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VSサイドワインダー

 ヤマカガシは敵機、サイドワインダー目掛けてハンマーを振り下ろしたが、その一撃はハンマーより遥かに小さなナイフに防がれた。

 直後、思いっきりハンマーを返されつつマニュピレーターを使った掌底打ちで突き飛ばされた。

 ハルトが接近戦を仕掛けたのは、サイドワインダーがライフルを持っていたのが確認できたため、接近してそれの取り回しを悪くしてしまおうという作戦があったからだったが、目の前の機体は接近戦も得意らしい。

 それどころか、

(力負けしているかもしれんな)

 とさえハルトは思った。

 そこでハルトは一旦距離をとって、サーマルガンで戦いつつもう少し相手の出方を窺うことにした。ハルトの射撃はなかなか正確であり、機動しながらも三発中二発は命中させていたが、低威力モードでは何発撃ってもあまり効果はない。サイドワインダー側も動き続けているヤマカガシにはライフルが当たらなかったので戦いはしばらくの間硬直状態になった。

(威力を高めるか…)

 ハルトがひたすら機体を動かしながら考えていると、サイドワインダーは突如戦法を変えて来た。右手でライフルを連射しながら、その腰にあたる位置についていた装置をヤマカガシの方へと向け、そこから光のようなものを放ったのである。光はヤマカガシの左腕へと直撃し、それを焼き切った。

(くそったれ…何て武器だ。防御力無視かよ)

 これ以上謎の光を照射されるのはまずいと判断し、ハルトは一旦ヤマカガシを工場の陰に退避させた。

 すると、後でこの港へと向かうと言っていたショウゾウのリンガルスⅡから連絡が入った。

「機体の情報が少しだけ分かったぞ、敵機の名前はサイドワインダーだ。高性能になりすぎてコストが高くなり警察予備隊機には採用されなかった機体らしいんだが、どう高性能なのかはあまり情報が出てこなかった。唯一出て来たのはレーザーを搭載予定って一文なんだが何か心当たりはあるか?」

「ありますよ、今さっきそれらしい武器に左腕を落とされたところっす。見ませんでしたか?」

「今そっちに向かっている途中でまだ映像を鮮明に共有できる距離じゃないんだ。しかし、それだけの武器なら何か…」

 と、ショウゾウが言っている途中で工場の壁が赤くなり始めた。レーザーの熱で溶け始めているらしい。

「また何かあったら連絡します」

 そう言って通信を切ると、ハルトはヤマカガシを壁から飛び出させ、サイドワインダーの腰に設置されているそのレーザー発生装置をサーマルガンの高威力モードで攻撃した。

 結果的に破壊には成功した。しかし、ハルトは確実に装置を破壊するために一瞬動きを止めてより正確な射撃をしていたため、サイドワインダーから放たれたライフル弾が数発直撃し、頭部が吹き飛び、胸部の追加装甲が一部破損した。

(一撃必殺の武器は破壊したが、まだ高威力のライフルが残っているな)

 ハルトは少し気を落としかけてが、光明も見つけていた。

(搭乗者の腕は大した事ない)

 のである。サイドワインダーには見たところレーザーとライフルの他にもいくつか武器が装着されており、それらも同時に発射されたらハルトも勝ち目はなかったが、敵はそうはしてこなかった。さらに、先程の数発以外はライフルの弾もヤマカガシには当たっておらず、ハルトの攻撃も全く回避できていない。

(武器を全て破壊できれば勝てるな)

 そう思って高威力モードで射撃を続け、肩のカノン砲と左腕のレールガン、さらに装甲の一部を破壊したが、蓄電されていた電気が底をついたのか、弾が切れたのか分からないが突然サーマルガンが使えなくなった。こうなってしまってはこの機体には接近戦以外に選択肢はない。

 ハルトはサーマルガンをハンマーに持ち替えると、スラスターの推進力を使ってサイドワインダーに急接近した。

 サイドワインダーはライフルを連射して接近してくるヤマカガシを止めようとするが、複雑な動きをしながら急接近してくる相手には当てることはできなかった。

 ヤマカガシは充分に接近するとサイドワインダーの胴体にハンマーを叩き込み、さらに頭部へと追撃を叩き込んだ。

 しかし、サーマルガンの高威力モードとは違って、装甲へのダメージはそこまでのものではない。

 さらにいくつも武器を破壊されて敵パイロット、コバヤシ・チョコメロディは激怒したらしく、

「そんなパワーで、そんな機体で僕に勝てると思うな!!」

 と、叫びながらサイドワインダーでヤマカガシに掴みかかり押し返し始めた。

 お互いにスラスターの推進力と機体のパワーを最大限に引き出して押し合うが、パワーも推進力もサイドワインダーの方が上であり、ヤマカガシは次第に海の方へと追いやられて行く。

「くそっ、パワーが足りない」

 ハルトはペダルを全力で踏みつつ、次の手を考えるが掴まれてしまった以上手の打ちようがない。一手を除いては。

 こうなっては仕方ないと思い、ハルトは最後の手段であるリミッター解除ボタンを押した。


 リミッターを解除した事によって稼働時間を犠牲に今までの数倍ヤマカガシの能力が上昇する。このパワーなら推進力とパワーで押し合っている今の状態からでも何かしらの技を繰り出せるだろう。

 ハルトは早速サイドワインダーを思いっきり引き倒し、その後即座に右腕を蹴ってライフルを落とさせた。

 地面を滑って行くライフル目掛けてハルトはヤマカガシを走らせそれを拾った。試作機の装備だからかライフルにセキュリティはついていない。

 その隙をついてチョコメロディはサイドワインダーを立ち上がらせて一度距離をとり、

「何なんだよお前のその機体は。スピードもパワーも僕が作った機体よりも弱いのに、そんなにボロボロなのに、何でそんなに戦えるんだよ!?」

 と、声を震えさせながらハルトに問いかけた。

 これは冷静さを欠かせるいい機会だと思い、

「ボロボロって…あんたもこれとナイフ以外武器全部潰れてるし似たようなもんだろうが。何で戦えるか? あんたより強いからじゃねぇの?」

 とハルトは煽った。

 すると、チョコメロディは案の定冷静さを欠き、サイドワインダーを突っ込ませてきたので、ハルトのヤマカガシはライフルを連射しそれを迎え撃った。

 弾は全弾命中し、装甲が少し剥がれ始めたがサイドワインダーは突撃をやめない。

 とうとう三間ほどの間合いまで接近してきてナイフで攻撃してきたが、リミッターを解除したヤマカガシの方が格闘能力は上である。

 結局、弾切れになったライフルで斬撃を防がれた挙句、胴体の装甲が剥げた箇所と頭部に拳打を叩き込まれ、脚部に回し蹴りを叩き込まれてサイドワインダーは崩れ落ちるように倒れてしまった。軍用機の試作機だけあってあまり壊れてはいないが、パイロットの心は折れてしまったらしく、スピーカーからは嗚咽が聞こえてくる。

 ただ、ヤマカガシも想定している以上のパワーで攻撃したため、マニュピレーターは潰れ、脚部の挙動もかなり悪くなってしまっている。

 それでも、ほぼ勝ちは確定したためハルトは

「勝負はついた、機体から降りて自首してきな」

 と、外部スピーカーを使ってサイドワインダーへと呼びかけた。

 しかし、返事は返ってこない。

(まぁ、騒ぎが収まればそのうち警察が来て搭乗者を連行して行くだろう)

 そう考えてハルトはここに来た時のように飛行して帰ろうとしていたところ、サイドワインダーが最後の力を振り絞るかのようにしがみついて来た。

「自首しろだと? こいつを採用しなかった警察予備隊が悪いのに何で僕が悪い事になっているんだよ。そんなことよりも、よくもそんな弱っちい機体で僕のサイドワインダーを倒してくれたな。おかげで最後の手段を使ってお前を倒さなきゃならなくなった」

 チョコメロディがそう言っている間も、ハルトは何とかサイドワインダーを振りほどこうとするが、ヤマカガシの潰れた片腕とボロボロの脚部では細かい作業ができないので、いくらリミッターを解除してパワーがある状態とはいえ、それを振りほどくことは難しかった。

「最後の手段?」

 一応ハルトは聞き返す。

「自爆装置のことだ。正式採用された警察予備隊機はさっき工場ごと潰して完全勝利を収めたのに、お前が突然現れて僕の機体をたぶん何かしらのズルい方法で倒したから、せめてお前を消してこの世から最強の機体なんて物をなくしてやる!!」

 ハルトは焦った。サイドワインダーにもヤマカガシにも推進剤がまだ残っているはずであり、もしここで爆発などされたらかなりの大爆発となって下手をしたら助からないのではないかと。

「トチ狂ってんのか!? そんなことをしたら…」

 というハルトの叫び声も、

「ハルト、脱出レバーを引け!」

 というショウゾウからの通信の声も、次の瞬間発生した爆音によってかき消された。


 爆発はサイドワインダーの周りだけでなく、工場をも巻き込んでさらに巨大なものになった。

 爆発が起こっている間、ショウゾウはリンガルスⅡの中でヤマカガシへと通信をし続けたが応答はなかった。

 爆発が収まったところでショウゾウの携帯が鳴り響いた。

「叔父さん、まだ海中にいますか? 今の爆発で機体がボロボロになったんで退けそうにないんすけど、どうすればいいっすかね?」

 と、ハルトから電話が入ったのである。

「無事だったのか、良かった。それで、機体の状況はどんな感じなんだ? コックピット周りは無事なのか?」

「中はかなり暑いっすけどその辺は損傷はないっす。ただ、右手が吹き飛び、追加装甲は焼け落ちて、脚部は五分歩いただけで崩れ落ちそうなくらい弱ってるみたいっす」

「まだ、歩行できるのか?」

「逆に歩行機能以外の機能は全部使えそうにないっすね。レーダーも通信機能もセンサーも駄目になったので、スクリーンには今機体のダメージに関する情報しか映ってないっす。強いて挙げるなら脱出機能でしょうけど、それも今使ったら蒸し焼きになるだけでしょうし。ただ、爆発前の時点で損傷していた方の脚を引きずる形にはなると思うので、歩行はできますけどそこまで速くは歩けないっす」

「そういうことなら、少し機体を歩行させて海へ飛び込め。水中適正が無くなっているから機体自体はショートして動かなくなるかもしれんが、コックピットは機体とは別の物として作られている。脱出した先が水面だった時も想定して作ってあるから、コックピットが無事なら海に飛び込んでもお前に害はない。飛び込んだところをリンガルスⅡで俺が引っ張っていく」

 話が纏まったところで、ハルトはヤマカガシをゆっくりと進め始めた。メインカメラどころか予備のカメラまで壊れているため、本来ならハッチを開けて目視で海の方向を確認して動かすのが一番手っ取り早いのだろうが、焼け落ちた追加装甲に付いていたスラスターからヒドラジンが漏れていたらまずいので、ハッチは閉めたままスマートフォンでマップを確認しながら移動して行く。

 装甲を剥がれ落としながら一歩一歩進んで行き、海の手前までくると、そのまま崩れ落ちるようにして海へと飛び込んだ。

 ショウゾウののリンガルスⅡは海に落ちたヤマカガシを回収すると、そのまま人気(ひとけ)の少ない海岸まで連れて行き、そこから上陸した。

 その海岸で、自爆に巻き込まれた後の愛機の姿をハルトは初めて見ることになった。彼は破損の程度の線引きにはあまり詳しくはなかったが、少なくとも中破以上の破損をしている事はすぐにわかった。

「すまねぇな…」

 ボロボロになった機体を見ながら彼はそう呟く。

「リミッター解除ってのはパワーやスピードは上がるが、無理な力を出すから発動中は機体がかなり壊れやすくなるんだ。その状態であの爆発に耐えたって事はお前を守ろうとしたのかもしれねぇな」

 ショウゾウは仲間にトレーラーの手配をしながらそう言った。

 しばらくすると彼の仲間が運転する二台のトレーラーが来たので、ヤマカガシとリンガルスⅡをそれに乗せてハルトとショウゾウは家へと戻って行った。


 翌日、ある程度工場の火災が鎮火した後にサイドワインダーのコックピット内で死にかけていたコバヤシ・チョコメロディが見つかった。

 ニュースによれば、彼は現在意識不明だそうだが命は助かる見込みらしく、意識が戻り次第取り調べを受ける予定との事である。その事についてもハルトは気になっていたが、彼が本当に知りたかったのは、あの工場の敷地内に散乱したであろうヤマカガシのパーツについてであった。幸いあの近くにいた自警団にも、その他の民間人にも突然飛来してサイドワインダーと戦った謎の機体は目撃されていないらしく、絡繰人形が暴れていて危険という事で報道ヘリは飛んでいなかったらしい。そのため、昨夜戦闘があったという事は一部の人間しか知らないが、レーザーで落とされた左腕や焼け落ちた装甲などがあの場に残ってしまっている。意識を取り戻したチョコメロディの証言や、それらの物的証拠から正体がバレないとも限らないので、できれば回収しておきたかったのである。

 しかしテレビから流れてきた情報は工場の焼け跡の様子と、犯人の機体と見られる残骸は見つかっていないというリポーターの言葉だけで、謎の機体の残骸の事については一切触れられていなかった。

 後日、チョコメロディが意識を取り戻し、取り調べの結果、動機はカミシモ重工への恨みであり、機体を自爆させて自殺するついでにどうせなら工場を焼き尽くしてやろうと思ったと供述しているという事でこの事件は決着した。どうやら、ハルトとの戦闘の事については何も言わなかったらしい。

 当然この事件とヤマカガシは何も関わり合いがない事になり、夏休みの間とうとうマツナガ家への問い合わせの電話はなかった。

 夏休み明けのハルトの学校でも、犯人の名前の奇抜さからかそのニュースは少し時間が経過しているにも関わらず、未だに一部の絡繰人形マニアの間で話題となっており、悪人の命すら守るとは慈悲深い機体だとサイドワインダーが持ち上げられていた。しかし、実際に戦ったハルトは、あんな変な男の無理心中に付き合うくらいならサイドワインダーは一人で死んだ方がマシだと思ったのではないか、とその話に聞き耳を立てながら一人違う事を考えていた。

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