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残念美少女ツブテ  作者: 空知音
23/58

第22話 残念〇少女、再び自覚する

第21話がダブっていました。書きかえました。

 鑑定の結果がショックで、一週間寝込んだ私は、やっとマイヤーンの家を後にした。


「もう二度と来るなーっ!」


「またまたー、ツンツンしちゃって、妹よ」


 妹エルフからの温かい励ましを背に、私は「アヒル亭」がある街に向かった。

 途中、道を通らず、森や原野を通って帰る。

 ダイエットがわりに、魔獣を狩るのだ。

 襲う魔獣、ほふる私、屠る、屠る、屠る……


 ポチ(カニ)たち『『『どんだけ屠ってるの!』』』


 街に着いた私は、まずギルドを訪れた。


「よう、ツブテ嬢ちゃん、ここんところ姿をみなかったが、またダンジョンか?」


「グラントさん、お久しぶりです。

 ちょっと旅行に行っていました」


 ちょうど、入り口から、ヌンチが入ってくる。


「あ、ツブテさん、お帰りなさい。

 鑑定は、どうでしたか?」


「……」


「ツブテさん、鑑定は、どうっ」


「おい、いきなり殴っちゃ、可哀そうだろう。

 ヌンチが、白目むいてるぜ」


「ええ、それより、私がいない間に何かありませんでしたか?」


「おお、あったぞ。

 新しいダンジョンが、見つかった」


「へえ、どんなダンジョンです?」


「それが、ギルドからの依頼で、俺たちが第一層を調べたんだが、モンスターは強いわ、罠はあるわで、今のところ、攻略は禁止ってことになってる」


「禁止ですか」


「ああ、もう少し調査が進めば、冒険者に解放されるだろうな」


「そうですか。

 やっぱり、洞窟型のダンジョンですか?」


「ああ、そうだ。

 ただ、おかしなことに、壁とか人が造ったみてえに綺麗なんだ。

 しかも、天井が光ってる」


「へえ、変わってますね」


「ああ、ちょっと耳を貸しな。

 ……もしかすると、古代魔術王国の遺跡かもしれねえ」


 グラントさんが、小声でささやく。


「どうしてそう考えたんです?」


 私も声を低くして尋ねた。


「それがな、こんなのが落ちてたんだ」


 グラントさんが、そっと私の手に何かを握らせる。

 指の間から見えるそれは、銅貨のように見えた。

 現在使われているものより、一回り大きい。

 私は、テーブルの下から、それをグラントさんに返した。


「そうですね。

 そのダンジョンは、きっと古代魔術王国の遺跡だと思います」


「ほう、嬢ちゃんもそう思うかい。

 だけど、迷い人のあんたが、なんでそう思ったんだ」


「えっ?

 ははは、勘ですよ、勘」


「そうか、だけど、今度は、前みてえに一人でダンジョンに突っこむなよ」


「もちろんです」


 新しく見つかったダンジョンを古代魔術王国がらみのものだと、私が考えたのには、ちゃんとした理由がある。

 妹属性エルフ、マイヤーンにダンジョンの宝箱から出た金貨を鑑定してもらったら、それが古代魔法王国のものだったのだ。

 そして、さっき私が見た銅貨には、その金貨と同じ模様が刻まれていた。


 ◇


 ギルドを後にした私は、懐かしい『アヒル亭』の扉を潜った。


「ただいまー」


「おや、ツブテちゃん、やっと帰ってきたのかい」


「おかみさん、今日からまた宿泊お願いします」


「ああ、もちろんいいよ。

 あんたが、もっと早く帰ってくるって言ってたから、部屋はそのままにしてあるんだよ」


「えっ? 

 それは、ご迷惑おかけしました」


「気にしなくていいよ。

 それから、会わせたいのがいるんだよ」


「はい、誰でしょう」


「おーい、アレク、降りといでー」


 おかみさんが、二階に声を掛ける。

 階段を降りてきたのは、青いローブを着た少年だった。

 おそらく、私と同い年くらいだろう。

 やや小柄で眼鏡を掛けた彼は、真面目そうな印象だった。

 眼鏡っ子、キターっ!


「初めまして、アレクといいます。

 この宿の息子です。

 タルス魔術学園の生徒です。

 ツブテさんですよね。

 お噂は、かねがねうかがっています」


 少年は、礼儀正しく挨拶した。


「ハリー君、初めまして、ツブテです。

 おかみさんには、とてもお世話になっています」


「ハリー?」


 少年が首を傾げる。


「ああ、そうだ。

 アレク、あんた、服屋のレンさんとこに届けもんがあるんだろう。

 ツブテちゃんと一緒に行っといで。

 この子は、ちょっと頼りないところがあるからね。

 帰ってきてすぐで悪いけど、ツブテちゃん、頼めるかい?」


「ええ、いいですよ」


「ツブテさん、ありがとう」


 アレク少年は、深く頭を下げた。


 ◇


「なるほど、これは、二人いた方がいいね」


 私は、アレクと二人、かなり大きな荷物を服屋まで運んできた。

 重さはそれほどないが、布で覆われた長い形のそれは、一人では運びにくいだろう。

 看板でも入ってるのかしら。


 私たちは、服屋に着いた。


「こんにちはー」


「あ、アレク君、お帰り。

 それ、頼んでいたもの?」


「はい、レンさん。

 なかなかうまく作れなくて、少し重くなりましたが、普段は持ち運ぶものでもないですから」


「苦労かけるわね。

 見せてもらっていいかしら」


「はい、今、これをほどきますね」


 アレクは、長い長方形の荷物に被せていた布を外した。

 中から出てきたのは、全身サイズの鏡だった。


「まあっ!

 すばらしいできね。

 大きさも、申し分ないわ」


 服屋のレンさんは、凄く感心している。


「このサイズの鏡は、王都にしかないですからね」


 アレクが、胸を張る。


「ああ、ツグミさん、せっかく来たんだから、モデルになってよ」


「ええ、まあ、いいですけど」


「買わなくてもいいからね。

 そうね、ツグミさんのイメージなら、この服かしら」


 レンさんが、フリルがたくさん付いた、ピンク色のドレスを手に取る。


「えっ、これですか~」


「ほら、イヤそうな声出さないの。

 買わなくてもいいんだから」


 アレクが支える鏡に、私の全身が映る。


「いいわね~、全身が映ると、お客さんへの説得力が違うわ」


 レンさんが、そんなことを言ってるが、私の視線は鏡にくぎ付けになった。  

 

 誰、コレ?


 そこには、前にも増して太った少女が映っていた。

 な、なんで、こんなことに!


 私は、妹エルフに看病されていたとき、やれもっと料理を持ってこいだの、デザートを出せだの要求した事を思いだした。

 また、やっちまった……。


「あ、ツブテさん、どうしたの?

 まだ、合わせたい服が……」

「ツブテさん……」


 レンさんとアレクの声を背に、私は店を飛びだした。

 このままでは、まずい!


「ダイエット、ダイエット、ダイエットーっ!」


 叫びながら、走る私に通行人の足が停まる。


「ひいっ!」

「な、なんだっ!」

「なんか、丸っこいものが、凄い勢いで駆けぬけたぞ」

「豚魔獣か?」


 その勢いのままギルドに突入した私は、グラントさんの胸倉をつかみ、その首をガックンガックンさせた。彼が、新ダンジョンの場所を、口にするまで。




ツブテ「〇には、丸っこいという意味があったのか……」

作者「やっと分かったようだな」

ツブテ「次で元に戻しなさいよ」

作者「痩せたらな」

ツブテ「ぐはっ」


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