六
驚いたことに、彼女のギターは力強いというか…エッジのたった、尖った音だった。
正直、俺より上手かった。
見た目の可愛いというか、ちっちゃい感、との差が凄かった。
俺は憧れと嫉妬を同時にあじわっていた。
彼女が動きを止めた。
ギターから最後の音が…流れた。
そして、また店内は静かになる。
何もなかったかのように…
「歌って…欲しいんだけど…」
小さな声が、俺の耳に届いた。
俺は黙った。
突然の衝撃と、あの日の記憶が頭の中で混じり在って、声が出なくなっていた。
「私の憧れだったんだ…今、私がギター弾けるのも、アイドルになれたのも、全部、貴方の居たあのバンドのお陰なの…迷惑かもしれないけど、歌聞かせて、お願いします」
俺に向かって、深々と頭を下げてくる、元アイドルでギターの上手な舞桜…
「俺は……うた…えないよ、もうスパイラルのメンバーじゃないし、あいつらに悪いよ…」
「スパイラル…じゃなくタクミ…の歌が聞きたいのに…」
「…ごめん、俺、バンド辞めたし、…」
「歌いたくないの何となく、解る気がする…でも」
「俺帰るわ」
「待って…」
俺は立ち上がり店の外に出ようとした。
「私からもお願いします」
ママが出口の前に立ち俺に頭を下げた。




