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そこにいて  作者: 河岸ミント
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店内はものすごく静かだった。

通夜の方が何倍も騒がしのではないかと思えた。

口をつけていない焼酎のグラスと乾き物と一口チョコが合わせ盛りしてあるガラスの様なプラスチックの皿がテーブルの上に置かれていた。

ママは此方を窺うような素振りを見せつつも、カウンターの向こう側にいて、小さな流し台の前に立ち何か、料理をしているようだった。

隣の席には、舞桜という源氏名の女の子…女が座っていた。

一応、二十二才らしいが…本当かどうか疑わしいものだった。

実際は、二十六才だと後から知って更に驚く事になるのだが、今の俺には知るよしもなかった。

簡単な自己紹介みたいな会話が最初あったきり、話題もなく二人して静かに飲んでいた。

合コンやお見合いの方が、会話が在るかも知れなかった。

まぁ、女の子と話がするのが得意ではないし、年齢差が有りすぎて、共通の話題とか余り無さそうだったので、こんなものだろうと思いながら、静かに酒を飲んでいた。

不意に彼女が声をかけてきた。

「何か歌ってみる?」

そう言って、分厚いカラオケの選曲リストを渡してきた。

「いいよ…持ち合わせ余り持ってないから…」

「ママが歌っていいって…」

「そう…」

俺は十八番を…二十年ほど前に、流行っていた…邦楽ロックをリクエストした。


久しぶりに何もかも忘れて、思いっきり歌った。


彼女がどんな顔で俺の事を見ていたなんて、その時の俺は全然気が付かなかった。


「私も歌っちゃおうかな?…ママ『恋心プラスマイナス』お願いします!」

「舞桜?いいの?歌って?」

「いいの!いいの!昔事だし!マイク頂戴!」

そう言って、笑いながら彼女は俺からマイクを受けとるとステージに上がるようにソファーの上に立つ、曲が流れ始めると自然な動きで踊り始めた。


その姿はまるで妖精のようで、その声は強くて優しくて…思わず見とれて、聞き入ってしまった。


曲が終わったとき、自分の心臓がドクンと一瞬跳ねていた。

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