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VS改造機

「発掘作業の時は大した腕では無いと思っていたが、十機を相手に勝利を収めるとはなかなかやるじゃないか。その偽グリーンパイソンのおかげか?」

 と言うのが、グリーンパイソンに乗った敵のリーダーからハルトにかけられた言葉だった。

 徐々に形成を覆され始めているにも関わらず、余裕が感じられる声色である。

 ハルトにはグリーンパイソンを盾にしているという安心感から出た余裕というよりは、同じ機体を持ってさえいれば敵リーダーも十機を相手にする事など容易いというようなニュアンスに感じられた。

(馬鹿にしていやがるな)

 そう思わずにはいられないが、冷静さを失っては先程取り囲まれた時のように周りの変化に気づけないかもしれないため、あくまで平常心は失わないつもりでいる。

 グリーンパイソンも取り巻きのリンガルスⅡ二機も動かない。

(こちらから先制するか)

 動かないところを見るに敵はハルトの攻撃を誘っているのかもしれなかったが、このまま硬直したままでは状況は悪化はする事はあれど、好転する事はない。

 ハルトは覚悟を決めてヤマカガシを三機の方向へと走らせた。

 対して、リンガルスⅡの内一機がヤマカガシめがけて走ってくる。ヤマカガシはそれを倒すべく、その顎に当たる箇所めがけてパンチを繰り出したが、体勢を低くして躱された。すると、ヤマカガシが投げつけたまま回収していなかったハンマーを構えたもう一機のリンガルスⅡがモニターに映し出される。

 次の瞬間、ヤマカガシのコックピットに今までにない衝撃が走った。

 コックピットをハンマーで突かれたらしい。

 多少の事ではびくともしない機体だが、コックピット付近への強烈な突きを喰らっては流石に無傷という訳にはいかず、ヤマカガシは後方に吹き飛ばされる。

(揺れないコックピットを多少なりとも揺らすほどの腕か、生半な事では勝てないな)

 ハルトは歯噛みしながら機体の体勢を即座に立て直す。

 今度は二機に接近しつつ、腕の偽装パーツを外しそれをそのうちの一機目掛けて投げつけた。その機体は先程のリーダーと同じく、腕を使って投擲したパーツの軌道を逸らすが、その間一瞬だけ隙ができたためハルトのヤマカガシはその隙に敵のコックピット付近目掛けて蹴りを繰り出した。

 リンガルスⅡの耐衝撃機能ではヤマカガシの蹴りの衝撃を消し切れなかったらしく、起動はしたままだったが、動かなくなった。

 ヤマカガシはそれを盾にするともう一機のハンマーを持ったリンガルスⅡに接近し、充分に近づいたところで盾にしていた機体を敵機に叩きつけて両機を沈黙させた。

 が、敵もやられる直前にハンマーをヤマカガシのコックピット付近に叩きつけていたため、ヤマカガシもほぼ同時に倒れていた。ヤマカガシの本体は未だ無傷だが、胴体を偽装していたグリーンパイソンのパーツは既に砕けている。

 ハルトはすぐに機体を立ち上がらせると、すぐ目の前でグリーンパイソンが拳を振りかぶっているのが見えた。直後、ヤマカガシは頭部にパンチを喰らうが規制された機体の攻撃では微動だにしない。

「今回は俺たちの負けのようだな。が、同性能の機体がこちらにあれば貴様は既に三回は死んでいる。努努(ゆめゆめ)それを忘れるな」

 と敵リーダーは言うと、彼はグリーンパイソンから降りてリンガルスⅡのパイロットを回収すると、もう一機のリンガルスⅡに乗り込みそのまま海へと消えていった。顔は良く確認できていない。

(負けた…)

 そう強く思ったが、同時に

(終わった)

 と、安心した気持ちも込み上げてきたのでハルトは一層情けなくなった。

 彼は全身全霊で戦ったためこの日はもう何もしたく無かったが、グリーンパイソンを回収しなければならないため再びヤマカガシを動かした。

 その直後、機体の背に何処からともなく攻撃を受けた。残っていた胴体の偽装パーツは完全に砕け散り、ヤマカガシは再び倒れこんだ。

 ハルトが機体を立ち上がらせると、先程までは影も形もなかった機体がモニターに映し出されていた。

 ハルトが戸惑っていると、その機体は加工された声で、

「機体はそのまま、パイロットは死んでもらうって方針で攻撃したんだけど全然効いていないみたいだね。何でできているのさ、その絡繰人形は」

 と話しかけてきた。加工された外部音声なので正確なことは分からないが、口調や話し方の柔らかさからパイロットは女であるらしい。


 ヤマカガシと対峙している絡繰人形はリンガルスともリンガルスⅡとも違っていた。

 ヒロイックでありながら、かなり無骨なデザインで、ちょうどヤマカガシとグリーンパイソンの中間があればこの様な感じの見た目になるのであろうと思わせる機体である。グレーの機体色と、右手に持っている二本のレールがついた装置も無骨さを際立たせている一因だろう。

 ハルトは目の前にいる機体は見たことがなかったため、

「あの機体ってなんだか分かりますかね? 見たことのないタイプっすけど」

 とショウゾウに通信を入れて見たところ、

「分からない」

 という返答が返ってきた。

「金属加工の他にも、絡繰人形の整備を長年やっている叔父さんでも分からない機体ってことは新型か何かっすかね」

「いや、最新鋭の機体や開発中の機体の情報なんかも何かしらの方法で少しは手に入れることができるんだが、あの機体は見たことがねぇ。おそらく既存の機体の魔改造か、もしくはヤマカガシと同様に個人の趣味で一から作り出された機体かもな」

 ハルトは少し不安になった。趣味で作られた機体ということはヤマカガシと性能があまり変わらないのではないかと。もしそうだった場合、少なくとも自分で絡繰人形を改造できる人間相手に操縦技術が完全ではない彼は勝ち目がない気がしたのである。

 ハルトがショウゾウと通信していると、謎の絡繰人形は手に持った装置をヤマカガシの方向へと向けてきた。直後、そこから何かが発射され、ヤマカガシの頭部に直撃する。頭部の偽装パーツは粉々に砕け散り、ヤマカガシ本体の頭部も少し破損した。頭部は外部を映すカメラである他、レーダー等も搭載しているためコックピットの機材に影響が発生し始める。

 このまま突っ立っていてもやられるだけだと判断したハルトは

「お前はさっきの連中の仲間か!?」

 と外部音声で話しかけながらヤマカガシを動かし、ハンマーを拾い上げて謎の絡繰人形に殴りかかるが、向こうの機動力もかなりのものであり簡単に躱された。さらに、敵パイロットは躱しながらも、

「音声に乱れがあるってことは今の一発は効いたみたいだね、頭部の防御力は他の部位の防御力よりも低くなっているのかい?」

 と質問し返してきており、かなり余裕がある様子である。

(とても勝てない)

 ハルトはこの短時間でそう察したが、逃げようにも右手の装置で狙い撃ちにされる危険性があるため戦闘を継続せざるを得ず、再び突撃をかけた。

 しかし、いくらハンマーを振り回してもどういう訳か当たらず、しまいには振りかぶった隙を突かれて腕を蹴り飛ばされ、ハンマーを海に落としてしまった。

(性能は向こうの方が上なのか?)

 ハルトが絶望しかけていると、相手は彼がそう考える事を察知していたかのように、

「機体の性能はそっちの方がやや上みたいだけど、パイロットの腕がまだまだのようだね」

 と言った。前者については分からないが、後者については完全に的中している。

 すると、少しの間通信が途絶えていたショウゾウから連絡が入り、

「ハルト、その機体の事がなんとなく分かって来たぞ。静粛性とかスピードやパワーの桁が違うが、挙動を見る限りそいつはおそらくグリーンパイソンの改造機だ。右手に持っている物は電磁投射砲、いわゆるレールガンという物だろう。俺もあまり詳しくはないんだが、電磁場中の電荷を帯びた粒子が受ける力を使って弾丸を加速させる装置らしい。とにかく、敵の動きを見ている限り性能自体はヤマカガシの方が上だが、パイロットがかなりの腕である上にそんな飛び道具を持っている以上勝ち目がないぞ。盗まれた機体は一旦置いてすぐに逃げろ。自警団に連絡が入ったという情報を傍受したからもうすぐそいつらがそっちに行く。改造グリーンパイソンの搭乗者にその情報を伝えれば奴も俺らと同じようにあまり目立ちたくないだろうから撤退するだろう」

 との事であった。

 ハルトは早速、

「おい、あんた。ここは一旦休戦してひとまず退散しようぜ? もうすぐ自警団が来るとの事だ。あんたの機体も俺の機体と同じで違法な物なんだろう? 見つかったら都合が悪い筈だ」

 と提案してみたが、

「ならば、そいつらが到着するまでにあんたを片付けるだけだよ」

 との事であった。

 簡単には逃してくれなさそうなので、何とか隙を作る必要がある。その為にハルトが思いついた作戦は体育会系のノリのようなものだった。

「全身全霊の一撃を叩き込んでやる」

 そう呟くと、ハルトは今までは動きやすい速度で調整して踏んでいたペダルを全力で踏み込んだ。

 ヤマカガシは凄まじいスピードで敵機へと接近して行く。その間何発かレールガンを撃ち込まれて装甲の一部が凹んだり、脚部の偽装が破壊されたりしたがハルトはペダルを踏む事を止めない。

 そのハルトの勢いとヤマカガシの頑丈さに少し気圧され、敵機は一瞬怯みを見せて止まったので、その隙に彼とその愛機は全てを賭けた拳を敵機の頭に叩き込んだ。

 敵機のグリーンパイソンの改造機はかなり頑丈に作られていたらしく、パンチを繰り出したヤマカガシの拳も握ったまま動かなくなってしまったが、殴りつけた頭部は完全に潰れた。

 この好機を逃す手はないと考えたハルトはさらにもう一撃、回し蹴りを叩き込もうとしたが、それは後方に飛ばれて回避されてしまった。

 ともあれ敵機の改造元がグリーンパイソンである以上、カメラ等の機能が頭部にある筈であり、それを潰してしまった今、敵機はレールガンの照準も満足に合わせられない筈なので撤退が可能になった。

 ハルトがショウゾウのいるトレーラーへとヤマカガシを走らせていると、グリーンパイソンの改造機から

「まだ戦いは終わっていないぞ、逃げるつもりか?」

 という声が聞こえてきた。

 予備のカメラしか機能していないであろうにもかかわらず、当たりはしなかったがかなり正確な射撃をしてきているので相手は本当にまだ戦えるのであろう。

 ハルトと相手の実力差には未だに大きな開きがあるため、このまま戦い続けても勝ち目は薄い。さらに、これ以上は自警団に見つかる危険性もあったため、ハルトは挑発を無視して逃げる事にした。

 が、始終向こうが優勢であったため実態としては負けに近く、さらに機体をボコボコにされた為、彼は逃げる前に何か相手に言っておきたい気分であった。

 そこで、彼は

「逃げる、今の俺にあんたは倒せない。が、その前にここまで俺を追い詰めた褒美にあんたにこの機体の名前を教えてやる。ヤマカガシ、それがいずれあんたを倒す機体の名だ」

 と言った。するとすぐに

「馬鹿め、それはこのレティキュレートに敗れてパーツを奪われる運命にある機体の名だ」

 といった返答がレールガンの弾丸と共に返ってきた。敵の目的はヤマカガシのパーツを奪う事であり、敵機の名はレティキュレートであるらしいという事が分かったが、ハルトは逃げる事に専念しておりあれこれ考えている余裕はない。

 が、しばらくすると弾が切れたのか砲撃が止み、相手が砲撃してきている間に距離を稼いだ事が功を奏したのか追いかけてくる様子もなかったのでハルトはヤマカガシをトレーラーに乗せるとそのまま撤退して行った。

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