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新たな毒蛇

 冬休みに入る少し前にヤマカガシの修復作業は完了し、とある日の昼休みハルトはそれを知らされた。

 上半身は頭部と腕が無くなって胴体だけになり、脚部も歩行できた事が奇跡であるくらいには破損していたためハルトは直るまでに一年以上かかるのではないかと考えていたが、ヤマカガシにはいくつか予備パーツがあったのでコックピット周りが無事なら修理にはそれほど時間はかからなかったらしい。

 さらに、最近新しくついた協力者から試してもらいたい新素材という物が秋頃に送られてきたらしく、新たにそれを装甲や関節に使っているため、機体の重量はやや軽くなり、強度も少し強化されているとのことであった。

 一応、その素材を使う事によって機体が軽くなり、拳打や蹴りの威力が少し落ちる、というデメリットがあるらしいが、スピードが少し速くなった事に加え、今までよりもマニュピレーターなどが潰れにくくなっているため総合的には使いやすくなっているといえよう。

 その他、スラスターは追加装甲と一体だったものが換装装備になって、燃料もヒドラジンを使う物から液体水素を使う物に変更されたり、ハンマーが爆発で壊れてしまっていたため新たに伸縮可能な槍が追加されたりと、装備もいくつか変更されており、以前と変わらないものは大まかな外観とサーマルガンの性能くらいであろう。

「今日は何のテストをすればいいんすか?」

 この日授業が終わって直帰したハルトは、直ったばかりの機体を見ながらショウゾウに尋ねた。

「機体が軽くなった分、幾らか走行スピードが速くなっているはずだ。今日はその変化を見ようと思う」

『スピードが速くなっているはず』と聞いてハルトは少し疑問に思った。彼は昼休みの時点で修理後のヤマカガシの性能や装備に関する説明を大雑把には聞いていたが、サイドワインダーやレティキュレートなどと比べた場合どうなのかは昼休みに聞きそびれている。

 そこでその旨をショウゾウに尋ねてみると、

「レティキュレートって機体よりは遥かに高性能だと思うぞ、あれは空も飛べなかったみたいだし、リミッター解除やレーザー兵器のような特殊な機能も持ち合わせていなそうだったからな。ただ、リミッター解除を使わなけりゃサイドワインダーみたいな軍用機には力負けするだろうし、今度警察が一部採用を検討しているスパイダーテイルって機体にも器用さでは及ばないだろうな」

 との事だった。

 再戦すればレティキュレートに勝てるかもしれないと考えると少し嬉しくなったが、同時にサイドワインダーに勝てたのは運が良かっただけだと言われたようで少々複雑な気持ちのままハルトはショウゾウとともに山の上の練習場へと向かっていった。


 スパイダーテイルは自警団では対応できない程強力な絡繰人形が犯罪に使われた事で、警察が急遽採用を検討し始めた機体である。

 元々、警察でも絡繰人形を一新しようという話はかなり以前からあったが、これまでは自警団だけで充分対応できていたので先送りにされていた。

 しかしながらコバヤシ・チョコメロディが起こした事件をきっかけにその話が再浮上し、現在は試しにしばらくの間他国から数機を借り受けて様子を見ようというところまで話が進んでいる。

 その機体がジパングの港に運びこまれ、トレーラーで輸送している最中に事件は起こった。

 突如、パイロットが乗っていない状態であるにも関わらず機体が動き出し、他のトレーラーに積み込まれている同型機を破壊すると、そのまま町の方へと飛んで行ったのである。

 元々スパイダーテイルは飛行可能な機体ではあったが、警察では必要ない機能なので借り受ける前に制限するように依頼してある。しかし、今飛んで行った機体にそれがかかっていない事は火を見るより明らかであり、さらに他のスパイダーテイルを破壊する際にあらかじめ取り除くように要請していたはずの隠し武器を使っていた。

(これはまずい)

 そう思ったトレーラーの運転手は炎上する車から脱出すると大急ぎで警察に電話をかけた。

 彼は他にも救急車の手配や、他のトレーラーの運転手の安否の確認などやる事があったので、説明はスパイダーテイルが暴走した事と、向かった方向、人や車ではなく絡繰人形を優先的に破壊しているように見えたという事だけを簡単に伝えている。

 彼は、通報した後でうまく伝わったか不安になりながら他の運転手の救出活動などをしていたが、一通りの作業を終えた後、ネットニュースで『絡繰人形暴走、トラックを破壊して町へ』という見出しを見たので少しだけホッとし、自身も救急車へと入って行った。


 スパイダーテイルが暴走したというニュースをハルトとショウゾウが知ったのはヤマカガシのスピードの計測を終えて家へと帰ってきた後である。

 ハルトはサイドワインダーの時みたく、ヤマカガシで出撃しようとしたが今度もショウゾウに止められた。

「このスパイダーテイルってのは町へと向かっているんですよ? この前のサイドワインダーよりも被害が増える可能性があるから尚更出撃するべきじゃないっすか?」

 と、今回もハルトはショウゾウを説得しようとするが、

「確かに町へと向かっている以上警察予備隊は手を出しにくいだろうし、自警団の機体の性能ではスパイダーテイルには勝てない。あれを止め得るのは現状ヤマカガシくらいだろう。しかしだな、今はどうしようもない。町を守ろうとする心意気は買ってやるが、ヤマカガシの充電が完了するまで後二十分くらいはかかる」

 と、前回とは別の切り口で返された。

 警察が採用しようとしていたスパイダーテイルは軍用機をデチューンしたものだが、今暴走している機体は完全に元のスペックの状態のものである可能性が高いという話である。そのため、不完全な状態では戦える相手ではない事はサイドワインダーと戦ったハルトにはなんとなくわかる。

「分かりました。その代わりスラスターや武器の準備だけはやらせてください」

 少し焦燥感を感じながらハルトは言った。

「…いいだろう」

 ショウゾウはそう答えたが、彼も不安そうな表情を浮かべている。充電が完了していなければ確実に苦戦するという彼の言葉は嘘ではなかったが、彼の言葉の本質はハルトには軍用機なんかと戦って欲しくないというところにある。

(この二十分で全部解決してくれればいいが…)

 なんとなくレティキュレートの姿を思い浮かべながらショウゾウはゆっくりと工場へと向かい、ハルトもそれについて行った。

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