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残念美少女ツブテ  作者: 空知音
44/58

第43話 残念美少女、感謝される



 ガランガランガラン


 そんな音を立て、私、ドン、タリランさんが王都に入る。

 ボロボロになった、鎧入りエリュシアスの足を私が持ち、引きずっているのでそんな音が出ているのだ。

 道は石畳だから、上を向いて引っぱられている彼の後頭部は、ハゲるかもしれないわね。


 ポチ(カニ)たち『『『ひっ、ひどいっ!』』』


 道には、人々が並び、私たち三人に拍手している。


「タリラン様~!」

「青い悪魔~!」

「きゃーっ、ドン様~!」


 やかましい程の声援が、私たちに投げかけられる。

 だけど、「青い悪魔」って、誰の事だろう?

  

 ポチ(カニ)たち『『『あんただよっ!』』』


 途中でセバスチンを仲間に加え、私たち四人と鎧入り少年は、お城の門を潜った。

 玉座の間に入った私たちは、並んだ貴族を目の前にしていた。


 なんなの、これ?

 その時、下手の入り口から、意外な人物が入ってきた。

 ギルマスのトリーシュさんだ。


 彼は、私に頷くと、玉座の横に立ち、持っていた羊皮紙を顔の前に掲げた。


「ポータルズ世界群、全てのギルドは、タリラン氏を、キンベラ国王と認める。

 ギルド本部 エルファリアのミランダ」


 彼が大きな声でそれを読んだとたん、貴族から歓声が上がった。


「新王の誕生だっ!」

「これで、この国は救われた!」

「ギルド万歳っ!」


 みんな、凄く喜んでいる。


「「「タリラン国王万歳!」」」


 貴族たちの声が揃う。

 タリランさんは、ゆっくりと玉座に座った。


「皆の者、今日からワシが、キンベラ国王じゃ。

 崩れかけた国政を立てなおしたい。

 皆、力添えを頼むぞ」


「「「タリラン国王万歳!」」」


 貴族から、再び声が上がった。

 もう、ここに用はないわね。


「じゃ、タリランさん、私たち帰るから」


「メグミ殿、そうおっしゃらず、戴冠式までは、いてくだされ。

 この度の褒美も、まだじゃ」


「褒美?

 褒美なら、もうもらってるわよ。

 いつか、セバスチンさんが、美味しいケーキ、作ってくれたじゃない」


「メグミ殿っ!」

「メグミ様っ!」


 主従で滝のように涙流すの、やめてくれる?

 暑苦しいから。


 ポチ(カニ)たち『『『やっぱり、鬼畜だっ!』』』

 

「それから、これ、私に似合わないから、返しておくわね」


 私は、赤い宝石がついたペンダントを、ゴリラバッグから取りだす。これは、かつて痩身エステ十回分のかわりに、タリランさんからもらったものだ。

 それを、玉座に座るタリランさんの首に掛ける。


「こ、これは母上の……」


 タリランさんの涙が、だーっていう感じになる。

 そんなの、漫画でしか見たことなかったわ。


「じゃ、またね」


 私は、ドンに合図すると、窓から外に飛びだした。


 ◇


 空を飛び、『アヒル亭』に帰っている途中、ドンがしみじみとした口調で言った。


「ボク、お姉ちゃんの弟でよかった」


「どうして?」


「だって、地下で眠る前に生きてた時より、ずっと楽しいんだもん!」


「そう、よかったわね。

 私も、ドンがいて嬉しいわよ」


「本当っ!

 そんなこと言われたの、初めてなんだ、ボク」


「これからは、私だけじゃなく、みんなから、一杯そう言われると思うよ」


 微笑みあう私たちを、夕日が優しく包んでいた。

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