表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想機動輝星  作者: sabuo
第二章 騎士の夢 BLADE RUNNER
61/74

第48話 『輝木』


「SMF!?」

リディスが自分に手伝えというのも珍しいが、それ以上にSMFがこの町に来ることにヒースは驚いた。

「戦況でも悪化したのか? 先月あんなに潰したのに」

「いえ、実験だそうです。それで校長に呼び出されて案内をしろと」

「マジか…で、手伝えって言うのはあのババアの命令か」

「あなた、校長に少しを敬意を」

「何が敬意だ。あの五十越えの戦えない奴が、のんびり座っているだけじゃあないか」

と、ヒースは憤慨した。

ヒースの嫌いな者は、ムカつく事をする、または人が戦ってる時にイスにふんぞりかえっている奴である―――もちろん、そう思っているだけであるが。この場合、貴族や軍の司令官である。

「敵はフリークス、一つ残らず殲滅する。それだけだ」

「単純ですわね。あなた、校長も色々と」

「やっているってんだろ、それが気に入らん。みんな戦え、総力戦だ」

そう言ってヒースはグラスの中の酒をいっきに飲み干した。

「なにが聖騎士だ、特権だ、権力だ、訳がわからん。そんな物くれてやれ」

「今日はやけにいらいらしていますわね」

「お前もそのわざとらしいお嬢様言葉もやめとけ、みっともない」

「…色々と重要なのよこれが」

はあ、とため息をつくリディス。ヒースの言いいたい事はは彼女も同じだからだ。

聖騎士になりたいというのがリディスの夢だった。父のように、弱き民を守り、戦う聖騎士に憧れていた。

その一心で、必死にがんばった。リディスの父がどこかにいってしまった時も、がんばった。そして聖騎士になった。だが、

「聖騎士の公務のほとんどが、名ばかりの議会、貴族のパーティとか催しばかり、戦いなんて」

「だから白百合騎士団を作ってその団長になった訳だ。暴れたいから」

「それはあなた…こうでもしない限り、フリークスの戦う事ができない」

リディスは天井を見た、意外とせまいバーだった。

「…南部戦線に行けたらなあ」

極東連合軍がその総力を挙げて奪還しようとしている極東南部。人間界で言えばベトナムのあたりである。

聖暦3001年の第二次フリークス侵攻、それ以来、極東南部はフリークスの実行支配域になっていた。

そこを、奪還する。それが極東連合軍の目標であった。

極東南部を奪還すればフリークスの本拠、南極への侵攻作戦への足がかりとなる。

連合軍は必死だった。それにリディスは加わりたい。

「協会は許可してくれない。それは連合軍のやることだって」

「聖騎士はおとなしく内政をやっておけって? 馬鹿馬鹿しい」

「そうよ、まったく。極東連合軍を信用しているんだろうけど。あんな軍隊のどこが頼りになるっていうの、無能の集まりよ、あれは」

「ただし、SMFのレオス元帥は違う。だろ、閣下だけは違う。SMFと、レオス・オブライエン元帥だけは」

ヒースは、彼女にしては珍しく真面目な顔で言った、しかも閣下とつけて、

「レオス元帥は違う、あれは本物だ、戦いをしっている、フリークスが全力を挙げて戦うべき存在だとしっている」

「SMFの本拠としている極東列島はまさに、対フリークス戦の最前線。南部戦線よりもはるかに厳しい。そこを守っているんだから当然でしょう。あれは違う、あの司令官は他の無能とは違う」

「同感だな、前にこっちで休暇を取ったとき、実は会ったんだ」

「会った、休暇?」

リディスは驚いてヒースに問い詰めた。あのレオスがここに来た?

「お忍びで、と元帥はおっしゃっていたが絶対に違う、偵察だろう。元帥はこの対フリークス戦争全ての事を考えているよ」

「どうしてそんな事を、というか来たら絶対に騒ぎになっているのに、そんな事無かったのにいつのまに?」

「ああ、そりゃあそうだ、だって見た目半ズボンにコートのおっさんだから」





「ぶえっくし!!」

SMF山城基地第一食堂で早めの昼食を摂っていたレオス・オブライエンはくしゃみをした。

「どうしたレオス、風邪か?」

と、金髪の鬼、ジョナス・イーター料理長は聞いた。

「いや、違う…誰か俺のうわさをしたんだろう」とレオスは言った。

「お前のうわさをしている奴なんていつでもいるだろうに」

「それな…しかし、心配だな」

「例の七特(第七特務戦隊)か? 例の学生グループと戦技研の魔力部門のエースの?」

「正にそれだ、航空重巡洋艦一隻だけじゃあやばくないかと思ってな」

「護衛をつけるべきだと? だからあれほど」

「十分前まではそう思っていなかった、最新情報だ。近江山城がフリークスに遭遇したらしい、防空圏のすぐ近くで」

「…確かルート32を使っていたな、あそこで遭遇したのか?」ジョナスは特性ソースを仕込んでいた手を止める。

「被害は」

「無い、新型のミサイル、XMPS-2を二発消費しただけだそうだ」

「ああ、例のお前が『高すぎる』て嘆いてた奴か…まさか」

「そのまさか、だ。例の新型、TX01で迎撃したらしい」

「そうか…しかし尋常じゃないな、あのルート32で遭遇するとは」

「それなんだよ問題は、護衛艦ぐらいつけるべきだったかな…朽木君に護身用の武器は持たせたんだけど」





「…なあ、一つ聞いていいか? これだれにもらった?」

格納庫に向かう途中、茜とアレサと合流し、そこで俺はアレサにある物を差し出された。

「レオス元帥から直接、今朝もらいました」と事務口調で言うアレサ、その手には一振りの太刀らしき物が握られていた。

「これを、レオス元帥が?」

「ええ」

俺はその太刀を手に取り、鞘から出す。

刀身が無かった。

「…ねえ光男君、これ、どう見たって刀身が無いんだけど、柄しかないんだけど」と茜。

「うん」

俺はその柄を振って、調べる。木製の柄、一切の装飾が無い。

本当に何も無かった。ただの、『柄のように加工した、ただの木』

「って、これ『輝木(かがやき)』じゃねえかッ!!」

「何それ」

無理も無い、知らなくて当然だ。これを作った人間は既に死んでいる、それも平安時代に。

「これはな…朽木鈍造(なまくらづくり)という刀工の作品だ。お前は絶対知らん。なんせ平安時代の人間で、無名だからな」

ここでいう無名とは、もちろん普通の人間にとってもだし、魔術師にとっても、という意味である。

知っているのは現代日本において数名のみ、俺含む。

「しかし、実は誰よりも早く、武器と魔法の融合について研究していたんだ。そしてこの輝木は朽木鈍の最初期作品だ」

「…でも、刀身が無いよ」と茜が申し訳ないように言う。

「私、人殺しの技をいっぱい持っているけどさ、もちろん刀での戦い方や殺し方も。でも柄だけっていうのはちょっと…まさか、刀身は別にあるとか」

「レオス元帥からもらったのはこれだけです。鞘の中にも何も入っていませんでした」とアレサ。

「失礼ながらマスター、これは使えないものでは?」

「いや、これでいいんだ。記録にもそう書いてあるんだ。刀身が無い、と」

「だったらこれ、どう使うの?」

「こう使う」

基本は同じのはず。だが大事を取って、ちゃんと段取りを取ろう。


「『用意』」


輝木に対して、意識を集中させる。


「『起動』」


魔力回路に体内の魔力を入れ、起動。


「『伝達』」


体内魔力を魔力回路を通じて輝木に送る。


「『放出』」


瞬間、柄から緑色の魔力が吹き出た。問題はここから。


「『形成』」


刀の形をイメージする。日本刀、刃渡り1mぐらいで。


「『固定』」


吹き出た魔力が刃の形になる。


「『完了』」


柄から、緑色の魔力の刀身が形成されていた。緑色の光剣。

刀工朽木鈍造作、『輝木』

「これが輝木、だ。使用者の魔力を柄から放出し、それを刃にする刀だ。使わない時は魔力を切ればいい。手入れも無用。よく考えたもんだよこれ」

「…マスターは魔術師なのですか」

「一応、ただし魔術や魔法は使えないよ」

「…魔術回路が無いから、ね」と茜が言う。

「光男君の今のは、魔術では無く、光男君の欠点を生かした固有能力的な物よアレサ。それゆえ光男君は魔法を使えない」

「そう言う事だ、一応お札は使えるが」

しかしよくもまあこんな物を持っていたものだ。柄である杉(伝承によれば南の島にある杉、恐らく屋久島の屋久杉と思われる)は新品同様、綺麗だった。

「最後の記録は第二次大戦中、満州に送られ、さらにそこから西の方に送られたと書いてあったが…どこでこれを見つけたのか」

「…アフガンとか?」

「…まさかな」

まあそれにしても、と茜は輝木を様々な方向から見て、言った。

「まさに光男君向けの武器ね、これ。魔力を流し込むのは光男君の得意とする所だし」

「まあな。それを考えて総司令はこれをくれたのかもしれない」

輝木を振ってみる。軽い。刀身である魔力には重さが無い。柄は木製だから、すごく軽い。

「切れ味はどうだか分からんが、まあ無いよりマシだろ」

魔力の流れをせき止め、刀身を消して鞘に戻す。

「使わない事を祈るばかりだ」

「戦闘は私がやるから安心して光男君…そりゃそうと、これジェダイの騎士が使うアレなんじゃあ?」

「それな」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ