家族小景「秋の日の風邪」
ショウは家で、ベッドに寝ていた。お母さんが手でショウのおでこをさわり、熱を確かめている。
「あそびに行きたい!」とだだをこねるショウ。
「だめよ。今ショウは熱があるんだから。寝るのが先」
お母さんが困ったように言う。
「おなかすいた……」
「その調子なら、熱が下がれば大丈夫そうね」
お母さんがちょっと安心したようにショウを見た。
「ちょっと待ってね」
お母さんが部屋の外に出ていった。
しばらくすると、食べ物のにおいがキッチンからしてきた。
お米のにおいだ。それと、リンゴのにおいもする。
「はい、お待たせ」
お母さんがプレートにふたつのお皿とひとつのスプーンを載せて持ってきた。
お皿のひとつには、おかゆさん。もうひとつのお皿には、すったリンゴが入っている。
「わあい、ごはん!」
ショウはスプーンを受け取って満面の笑みを浮かべた。
「熱いからふーふーして食べるのよ」
「はあい!」
ショウはひとさじ、ひとさじゆっくりとおかゆさんを口に運ぶ。
お母さんはずっとショウの顔を見ていた。
「はやく治るといいわね」
「ねー」
ふたりはにっこりと笑っていた。秋風に冷やされて風邪を引いてしまったけれど、看病してくれるお母さんがいてくれたので、ショウはこんな日も悪くないと思っていた。