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リミッター解除機との戦闘

 自警団同士の喧嘩が最も白熱したタイミングでトヨオカ達は現場に到着した。

 自警団の使っている機体は、かなり昔に生産されたヘビミコという国産機と潜水機能が搭載されていない頃のリンガルスであった。

 現在二機は川の中で殴り合っている最中である。

 どちらもパワーにはかなり制限がかかっているためか、かなり長時間喧嘩が続いており、現場の河原には細かい機体の残骸が所狭しと散らばっている。

 その様子を近くの橋の上から確認しながら、

「どのタイミングで行きます?」

 と、オサベは荷台にいるトヨオカへと尋ねた。

「警察だと言えば案外両者とも大人しくなるかもしれないが、今はどっちも気が立っているからなぁ」

 そうトヨオカは答えた。

 彼は現在二機の通信を傍受しており、当然搭乗している二人の会話を聞いている。

 会話の内容は、

「くたばってしまえ」

 だの

「絶対、殺す」

 という中学生の喧嘩のようなものだったが、殺意は本当らしくひっきりなしにコックピットを狙って攻撃を繰り出している。パワー不足という事もあって、このまま放置していてもしばらくはそれが潰れる事は無いだろうが、何度も攻撃を加えることによって最終的にはやはり潰れてしまうだろう。

 そのため、安易に出て行って乱闘になる事は避けたいが、いつまでも出ていかないというわけにもいかない。

 橋から降りていくタイミングを図っていると、リンガルスの方が相手に急接近して掴みかかって大内刈りをかけようとし始めた。しかし、ヘビミコはジパングの絡繰人形研究が全盛期の頃に造られた機体であり、旧式ながら現在国内の通常ルートで手に入る機体の中ではリンガルスⅡの次に性能が良い。

 そのため、その程度の攻撃ではなかなか崩れずにそのまま二機は膠着状態になった。

 二機が固まってしまえば、一度に制圧する事が可能である。

「オサベ、今だ行くぞ」

 トヨオカはそう言うとトレーラーから、国内では一般販売されていない競技用機のさらに特別仕様という機体を出すと、その機体を駆って橋の上から川へと飛び降りた。

 その後、目にも止まらない速さで二機の方へと急接近して取っ組み合っている両機を突き倒した。

 リンガルスの搭乗者は衝撃で気絶したらしく、通信が途絶えたがヘビミコの方はまだ動く事ができるらしく、覆いかぶさっているリンガルスと、その上から二機を地面に押さえつけているタイガーキールバックを押し返そうとしている。

「サシでの勝負中に悪いが取り押さえさせて貰うぞ」

 と、トヨオカはヘビミコへと通信を入れてみた。

 すると、

「他の自警団の奴か!? いや、その改造機の素体は国内では売られていないし、橋の上のトレーラーにパトランプがついているところを見ると警察の機体だな。邪魔すんじゃねぇよ!」

 という返事が返ってきた。

「何か事情があるなら、署で聞いてやる。とりあえず落ち着け」

 そうトヨオカは説得を続けてみるが、ヘビミコからは

「なぁ、俺が何でリンガルスⅡを購入せずこんな製造元のサービスも既に終了した旧式の機体をずっと使っているか知っているか? 愛着とか整備のし易さなんかではないぞ」

 と、噛み合わない返事が返ってきた。

 トヨオカは何も答えず様子を見る。

 すると相手は重ねて、

「偶然、説明書にも載っていない隠れた機能を見つけたからよ。本当はそこで伸びている奴をぶっ殺す為の最後の手段として残しておいたんだがてめぇに使ってやる」

 そう言うと、彼はコックピットシートにある自作のスイッチを二つ押した。

 すると、突然ヘビミコは川の中にホースを垂らし、直後機体のパワーをいきなり上昇させて覆いかぶさっている二機を押し返し始める。

(どういうことだ……)

 トヨオカは困惑した。

 彼が戸惑っている間もヘビミコは押し返し続け、脱出できるほどの隙間を確保すると、そこから滑り出すように抜け出した。

「リミッター解除機能に驚いているようだな、見ての通りこいつは一定時間の間、制限前のスペックをさらに上回るパワーを発揮できるんだ。時間がないからさっさと片付けさせて貰うぞ」

 トヨオカへそう通信があった後、ヘビミコは彼のタイガーキールバックへと先程とは比べ物にならない程のスピードで接近してきた。

(こいつ、旧式機なのにこの機体とあまり変わらないスピードを出せるのか!?)

 トヨオカはその事に怯んでヘビミコの突進からの拳打を回避する事ができなかったが、幸い廻し合羽のような装甲板が攻撃を防いだ為、機体の損傷は避けられた。

 さらに、彼はこの攻撃を受けた事によって一枚装甲板を叩き折られた代わりに、ヘビミコという絡繰人形の弱点を二つ発見する事が出来た。

 一つは装甲板を殴ったヘビミコの左の拳も潰れている事であり、もう一つはヘビミコの機体の温度が急激に上昇している事である。過剰に動く分、旧式の冷却装置では冷却が間に合わないのであろう。先程のホースやわざわざ川の中で戦っている理由もその弱点を補う為のものらしい。

 トヨオカはこの二つ目の弱点を突く事にした。

 まず、一旦敵機から距離を置きつつ、弾道の調整を自動から手動に切り替えて絡繰人形用ハンドガンをその足目掛けて発砲する。すると、ヘビミコは被弾する事を避けて徐々に川の中から岸の方へと追い込まれていった。それでも、タイガーキールバックが弾をリロードする隙をついて川の中心へと戻ろうとするが、専用の脇差を振りかざしてそれを防ぐ。

 それを繰り返すうちにとうとうヘビミコは川から出ざるを得なくなった。

「確かにリミッター解除の格闘能力は大したものだが、自壊するというリスクを負っておきながら、俺の機体と同等程度の力しか出せないようだな。その機体はリミッター解除機能を使う為にコックピットを調整しているせいかコントロールこそジャックできそうにないが、それでも武器と頑丈なフレームがある分こちらが有利である事に変わりはない。まだ続けるのか?」

 と、トヨオカは再度呼びかけてみる。

 しかし、

「性能差がなんだ、俺には長年自警団で培ってきた技術と誇りがあるんだ」

 と、ヘビミコは複雑な動きをしながらタイガーキールバックへと突っ込んできた。

 トヨオカはヘビミコが川に戻ろうとする動きを阻止しながら、攻撃を躱し続ける。

 すると、一分も経たないうちにヘビミコは放熱が間に合わなくなり機能を停止した。

 その後、タイガーキールバックでコックピットハッチを無理矢理こじ開けて搭乗者を引きずり出すと、先程のリンガルスの搭乗者も引き連れて署に戻って行った。

 決闘の理由を二人に問いただしたところ、リンガルスの搭乗者がヘビミコの搭乗者の仕事を横取りした挙句、その操縦技術や彼の属する自警団を侮辱した事がことの発端らしい事が分かった。

 結局、二人とも自警団としての活動外の戦闘であったため絡繰人形の免許は停止になった上に、罰金代わりに絡繰人形を没収されたため自警団を辞める事になったが、リンガルスとヘビミコは両機とも合法な範囲内での改造に留められていたため、それ以上の刑は課されなかった。

 その没収したヘビミコを見ながら、

「こういう合法的な改造の範疇で造り出された化物みたいな機体ってまだあるんスかね?」

 とオサベはトヨオカに話しかけた。

「こう実物を見てしまうと無いとは言い切れないな……」

「もし、こういうのが集団で襲いかかって来たらトヨオカさん勝てますか?」

 これには流石に彼も自信が持てなかった。

 自信満々に出て行ったにも関わらず、遥かに性能が劣る筈の機体に装甲板を破壊されたので何を言っていいか彼には分からない。

 彼が絞り出した返答は、

「まぁ、そういう状況はあまり無いとは思うがな」

 という、答えになっているのかなっていないのかよく分からないものだった。

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