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腐れ縁

 リントヴルムはハルト達の学校が夏休みに入る直前に完成した。

 しかし、一時間という短い稼働時間ではどうテストしていいものか分からない上に、ショウゾウはリントヴルムの完成後すぐに地下に眠らせているタイガーキールバックをヤマカガシに改造する作業に取り掛かったため、ここ最近ハルトとシライシはシュミレーターやゲームセンターのゲームでしか絡繰人形を操縦していなかった。

 ただ、ゲームは初心者でも操作し易いようになっているため実際の絡繰人形の挙動とはかけ離れた動きをする事があり、シュミレーターはゲームよりは再現度が高かったが、それを使う度にハルトはヤマカガシ、シライシはレティキュレートの実機の事を思い出してしまい、それと比べると流石に物足りなかった。

 その為、二人で会った際の会話の内容も絡繰人形についての事から、徐々に高校二年生らしく受験勉強についての事にシフトしている。

 しかし、この日は二人がクラスメイトから絡繰人形仲間になったきっかけの店であるアルバトロスに来ていたからか、もしくは少し前に警察が没収した機体の売却を仲介して欲しいと工場に訪ねて来たからか、自然と絡繰人形の話が多くなっていた。

「それにしても、あのヘビミコって絡繰人形なかなか強かったらしいね。レティキュレートが残っていたら私が戦いたかったなぁ」

 と、ミルクティーをマドラーでかき混ぜながらシライシは退屈そうに言った。

 レティキュレートはグリーンパイソンの改造機だったので、

「工場のグリーンパイソンは改造するなよな。あれ、フォークリフトやパワーショベルなんかの代用として使っている側面もあるから、変に改造した結果押収されでもしたら叔父さん泣くんじゃねぇの?」

 とハルトは一応釘を刺しておいた。

「だけど、リントヴルムみたいなワンオフよりは、量産機の特別仕様とか、テスト用の機体を高性能機の予備パーツなんかで強化したみたいな機体の方が好きなのも事実なんだよね。レティキュレートも最終的にはワンオフみたいになっちゃったけど、元々は前者のイメージで改造した訳だし」

「それにしても、よくあそこまで改造できたな。初見の時は俺も叔父さんも何の機体か分からなかったぞ」

 それを聞くと水を得た魚のように、

「あれから一年以上経つんだねぇ、月日が経つのは早いなぁ。確かあの時ハルトは尻尾を巻いて逃げたんだっけ」

 と、茶化し気味にシライシは言う。

「何言ってんだ、あれはどう考えても引き分けだろう。そもそも、ユウリが来る前に俺は十機以上の絡繰人形を相手にして疲弊していたんだ。ハンデがあったにも関わらず倒し切れなかったお前の負けだろ」

 ハルトはそう弁明するが、

「まぁ、あの時倒してたらハルトとはこんな関係にもならなかっただろうから倒さなくて良かったよ」

 と、流されてしまった。

 しかし、ハルトも友達以上の関係ではあるが、恋仲ではないという彼女との何とも言えない関係を結構気に入っている為、悪い気はしなかった。

 その後、二人のテーブルへとケーキが運ばれ、それを彼らが半分程食べ終わったタイミングで、彼らのスマートフォンにショウゾウからのメールが入った。

 内容は、

(謎の機体一機とタイガーキールバックと思われる機体二機に警察機が追い詰められている。警察機のレドームが壊れたタイミングでリントヴルムを出撃させれば警察にバレる事なく、あの新造機を動かす事ができるかもしれんがやるか? ただし、やるのであれば一機正体不明の機体がいるからそれに注意するのが条件だが)

 というものであった。

「どうする?」

 と、ハルトはシライシへと尋ねてみる。

「勿論行くよ」

 そうシライシが応じた為、二人はケーキを足早に平らげて会計を済ませると、工場へと向かった。


 トヨオカのタイガーキールバックは破損し過ぎて最早通常仕様と何ら変わらない状態になっていた。むしろ、ボロボロになって使い物にならなくなったレドームと、背部以外は全て破壊された装甲板が重りとなってしまっている為、通常仕様よりも機動力が劣る上に燃費も悪いかもしれない。

「チョコメロディのサイドワインダーといい今回のこいつらといい何だって、この工場跡には強い機体が集まるんだ……」

 と、トヨオカは悪態をつく。

 彼等はカミシモ重工工場跡で不審な絡繰人形を目撃したという連絡を受けてここに調査に来たのだが、到着するや否やいきなりトレーラーを狙撃された為止むを得ず応戦した。しかし、正体不明の機体には射撃武器が効かない上にレーザーやレールガンなどの装備が搭載されている為トヨオカが一方的に攻撃を受け、さらに、接近戦を仕掛けようにも長剣を持ったタイガーキールバック二機がそれを阻止して来るので手も足も出ず現在のような状況に至っている。

 トレーラーにいたオサベは脱出して自警団へと連絡を入れてくれたらしいが、このままでは増援が来る前にトヨオカ機は撃墜されてしまうだろう。

(一旦身を隠すか……)

 トヨオカはそう考えると、機体頭部のレドームをパージしてそれを正体不明の機体に投げつけた。彼はこの攻撃も効くとは思っていないが、爆炎を煙幕として使えるのではないかと考えたのである。

 案の定、投擲されたレドームは敵機に触れることすらできず爆発したので、その隙に工場の残骸へと身を隠す。

 正体不明機は攻撃はしてくるものの、戦闘開始から今に至るまでその場から動いておらず、今の攻撃でも相変わらず動かないが、代わりに二機のタイガーキールバックがトヨオカの方へと向かって来た。

(あの『矛と盾』のような機体は動かないようだから、まずは逃げながらこの二機の対処をするか)

 と、考えると逃げながらもハンドガンで応戦した。

 二機の内一機は弾丸を回避しつつ更に距離を詰めて来るが、もう一機は何発か被弾してスピードを落としながらも突っ込んで来る。

(前の奴はどうやっても勝てないな、下手をしたら『矛と盾』より強いかもしれない。狙うなら後ろのやつだ)

 そう考えると彼は急激に自機を反転させつつ思いっきりジャンプして、凄まじい勢いで迫って来ていた機体を飛び越えた。

 その機体も、飛び上がってトヨオカ機を叩き落とそうとするが数秒遅れ、突破を許してしまった。

 トヨオカ機はそのままやや腕が劣る方のタイガーキールバック目掛けてハンドガンを乱射して動きを止め、絡繰人形用脇差で敵機の膝関節を薙ぎ払った。敵機も長剣で唐竹割りを繰り出そうとしたが、トヨオカの斬撃の方がやや速かった為に不発に終わり、そのまま崩れ落ちる。

 そのまま長剣を奪って二機目の方を向こうとしたところ、その二機目に蹴りを叩き込まれてトヨオカ機は吹き飛ばされた。

 更に倒れた直後に、各種カメラを破壊されて外の状況がまるっきり分からなくなってしまい、最終的には彼の機体も関節という関節を剣で突かれて倒れ込んでしまった。

(ここまでか…)

 仕方なく彼はコックピットハッチを開いて脱出する。

 すると、敵機は彼の機体を抱えて『矛と盾』の方に向かって行く。

 しかし、向かっている途中で突如空中から飛来した弾丸によってその機体は腰部を撃たれて機能を停止した。

 トヨオカが空を見上げると、竜の様な機体が滞空していた。

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