あるものと ないものと
土と
草と
石ころと
トカゲと
青々とした水田と
こんもりした丘と
湿度の高い空気と
朽ち果てた土壁の家と
1300年前の寺院の跡と
白い蓮の花が咲くため池と
梅雨空にぽっかり開いた青い空と
青空の映った水溜まり
草いきれと土の香り
控え目な虫の声
古い一本道
そして私
ここにあるのは それだけ
シトラスの香水や
さざめくおしゃべりや
トゥールビヨンの腕時計や
妖艶な丸みを帯びたオープンカーや
キラキラと七色に輝くショーウインドウや
しなやかな体に流行の衣服を巻いた美しい男女や
カフェに行けば400円で買える手軽な笑顔と明るい音楽もない
都市のフェロモンに迷走した日々は ここにはない