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新学期と初陣

 春休みが終了する直前にリントヴルムの設計は完了し、その図案はオート・エト・ロタイ社に承認されたので、材料の提供や出資を受けてショウゾウと彼の仲間は自警団などにバレないように制作を開始した。

 ハルト達が手を加えた結果リントヴルムには、武器へ電力を回すための大型コンデンサーが増設され、その増設によって外す事になった火器管制システムの代わりに兵装担当を乗せるため複座式のコックピットになり、増設されたハードポイントに尻尾のようなレーザー発生装置や、レティキュレートの物とは比べ物にならないほど高威力になったレールガン、カミシモ重工の工場にあったものを参考に造られた長剣などの武器が追加されている。さらに、レールガンは肩についているため、たとえ両腕が破損したとしても継戦できるようになった。

 しかし、無理矢理複座式にした所為でコックピットはかなり狭くなるという問題が新たに発生した上に、機体自体も予定よりも大型化してしまった。とりわけ問題なのは稼働時間であり、こればっかりはどうしても改善する事はできず、通常状態で一時間、リミッター解除状態で十分間動かす事が限界だった。

 ハルトとシライシはショウゾウに他に何か手伝える事は他にあるか尋ねたが、これ以上はないとのことだったので、邪魔にならないように普通に学校に通う事にした。

 二年生に進級したハルトはいつもつるんでいるメンバーとは大方また同じクラスになったが、ムトウだけは別のクラスになってしまった。

 ただ、腐れ縁というものはクラスが離れただけではなかなか断ち切れるものでは無い。

 この日の放課後もハルトとナカワタセは、ムトウと共にゲームセンターへと行き、ビデオゲームやホッケーなどで対戦した後、ファストフードへと趣き数十分に一本しかない電車の到着までの暇つぶしをした。

 ちなみに、彼らが対戦したゲームの中には絡繰人形同士の戦闘を再現したものもあったが、結果はムトウが全勝、ハルトが一勝一敗、ナカワタセが全敗だった。

 当然、それについての話も挙がる。

「文化祭のレースでは負けたけど、今回は俺の勝ちだね。射撃を全然使わないでわざわざ突っ込んで来るのを止めたらかなり強くなるんじゃない?」

「いや、射撃ってあまり当たらない上に当たっても大したダメージにはならないイメージだったからどうしてもな……」

 ハルトは若干悔しそうな表情をしながらコーラを飲む。

「まぁ、ほぼ何もせず負けた俺よりは二人ともかなり上手いんじゃないか?」

 ナカワタセはフォローを入れつつ、

「そう言えば、絡繰人形と言えばこの前警察の前を通った際に見慣れない機体を見かけたな……何か昔の旅人の様なデザインの。見た感じだと、この前試験的に導入を予定した機体ってのではなさそうだったな」

 と、別の話へと発展させた。

 ハルトには身に覚えがある話だったが、

「昔の旅人? 何かイメージし難いなぁ。しかし、そんな妙な特徴があるなら何かのイベントで使うんじゃないか?」

 とすっとぼけた。

 彼も一応守秘義務の事をトヨオカから伝えられているので、無闇に口を滑らせる訳にはいかない。

「いや、そんな感じではなかったぞ。マントみたいな物を装着していたが、それはかなり頑丈そうだったし、頭に付いていた編笠の様な物も何か特殊な機械のようだった。イベント用というよりは、さっきゲームで動かしていた戦闘用に近い感じだった」

「それなら、また試験的に導入するつもりなのかもな」

 ハルトはそう答えた。

 守秘義務に抵触するかもと思ったが、話の流れからしてそうはならないだろうと思っての発言である。

「まぁ、前回みたいに暴走しないといいけれどね」

 ムトウがそう締めたところで、駅に向かうには丁度いい時間になってきた。

 ムトウはこの近所在住なので、ハルトとナカワタセは彼と別れて二人で駅へと向かって行く。

 道中、ハルトは

「そう言えばシライシと最近頻繁に会っているようだけど、どんな話しているんだ? 因みに俺の誕生日ならもう過ぎたぞ」

 と、ナカワタセに尋ねられた。

 彼は

「そうなのか、誕生日については初耳だ。来年は何か贈り物を用意しよう」

 と、前置きをした後、

「ユ……シライシとはお前やムトウと一緒にいる時と大して変わらないよ、適当に話して、その辺にぷらぷら遊びに行ってって感じだ。唯一違うのは買い物に行った際に荷物持ちをさせられる事があるくらいだな。確かに二人で会う事が増えてやや親密さが増した事は事実だけど、それはお前らにも言える事だし、交際もしていない」

 と答えた。

 事実を伝えたつもりだったが横を歩いているナカワタセの耳にはそうは聞こえなかったらしく、

「そこまで聞いていないし、そんなに長々と言われると少し怪しくなるな。本当に付き合っていないのか?」

 とやや茶化し気味に重ねて問いかけられた。

「ただの補足説明だ、意味なんてないよ。よかったな、俺があいつと交際していなくて」

 ハルトは少し反撃した。

 すると、

「どういう意味だよ!」

 と、ナカワタセは彼にじゃれ付くようにヘッドロックを掛けてきた。

「電車に遅れるぞ……」

 そう言いながら彼は首を締めている腕をタップして、解くように促す。

 その後、二人は時間を無駄に消費した分やや早足で駅へと向かって行った。

 駅へと到着すると電車は既に発車する直前だったので二人は急いでそれに乗り込む。

 電車内でハルトは改めてシライシとリントヴルムについての秘密を共有してからの彼女との関係について少し考えてみた。

 一緒にリントヴルムの設計をしている際はそうでもないが、それ以外の関係は考えれば考えるほどただの男女交際にしか思えなくなって少し照れ臭くなった。


 ハルト達の話題に挙がっていた警察機は今まさに出撃の準備をしていた。

 自警団同士で絡繰人形を使って決闘をしているという通報が入ったためである。

 喧嘩をしている二機の搭乗者は所属している団体が異なり、このまま自警団の他のメンバーが出て行って止めようものなら抗争に発展してしまう可能性があるため、ロボット犯罪対策課に話が回ってきたという経緯だ。

「しかし、二機っスよ。いくら最新鋭の競技用機でも流石にきついんじゃないっスか?」

 と、トレーラーの運転席のオサベから荷台のタイガーキールバックに通信が入る。

「やってみなけりゃ分からないな。ただ、あれだけの機体だから取り押さえる自信はそこそこある」

 機体に搭乗しているトヨオカは、そのチェックをしながら応答した。

 確認しながら改めて、

(大した機体だな)

 と、彼は思う。

 事件現場から署までの直線距離はかなりあるが、既に二機の動きが手に取るように分かるのだ。

 彼は先程、そこそこ自信があると言ったが本当はそこそこどころでは無く自信に満ちていた。むしろ、自警団の二人を殺さないようにどう手加減しようかと考えていた程である。

 それを察したのかオサベは、

「冷静さを失わないで下さいね。相手は操縦に慣れてるんスから」

 と言ってトレーラーを発進させた。

「大丈夫だよ」

 そう答えながら水を飲んだが、横倒しになっている事を忘れていたためむせた。

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