表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念美少女ツブテ  作者: 空知音
41/58

第40話 残念美少女、ムカつく



「ちょっと、待って……」


 帽子をかぶった男が、私の左手首を握る。

 私はたいをさばくと、右手で相手の手首を極め、投げを打った。

 

 バサリ


 男の体が、地面に倒れる。

 しかし、その体の動きから、かなりの遣い手だと分かる。


「ツブテ様、お待ちを!

 私です。

 セバスチンです」


 投げで飛んだ帽子の下から出てきた顔は、確かにセバスチンのものだった。

 

 ◇


 ドンが私とセバスチンを両脇に抱え、「アヒル亭」二階に借りている部屋の窓から中に入る。

 ちゃぶ台の周りに、三人で座った。


あるじは、ツブテ様の身を案じておられます」


 セバスチンは、そんな事を言った。


「どうしてタリランさんが、私の心配を?」

 

「主は、自分がツブテ様にお話したことで、あなたがお城で暴れたと思われています」


「そんなことないから、気にするな」


「しかし、動画指名手配にまでなっては、どうすることもできますまい。

 どうかこれで、他国へお逃げください」


 セバスチンが、机の上に、ごとりと布を置く。

 中身は、きっと金貨か何かだろう。


「気にしなくていいのよ。

 ところで、この国では、国同士が戦う時にはどうやるの?」


 セバスチンは、不審がりながらも、いくさの作戦や作法を教えてくれた。


「なるほど、国は、国から戦を仕掛けられたら、受けるしかないんだね」


「まあ、一般的には、そうなっています」


 私は、作戦を決めると、ドンに声を掛けた。


「ドン、すぐに私とセバスチンさんをタリランさんの所へ。

 ただ、今回は、入り口にいる兵士に見つからないようにしてくれる?」


「うん、分かったよ、お姉ちゃん」


 その時、階下で騒ぎが起こった。

 階段を昇ってくる、大勢の足音がする。

 どうやら、兵士が気づいたようね。


 ◇


 ドンが両脇に私とセバスチンを抱え、空を王都へ向かう。

 セバスチンは、最初怖がっていたが、その内に空の散歩を楽しみだした。

 

「いやー、絶景絶景!」


 そんなことを言っている。


 私たちは、それほどかからず、王都でタリランさんが幽閉されている建物の上空に着いた。

 ドンが呪文を唱えると、私たちの体が透明になる。

 彼はそうしておいて、一気に降下した。


 入り口の兵士の背後に着地すると、建物の中に入る。

 セバスチンさんが呪文で扉を開き、私たちは、タリランさんの前に立った。

 彼は、目の下に濃い隈ができ、かなり憔悴した様子だった。


「おお!

 メグミ殿、ご無事か?」


「なんとかね」


「まずは、お座りくだされ。

 お伝えしたいこともあるゆえ」


 私は、長テーブルの端、タリランさんの左前に、ドンと二人並んで座った。 

 

「国王、いや、エリュシアスは、全てのケーキ屋をとり潰す法令を出しました」


 タリランさんの発言は、いきなり衝撃的だった。


「あなたの街にあるセントーも、今頃、とり潰されているはずだ」


「なんですってっ!」


「その方らが宿泊しておった宿も、いずれとり壊されるだろう」


「ぐぬぬっ」


「まあ、ワシは、その時まで生きてはおらんがな」


「えっ?

 どういうことです?」


「処刑の日が、決まったのじゃよ」


「処刑……でも、皇帝は、あなたの息子さんなんでしょ?」


「あやつに親子の情など通用せん。

 だから、『怪物』なのじゃ」

 

 いや、あんたの息子、やりたい放題してるだけだから。

 

「お主、これからどうするつもりじゃ」


「タリランさん、処刑は、どこでおこなわれるんです」


「王都東に広がる草原のどこかじゃ。

 あやつ、民が処刑を見て反乱を起こすのを警戒しておるのじゃろう。

 民の間にも、あやつに対して不信が芽生えておるからな」


「処刑の場には、誰がいますか?」


「あやつ本人は、まず間違いなくおるじゃろう。

 残念じゃが、そういうヤツじゃ」 


 ホント、残念なヤツね。


 ポチ(カニ)たち『『『ツブテに残念って言われる、その人って……』』』


「兵士は、どのくらいいると思います?」


「その辺は、当日にならぬとはっきりせんのう」


「お姉ちゃん、どうする?」


 私は、頭の中で計画を練っていた。

 追いつめられたときほど冷静にだ。

 これは、愛しのマサムネ兄さんから、私が教えてもらったことだよ。


「合戦だ」


「えっ?」

「ほえっ?」


 二人が、間の抜けた声を出す。

 私の心は、すでに合戦モードになっている。


「ヤツをギタンギタンに、やっつけてくれるわっ!」


「お、お姉ちゃん、どうしちゃったの?」

「一人で合戦とは、どういうことだ?

 おい、お主、弟だろう。

 ツブテ殿を、正気に戻せ」


 二人が何か言っているが、合戦モードの私には、ささいなことだ。


「ふふふ、はははは、あーはっははははー」


 ポチ(カニ)たち『『『ツブテ、完全に悪役!?』』』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ