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そこにいて  作者: 河岸ミント
3/19

俺は飲み屋のトイレの窓から真っ暗な外へと逃げ出そうとした。

窓の下を目を凝らして見れば、エアコンの室外機のようなものが見えた。

俺は躊躇なくそれに足をのせた。

バキッ!

不意に室外機だと思っていたものが、壊れた。

「えっ?」

どうやらそれはダストボックスだったらしく、プラスチックのフタをおもいっきり踏み抜いた俺は、バランスを崩して地面に倒れこんでしまった。

派手な物音を響かせたせいか、俺が逃げ出したトイレの窓の隣の窓がいきよい良く開く。

「この!痴漢野郎!」

と叫びながら、舞桜がモップを片手に下半身はジャージのパンツをはいて、上半身はスポーツブラ姿で外へと飛び出してきた。

「今日こそは捕まえて…って、てててりゃ…」

ポカ

俺の頭を彼女が軽く叩いた。

「随分いい趣味ね」

「はっ?、これは誤解だ!誤解」

「私の着替えを覗こうとしてたんでしょ!」

冷たい彼女の視線が突き刺さる。

俺は地面に横たわり彼女を見上げる形になっているせいか、やけに彼女が大きく見えた。

そして、軽く混乱している俺は思わず、現実逃避よろしく、彼女の胸元に視線がいってしまった。

「どこ見てるのよ!まったく!なにが誤解よ!」

「はっ?何も発展途上に…」

「この!えっろ野郎!さっきの男につき出してやる!」

「まて!ごかいだ!」

「五階も六階もないから!」

「ちょっと、ちょ、痛、痛っ!」

彼女が俺の耳を鷲掴みして、思いっきり引っ張ってきた。




「騒がしいわね!って、ちょっと、舞桜!何やってるの!」

「ママ!コイツ痴…」

「お客様に何やってるの!襲うなら店の中でやりなさい!」

「「へっ?」」

「彼氏が出来ないからって、見境無さすぎよ!ママがもっといい男紹介するから!盛りのついた猫みたいな事しちゃだめよ!」

「誰がこんなやつ襲うのよ!」



「なんだ!喧嘩か?…恥女か?恥女が男襲ってるぞ!」

騒ぎを聞き付けた酔っぱらいが、俺たちの前に現れた。

「違う!違うから!」

彼女の叫び声が辺りに響き渡っていた。

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