愛と
初めましての方もそうでない方もどうも
有野かおる(アリノカオル)と申します。
そういえば、あけましておめでとうございました。
この作品を目に留めて頂き
本当にありがとうございます。
全力で執筆させて頂きますので
最後までお付き合い頂ければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
これを読んで下さっているあなたと
この場を勧めてくれた友人に
最大の感謝を。
「ごめんなさい!もうやめて!!もうしないから…!!」
そう叫んだ女の右足に包丁の刃が当てられた。
「ぎゃあああああああ!!」
薄暗い部屋に擘くような悲鳴が響く。
弱い裸電球が床を舐めるように照らした、
夥しい量の赤を。
よろけながら逃げようとした女は、自身の血液で足を滑らせた。
「ッ……!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
後ずさったそこにはもう、逃げ場が無い。
女の目には明らかな怯えの色。
しかしそんな事には関係なく、女の鳩尾に拳がめり込んだ。
形容のし難い音が女の口から漏れる。
「……かはッ……!」
女の髪が力任せに引っ張られる。
「い、痛いです!もう…もうやめて下さい…!」
次の瞬間女の顎が砕けた。
脳が揺れると同時に女の首筋に注射器の針が刺さる。
明らかに人の体内に入ってはいけないであろう
琥珀色の液体がゆっくりと押し出された。
数秒後、女の目からは怯えの色は消えていた。
代わりに、焦点の合わない潤んだ瞳が残った。
うわ言のように女は言う。
「いタッ……くない…です…」
それは、一つのルール。
「ありがと、ございます、あ…愛してくれて嬉しい…です」
そして歪んだ愛の形。
痛みで朦朧とした意識の中で女は言う。
「もっと…もっとあいしてください…!」
それが唯一の救いだから。
痛みが、裂ける傷が、流れ出る血液が、女の精神を、身体を蝕んでいく。
しかしそれら全てを、女は≪愛されている≫と認識する。
「好きです、好きです、好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです…」
腕を、脚を、胸を切りつけられても
震えた唇からこぼれる呟きは、止まない。
「痛い」の代わりに「好き」と
「止めて」の代わりに「愛してる」と
そう伝えることが愛であり救いであり、ルールだと信じているから。
突然、暴力の嵐が止んだ。
女の頬に静かにナイフの平の部分が押し当てられ、
トン、トン、と軽く二回叩いた。




