第13話 残念美少女、襲われる
ギルドでキザ男をやっつけた夕方、私はヌンチを使ってカニ小隊の訓練をしていた。
「さあ、諸君、私の合図によって電撃の強弱を変えるのだ。
最初は、電撃極小からいってみよう」
カニ全員『『『イエス、マム』』』
「まずは、タマ(カニ)から行くぞ」
ビリ
「ぐあっ!」
「次、太郎」
ビリ
「げはっ!」
「次、花子」
ビリ
「ごはっ!」
この日の特訓は、カニたちが泡を吹いて倒れるまで続けられた。
ヌンチがどうなったかは、言うまでもなかろう。
◇
次の日、朝食のために食堂に降りた私は、ヌンチが立ったまま食事している姿に出くわした。
「お早う。
あんた、なんでそんな格好で食べてんの?」
「ツブテさんが、ここを攻めたからでしょう!」
ヌンチが、自分の股間を指さす。
「うわっ、キモっ。
ないわ~、朝から自分の股間を指さすって、ないわ~」
カニ全員『『『この人、鬼畜だ!』』』
「痛くて座れないんですよ」
「そう?
私、男じゃないから、分かんない」(他人事)
カニ全員『『『鬼畜過ぎるっ!』』』
「でも、トマイテは、没落したとはいえ、貴族の息子です。
このままじゃ、済まない気がします。
気を付けたほうがいいですよ」
トマイテ?
タ〇痛てえ、みたいな名前だな、おい。
カニ全員『『『痛いのは、あんただっ!』』』
「ヤツが、何かしてくるかもしれないって?
おう、望むところだ。
返り討ちにしてやる」
「せ、戦国武将ですか!」
指輪の翻訳機能すごいな。「戦国武将」って、この世界ではどんな言葉なんだろう。
◇
朝食の後、私は細々した生活必需品を買いに街に出た。
ここは、スーパーやコンビニなどのように、いろいろなものをまとめて売っている店がない。
だから、洗顔用品ならその専門店で、筆記具ならその専門店で買わなければならない。
数軒の店を回った後、そろそろランチにしようかと思っていると、そいつらがやってきた。
「おい、昨日は、よくもやってくれたな」
まっ赤な顔のアフロヘア、キザ男を先頭に、柄の悪い男たちが十人程いる。
「顔貸してもらうぜ。
嫌だと言っても、連れてくけどな」
怯えた顔で、それを見ていたお店のご主人に、抱えていた荷物を渡す。
「後で取りに来ますから、預かっておいてください」
「じょ、嬢ちゃん、大丈夫かい?」
気のよさそうなおじさんが、心配してくれる。
私は、彼に笑顔だけを返し、男たちの後を追った。
◇
「ここら辺でいいだろう」
キザ男は、木立に囲まれた円形の草地に立つと、こちらを見た。
男たちが、ずらりと横一列に並ぶ。
おいおい、ここは包囲するのがセオリーだろう?
こいつら、私をなめてるのか?
敵の戦力は、魔術師だろうワンドを持つ者がキザ男を含めて四人、短剣を持つものが四人、大剣を持つ者が二人だ。
誰一人盾を持ってないって、ホント、私をなめてる。
「じゃあ、たっぷり反省してもらおうか」
キザ男が、ニヤニヤ笑いを浮かべる。
戦闘中に、無駄口を叩くなど愚の骨頂だ。
「キモっ!
そして、ウザっ!」
私の声に、キザ男の目が吊り上がる。
「やっちまえっ!」
「「「おおっ!」」」
男たちは、一斉に私を攻撃しようとした。
私は、静かに号令をかける。
「出力小」
その合図で、男たちの股間に取りついていたポチ(カニ)たちが一斉に電撃を放った。
ビリビリビリっ
「「「「きゅっ」」」
そんな声を上げた十人の男たちが、超内股になっている。
ポチ(カニ)たちは、全員男たちの股から離れると、草をかき分けカサコソとこちらに戻ってきた。
「諸君、ご苦労。
後で、望むものをやろう」
私は、ポチ(カニ)たちをポーチに戻した。
なぜか、全員、ポーチに入る前に片方の前足をさっと挙げていたから、あれは敬礼のつもりかもしれない。
私は、白目をむいた男たちにゆっくり近づく。
「歯を食いしばれ」
私は、そう言うと一番左の男に膝蹴りを放った。
ポチ(カニ)たち『どうして、そこやねん!』
「パっ」
股間に膝を食らった男が、そんな声を上げてぶっ飛ぶ。
「歯を食いしばれ」
「ピっ」
ポチ(カニ)たち『だから、なんで股間に膝やねん!』
「プっ」
「ペっ」
「ポっ」
あっという間に、十人の男が倒れる。
なぜか、全員、おかあさんのお腹にいた時の姿勢になっている。
「お前ら、股、生まれ直してこい」
決まった!
ねえ、私、今のセリフ決まったでしょ?
ポチ(カニ)たち『『『この人、どこまでも残念!』』』
作者「全く、美少女なのに、本当に残念な嬢ちゃんだぜ」
ツブテ「え~? いいじゃない」
作者「そんなことをしているから、『残念〇少女』ってなことになる」
ツブテ「な、なによ、〇って。どんな字が入るのよ?」
作者「フっ」
ツブテ「!?」




