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修理

 警察機とそれを運搬するトレーラーはボロボロになってしまった為、機体はショウゾウの工場に運ばれて修理される事になった。

 関節という関節が破壊されているが、予備パーツがある為、オート・エト・ロタイ社から取り寄せる必要があるレドームと装甲板以外は案外簡単に元に戻す事が出来た。取り寄せている二つのパーツが到着するまでは、この出力がやや強めな事と、通常選択できないカラーという事以外は特に何の変哲も無いタイガーキールバックを警察機として運用していくらしい。

 ただ、トレーラーは丸々作り直す事になってしまったので、機体の修理よりは遥かに時間がかかる。そのため機体の修理が終わった後、暫くの間は代用としてショウゾウの工場で使用している物を貸し出す事になった。

 しかし、その事によって現在ハルト達はリントヴルムを使用する事が出来なくなっていた。

 リントヴルムは飛行する事が出来るので、一見トレーラーは必要なさそうだが、ヤマカガシのスラスターより出力が上がっているので、工場から出撃した場合その音と煙で近隣の住民に違法な機体を所持しているという事が今まで以上にバレやすくなっている。そのため、スラスターを使って目的地へと向かう際はどうしても山の上の練習場からでなくてはならないので、トレーラーがないと運用は不可能だった。

 その事でハルトは

「この前の変な機体が出てきた場合リントヴルムじゃないと止めらんないっすよ。どうして貸しちゃったんですか?」

 と、ショウゾウを問い詰めた。

 トヨオカ達はショウゾウがトレーラーを使っているところをこの前の練習試合以降見た事がないので、逆に貸さない意味もないという事はハルトにも分かっていたが、この前のヨルムンゴールドの能力を見て、それとまた対峙するかもしれないトヨオカ達が少し心配になったため聞いてみようと思った次第である。

「言わんとしている事は分かるぞ、俺もリントヴルムが映していた映像を見ていたからな。確かにタイガーキールバックでは連中が『矛と盾』と呼んでいるあの機体には勝てないだろうし、それを心配しているのは俺も同じだ。ただ、連中も勝てないからと言って職務放棄をするという事はしないだろうし、トレーラーを貸さなかったとしてもどうにかして現場に駆けつけるだろうな」

 そう言われたが、ハルトには職業人の気持ちはいまいち分からない。

 そのため、

「そういうものなんっすかね」

 と適当な相槌を打った。

「しかし、『矛と盾』もお前らが破損させたから暫く動きはないんじゃないか? それに奴はあの戦いでは脱出の時と方向転換くらいしか目立った動きはしていなかった。あれを動かなかったのではなく動けなかったと仮定すると、まだ未完成だったり修理不足の可能性は充分にあるだろうな」

「確かに『矛と盾』はヤマカガシやレティック・スパイダーのパーツを流用していましたけど、単純に考えて規格が合わないでしょうし完全とは言えないかもしれないっすね。それでも充分脅威になり得る強さでしたけど」

 二人は完全な状態の『矛と盾』を少し想像して見たがあまりピンとこなかった。

 ただ、リントヴルムの性能はおそらくサイドワインダーに匹敵し、パワーやスピードはそれを上回るかもしれないが、『矛と盾』は不完全の状態でそれらに肩を並べているのである。そのため、完成した場合の事を考えた際、恐怖だけは二人とも明確に感じた。


 一方、その『矛と盾』を操作していたカナヤ・カケルは機体を一度オーバーホールして整備していた。

『矛と盾』即ち、ヨルムンゴールドは先史時代の物らしいので設計図などない。

 そのため、彼はパーツ一つ一つに番号を振って整備している。

「しかし、よくオーバーホールする気になりましたね。以前は安易にバラせないと仰っていた筈ですが」

 そう言いながら彼の元にイサミ・カノンが近づいて来た。

「今のヨルムンゴールドであの竜の様な機体と戦うのは危険だからな、他機のパーツで間に合わせた力ではなく、この機体の本当の力を引き出す必要性を感じたんだよ。君も味わったと思うが、一撃でタイガーキールバックを撃破する破壊力は流石に脅威だからな。俺もこれだけの機体を使っておきながら胸部の装甲を破壊された」

 カナヤは一度休憩し、傍に置いていた缶コーヒーを飲んだ。

 整備が長期戦になる事を見込んで、それは三本用意していたため、一本をイサミに投げ渡す。彼女はそれを一口飲み、

「手痛い教訓でしたね。以前一機ダメにされて、今回私の機体はよりにもよって腰部を破壊されて修復が困難になったので、もうタイガーキールバックは一機しか使えそうにないですよ。しかも、それは小破しています」

 と、言った。

「無事なパーツを繋ぎ合わせれば、二機だけは修理が可能かもしれない。しかし、ヨルムンゴールドは三人で搭乗して真価を発揮する。これを直せばあれは不要じゃないか?」

「万が一負けた時の保険です、あの敵機も成長するかもしれないですからね」

 カナヤは負ける事を前提にしたかのような彼女の発言に少しムッとしたが、考えに何処か稚拙なところがある上に、何度か事業に失敗しているという不名誉な実績を持つ彼よりも、彼女の方が鋭い勘としなやかな思考を持っている。そのため、段々不安になり、遂には

(一理あるのでは?)

 と、思えて来た。そのため彼は

「お前はともかく、俺やサブロウがあの機体を使っても『竜』相手ではどうにもならないし、警察の機体相手でもかなり苦戦すると思うぞ」

 と、答えになっているような、なっていないような返事をした。

「それなら、一機を集中的に強化してください。少々、癖のある機体でもどうにか慣れますので」

「分かった。ただ、あくまで予備の機体として修理する。ヨルムンゴールドが完成したら基本的にそっちに乗って貰いたい」

「分かりました」

 と言って彼女は彼の前から退出した。

 そして、少し浮き足立ちながら、格納庫から自分のアパートへと戻って行った。

 彼女はまともに動かないヨルムンゴールドよりも、どちらかといえば二回乗っただけのタイガーキールバックという機体を気に入っており、それを強化した自分だけの機体が手に入るとなると絡繰人形好きとしてはやはり嬉しかった。

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