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最強の絡繰人形

 年度末に差し掛かった頃に愛機ヨルムンゴールドの改修を終えたカナヤ・カケルはイサミ、タナカ、ヨコヤマ、タジマと手分けをして警察予備隊の見学へ頻繁に行っていた。

 戦車や戦闘機等の数や性能の把握、出撃までの手順を把握する事などが主な目的である。

 基本的に絡繰人形は戦闘機や戦闘ヘリにはまず勝つ事はできず、立体的に動く事ができる市街地や山岳地帯以外では戦車や自走砲等にも太刀打ちできない。

 改修して本来の性能と同等の力を出せるようになったヨルムンゴールドは通常の絡繰人形とは違い、防御壁や自己再生機能などの特殊な機能や、常識外れの火力、無理をさせ過ぎさえしなければ充電などをせずとも永遠に続く稼働時間を持っているが、それでもこの先史時代の遺物はあくまで絡繰人形なので万が一という事も考えられる。

 それ故の見学だった。

 一通り施設を見学し終わった後、一同はカナヤのマンションに集まって情報交換をする事になった。

 まずは、カナヤが

「あれはまずいな、数が多すぎる」

 と近くの警察予備隊へと行ってみた感想を述べた。

 防御壁は展開できる範囲が限られているし、自己再生能力は再生に時間がかかるという弱点があり、数で押し切られる可能性があるというのが彼の考えである。

 比較的規模の小さい施設へと向かったヨコヤマ、タジマも彼と同じような考えだったが、イサミとタナカは、

「戦闘機さえ飛び立たなければ大丈夫ですよ。戦車や絡繰人形、ヘリに集中砲火を受ける可能性もありますけど、おそらく切り抜けられる程度でしょう」

「その機体がどういったものかは知らないが、大丈夫じゃねぇの?」

 とかなり楽観していた。

 二人とも大規模な施設を見学しに行ったにも関わらずである。

 ただ二人がどんなに自信に満ちた回答をしたとしても、やはり都市という都市を攻撃するというカナヤの最終的な目的を達成するには最後の壁となるであろう組織なので、何のプランも立てずに単機で勝てるとは彼には到底思えなかった。

 そこで、カナヤは

「しかし、何も考えずにそこを無視して都市を攻撃し始めてもいずれは撃墜されちまうだろう。だから、まずは予備隊の戦闘機だけ潰して回ろうと思う。本来であればヘリや地対空ミサイルなんかも破壊しておきたいところだが時間がかかってしょうがない」

 と、言った。

 特に警戒すべき戦闘機は飛び立つ前に破壊してしまえばどうとでもなるという考えである。

 時間がかかると言っても、ヨルムンゴールドの機動力であればジパング内の全ての戦闘機を破壊してから主要な都市へ攻撃を加え始めるまで三時間もあれば充分だろう。

 一方の懸念についてはこれで一応話がついたが、懸念はもう一つある。

 以前遭遇した竜のような絡繰人形、リントヴルムが邪魔をしてくる可能性である。

 現在のヨルムンゴールドの性能と比べれば、リントヴルムも取るに足らない性能しかないだろうが、現状あの機体はヨルムンゴールドを除けば国内最強であろう。

 故に用心するに越したことはないという考えがカナヤにはあった。

 そこで彼は、

「ヨルムンゴールドは俺が操縦と防御壁、サブロウがレーダーと兵装、タジマが自動修復システム担当で行く。カノンはアナザーキールバックでマツシマ・ゴンゾウの工場を襲撃してくれ。以前絡繰人形を奪取しに行ったところだ。ヨコヤマは俺たちが万が一負けた際にすぐに逃げる事が出来るよう準備をしておいてくれ」

 と、指示を出した。

 その指示を受けたイサミ・カノンは複雑な表情をしていた。

 前に彼女がリントヴルムと遭遇した際には、愛機が疲弊していた上に実質二対一だったので止むを得ず逃げてしまったが、彼女は一度あの機体とタイマンで戦ってみたいという思いがあった。

 しかし、その一方でヨルムンゴールドの操縦も以前からやってみたいとも思っていた。

 彼女はカナヤの計画が上手くいくとは思っておらず、ヨルムンゴールドも撃墜されてしまうと考えている。

 そのため、この機会を逃すと二度とこの先史時代の遺物に乗ることは無くなってしまうだろう。

 カナヤは彼女のその心情を察していたので、

「俺たちの方についてくるとまともに戦闘できないぞ」

 と補足を加えると、イサミは

「分かりました」

 と承諾した。

「それじゃあ、行くか」

 カナヤの号令と共に、四人はヨコヤマ一人を部屋に残して秘密格納庫へと向かって行った。

 真夜中であるため本来であればライトをつけなければならないが、彼らは点灯せずに車を進めている。


 ヨルムンゴールドはレティック・スパイダーの残骸の中にあったスパイダーテイルのパーツを使ってステルス機能が再現されている。

 故に格納庫から出撃した後、難なく近くの警察予備隊の施設に到着する事が出来た。

 改めて上空から見てみると結構でかい施設である。

(これは、降りて戦っている余裕はないかもな)

 カナヤはそう考えを改め始めた。

 降りて行って施設や兵器類を破壊すればエネルギーの節約になる上に、余裕がないといっても単に破壊するだけであればそれほど時間はかからないだろうが、問題は戦闘になった時である。

 この時間帯でもこの施設は通常通り稼働し続けているに違いない。

 そのため向こうも迅速に対応できる状態であるため、仮に降りていって戦闘機や対空ミサイル等を破壊できたとしても、破壊し尽くした頃には戦車や絡繰人形等に囲まれてしまっているだろう。

 いくらヨルムンゴールドに防御壁を展開できる機能と、自己修復機能が搭載されているとしても限界はある。

 榴弾等を雨のように浴びせられた場合、エネルギーを使い果たさせられ、撃墜されてしまう事が考えられた。

 そんなことを思っているうちに、数機の戦闘ヘリが飛び立とうとしているのが確認できた。

 既にカナヤ達に気づいているらしい。

「予定変更だ、基地には降りん」

 カナヤがそう言うと、タナカが

「じゃあどうするんだよ。向こうはもうこっちに気づいたみたいだぜ?」

 と、やや焦りながら言う。

「かなりエネルギーを使ってしまうが、早速この機体の『矛』を使おうと思う。エネルギーは自己修復の範疇で回復する事ができるしな」

 と返答しているうちに、既に接近して来ているヘリからミサイルが飛んできた。

 カナヤは防御壁を展開してそれを防ぐと、爆炎で機体が隠れているうちにタナカが熱線のボタンを押した。

 直後、施設全体を覆い隠すほど巨大な熱線がヨルムンゴールドから放たれて、数秒後には辺り一面火の海になっていた。

 帰る場所を失ったヘリ達は何が起こったのか整理がつかないらしく、その場で対空し続けている。

 ヨルムンゴールドは今の一撃でエネルギーをかなり消費したとは言え、充分に動けたため、そのヘリのテールローターを片っ端から叩っ斬って行った。

 ヘリは正気を取り戻し、最後っ屁として機体に搭載されていた火器を全弾掃射しながら落下していくが、ヨルムンゴールドはそれも防御壁で防ぐ。

 落ちていくヘリコプター達を見ながら、

(これで全部か? 案外呆気無かったな)

 と思っていた矢先に別方向から射撃を受けた。

 地上から放たれたのか、その弾丸には然程の威力は無かったので防御壁は展開せず装甲で受け止めた。

 レーダーと目視で辺りを確認してみると、いつの間にか警察機がいる。

「警察機か、随分早かったな。いつもであれば厄介に思うところだが、今日に限って言えば丁度いい。その機体からエネルギーを奪ってやろう」

 カナヤは警察機へとそう通信を入れた。音声の加工はしていない。

「ふざけた事をしやがって、すぐに取調室に招待してやる」

 警察機の搭乗者であるトヨオカはそう返しつつ、タイガーキールバックの機能を使って敵機の情報を抜き出そうとするが、特殊すぎる相手故か上手くいかない。

 そうこうしているうちにヨルムンゴールドは新装備である大剣を装備してトヨオカ機へと接近して来ていた。

(おそらく他の地域の警察予備隊がこいつを制圧するためにこっちに向かっているはずだ、それまでの間何としても足止めしてやる)

 と、思いつつトヨオカはタイガーキールバックに銃を構えさせた。

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