。


「ここは、とっておきの場所じゃぞ」


 タリラン国王はそう言うが、さっきの部屋も「とっておき」だったからねえ。

 期待できそうにないわね。


 陛下の合図で、渡された指輪をドアの魔法陣に近づける。

 ドアが開いた時、私は思わず歓声を上げた。


「うわーっ!」


「喜んでもらえたようじゃな?」


 ドアの向こうは屋根が無い吹き抜けになっており、その部分が商業施設の中庭になっている。

 木々や花が植えてあるその庭の向こうに銭湯があった。

 立派な『温泉ランどん』の大看板もある。


「前の建物はあやつに壊されておったから、働いておった者や人々から聞きとりをして、なるべく近い形にした。

 気に入ってもらえるかの?」


「もう、チョー気に入りました!」


 私は中庭を早足で抜け、銭湯の扉を開けた。

 中は前より広くなっていたが、番台もあり、雰囲気はそのまま残っていた。


「二階も、なるべく元の通り復元したつもりじゃ」


 前より広くなった風呂には湯が張られ、虎の顔をした湯口からお湯が出ていた。


「かけ流しにしておいた。

 キンベラが持つ技術の結晶じゃ」


 おおっ!

 ということは、ドンに毎日負担を掛けずに済むな。


「あっ!

 あの壁の絵は?」


「キンベラ最高の画家に書いてもらった。

 あれでよいかの?」


 壁には見事な富士山の絵があった。

  

「素晴らしい!

 ところで、私の絵はどうなったの?」


「壁の絵は壊されず、そのまま残っておった。

 それは王城に頂いたが、いかぬか?」


 えっ?


「王城の大浴場に飾ってあるよ」


 げっ!

 ツブテ画伯の絵がそんなことに!


「これ、そのような顔をするでないわ。

 ワシは、いたく気に入っておるのじゃから」


 ま、まあ、それならいいけど。

 

「この前、他国の使節にあれを見せたら、感動で震えておったよ」


 ポチ(カニ)たち『『『感動じゃないと思う(笑)』』』


 二階の大広間も前より広くなっており、通信用クリスタルで各店舗から飲み物や食べ物を出前できるようになっていた。

 どんだけ技術力使ってんの、この建物に!


「「「メグミ様、おかえりなさい」」」


「あ、あなたたちは!」


「以前、セントーで働いておった者たちじゃ」


 女性や少女たち、銭湯のスタッフが、私とドンの周囲に集まる。


「じゃ、せっかくだから、お風呂に入りましょうか」


「「「わーい!」」」


 ドンも喜んでるみたいだから、これでいいよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ