第43話 残念美少女、感謝される
ガランガランガラン
そんな音を立て、私、ドン、タリランさんが王都に入る。
ボロボロになった、鎧入りエリュシアスの足を私が持ち、引きずっているのでそんな音が出ているのだ。
道は石畳だから、上を向いて引っぱられている彼の後頭部は、ハゲるかもしれないわね。
ポチ(カニ)たち『『『ひっ、ひどいっ!』』』
道には、人々が並び、私たち三人に拍手している。
「タリラン様~!」
「青い悪魔~!」
「きゃーっ、ドン様~!」
やかましい程の声援が、私たちに投げかけられる。
だけど、「青い悪魔」って、誰の事だろう?
ポチ(カニ)たち『『『あんただよっ!』』』
途中でセバスチンを仲間に加え、私たち四人と鎧入り少年は、お城の門を潜った。
玉座の間に入った私たちは、並んだ貴族を目の前にしていた。
なんなの、これ?
その時、下手の入り口から、意外な人物が入ってきた。
ギルマスのトリーシュさんだ。
彼は、私に頷くと、玉座の横に立ち、持っていた羊皮紙を顔の前に掲げた。
「ポータルズ世界群、全てのギルドは、タリラン氏を、キンベラ国王と認める。
ギルド本部 エルファリアのミランダ」
彼が大きな声でそれを読んだとたん、貴族から歓声が上がった。
「新王の誕生だっ!」
「これで、この国は救われた!」
「ギルド万歳っ!」
みんな、凄く喜んでいる。
「「「タリラン国王万歳!」」」
貴族たちの声が揃う。
タリランさんは、ゆっくりと玉座に座った。
「皆の者、今日からワシが、キンベラ国王じゃ。
崩れかけた国政を立てなおしたい。
皆、力添えを頼むぞ」
「「「タリラン国王万歳!」」」
貴族から、再び声が上がった。
もう、ここに用はないわね。
「じゃ、タリランさん、私たち帰るから」
「メグミ殿、そうおっしゃらず、戴冠式までは、いてくだされ。
この度の褒美も、まだじゃ」
「褒美?
褒美なら、もうもらってるわよ。
いつか、セバスチンさんが、美味しいケーキ、作ってくれたじゃない」
「メグミ殿っ!」
「メグミ様っ!」
主従で滝のように涙流すの、やめてくれる?
暑苦しいから。
ポチ(カニ)たち『『『やっぱり、鬼畜だっ!』』』
「それから、これ、私に似合わないから、返しておくわね」
私は、赤い宝石がついたペンダントを、ゴリラバッグから取りだす。これは、かつて痩身エステ十回分のかわりに、タリランさんからもらったものだ。
それを、玉座に座るタリランさんの首に掛ける。
「こ、これは母上の……」
タリランさんの涙が、だーっていう感じになる。
そんなの、漫画でしか見たことなかったわ。
「じゃ、またね」
私は、ドンに合図すると、窓から外に飛びだした。
◇
空を飛び、『アヒル亭』に帰っている途中、ドンがしみじみとした口調で言った。
「ボク、お姉ちゃんの弟でよかった」
「どうして?」
「だって、地下で眠る前に生きてた時より、ずっと楽しいんだもん!」
「そう、よかったわね。
私も、ドンがいて嬉しいわよ」
「本当っ!
そんなこと言われたの、初めてなんだ、ボク」
「これからは、私だけじゃなく、みんなから、一杯そう言われると思うよ」
微笑みあう私たちを、夕日が優しく包んでいた。




