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幻想機動輝星  作者: sabuo
序章 ある研究員の記録 『ZERO』 IS SLEEPING
20/74

第15話 喫茶『ろまねすか』

遅くなりました、第十五話です。

「・・・まあね、そりゃ最初から成功するなんて思ってないって」

「でも、これは無いでしょう」

「まったく。だからあれほどやめておけと・・・朽木、どう見る」

「うん・・・壊れ方から見て、いやこれ明らかに」




骨格(フレーム)の強度が足りない」



聖暦3017年 5月1日 水曜日

俺達は唐橋工廠で、実験を行っていた。

ウィザードライフルの試射実験である。それも、開発中の機体に装備してだ。

「今日が月の初めだから」という謎の理由によって、ナーバルが強行したこの実験は見事に失敗した。

見事すぎて逆に凄い。

『三毛猫』右腕が吹っ飛んだ。それも肩から。コアユニット接続部からバッキリといった。

「この調子だと、全部同じだろうな」

「足を踏み出しただけでグシャっと逝ったろうな」

「でもこれは萎えるな・・・今後の事を含めて」

「「お前が設計したんだろうが!!」」

まあしかし、

「本当にどうしようか・・・取りあえず軽くしようか?」

「それでは軽くなるだけで、根本的な解決にはならないけど」

「だよな・・・」

軽すぎて逆に吹っ飛ぶとかな。

「一応これ格納庫の方に移動させようか。後から調べて何か分かるかもしんないし」

「同意見だ、ナーバル」

でも、それは良いとして、

「これ、どうやって持ってく?」

「「「・・・・・・」」」

おい。そこ凄く重要な所だろ。

「あ、私が魔法で運びますね・・・」

そう言って、イラクスが杖を取り出した。先端に霊鋼石が付いている。

「タロフ(浮かべ)」

そう言うと、三毛猫が浮いた。

それをイラクスは杖を使い、運んでいく。

「前から気になっていたけどさ・・・魔法と術式の違いってなんなの?」

茜が聞いてきた。

「魔法と、魔法をシステム化した物、そう思ってもらえば」

どちらも魔力を使うと言う共通点もあるが、

「魔法は基本的に魔術師や魔女しか使えないんだ。魔術回路が必要だから。でも術式の方は魔術式を作ることによって誰でも使える。ほら、御札とかああ言うの」

「そう言われてみれば」

「でも魔術式を作ることは相当な魔法技術が必要だから。魔法の方が使い勝手が良いんだよ」

最もこの世界にはウィザードシステムとか言うチートがあるが。

「基本的には御札やら魔力石に書いて使うんだ。まあ、それだけで魔法が発動するから兵器なんかにも転用が利くんだよ」

「使い勝手がいいってことだね・・・今度爆弾に使ってみようかな」

「おいこら」

というか、

「何故ここに、茜?」

「いや、光男君のお手伝いだよ」

「本音」

「事故に見せかけ暗殺」

「言うと思ったよ」

まったくこいつは・・・

「でもここまで本格的だとは思わなかったよ。試射実験なんてさ」

「俺もそれは思ったよ。よくそんな金集められたなあって」

「アヴェントだよ」

ナーバルが言った。

「アヴェントって・・・同じクラスの?」

「うん。あいつ北海通運の次代社長だから」

「北海通運?」

確かバビロス資本の輸送会社だったか?凄く規模が大きいと聞いたが、

「その跡取りが、アヴェントなのか?」

「そう。その為に今修行中でね、ここに来たって訳」

「本人曰く『追放』らしいがな。まあその一環で俺達に金を貸した訳だ」

「いや、それはあんたがエクストリーム土下座やって屋敷の床に穴あけたからでしょ」

ザジルの、いや竜人のエクストリーム土下座って・・・いやいい。

「で、結局何ゴルド貸してもらったんだ?」

「ええと確か・・・一億ゴルド?」

「そうかそうか・・・は?」

一億? 一億だと?

「一億・・・ゴルド?」

「うん、そうだけど」

「ついでに言うなら」

メルトが呆れた顔で言った。

「今の実験でその全てを使ったわ」

「「「・・・・・・・」」」

んーとこれは・・・

「マスター、発言してよろしいでしょうか」

アレサが手を揚げて、発言許可を求めてきた。

「発言を許可する」

「これは、『お』から始まるあの言葉の使用に適する状況かと思います」

ふむ、なるほど。アレサの言うとおりだ。この状況はあの言葉の使用に適する状況だ。

俺は息を吸って、叫んだ。

「オワタアアアアアアア!!!!」





「はあ・・・」

「光男君・・・大丈夫?」

「いや・・・もうなんでも」

どうすんのこれ。

浜大津商店街 午後5時31分

俺達は商店街をぶらぶらしていた。

学校の周辺の散策をしていなかった事を思い出し、気分転換としてそれをやっていた。

だが、さっき聞かされた衝撃の事実によるショックは、当分立ち直れそうも無い。

一億ゴルドって・・・一億ゴルドって・・・

「本が何冊買える!?」

「そっちなんだね・・・」

そっちだ。

「まあまあ。それはまた今度考えようよ。取りあえず喫茶店にでも行こうよ」

「・・・そうだな」

カフェインを取ろう。

俺達は近くにあった喫茶店に入った。

名前は、『ろまねすか』と言うらしい。

概観は洋風、中も洋風だった。席はそんなに無い。

壁際の席に英字新聞を読んでいる奴が1人。柱の影の席に男女のペアが一組。そして、

「らっしゃっせー」

猫耳黒髪褐色メイド服の女子が1人。

ていうかタリヌだった。

「・・・どうしてここに?」

「バイト」

・・・そうかバイトか。

「茜、アレサ、開いてる席見つけて座っといて。俺はこいつと話す事がある」

「え、あ、うん」

「分かりました。マスター」

そう言って二人は窓際の四人席のほうに行った。さて、

「・・・お前は俺にバイトに行くことを勧めたな?」

「ええ」

「どうして勧めた?」

「勘」

「何が起きるか分かっていたのか?」

「いいえ。私は知らない」

「本当か?」

「本当」

・・・何も言わないだろうなあこれ、

「分かった。じゃあ俺は席に行ってる」

「後で注文を取りに行く。オススメはショートケーキ」

「考えておく」

「それと」

タリヌは無表情で、平坦な口調で言った。

「次は向こうから来る」

「・・・分かった」

俺は窓際の四人席、茜とアレサが居る席に向かった。

「何だったの?」

「気にするな。唯の不思議ちゃんだ」

「・・・そう」

茜はメニューを取り出した。

「光男君どうする?」

「そうだな・・・ミルクコーヒー一杯とショートケーキ」

「じゃあ私は紅茶を」

「では私は」

アレサはそう言って、要望を言った。

「コーヒー、ブラックで砂糖マシマシ。それとショートケーキとモンブランとプリンとカステラとおはぎとチョコパフェとアイスクリームと生八橋とソフトクリームとカロリーメイトとういろうと饅頭とお餅とロンドン焼、以上で」

「「食いすぎだァァ!!!」」

どんだけ食い意地が張ってんだよ。朝食の時もサラダ大量に注文していたし。

・・・というかここ、ロンドン焼あるの!? 京都新京極にあるあのめちゃくちゃうまいカステラ饅頭出してんのここ!?

あれ知っている人少ないだろ・・・ああでもあの店頭においてあるあの製造機。あれのインパクト強いからなあ。

でも、ここで出してるのかそんな物。

「ミルクコーヒー、ブラックコーヒー、紅茶、それぞれ一杯とショートケーキ二個。それからモンブランとプリンとカステラとおはぎとチョコパフェとアイスクリームと生八橋とソフトクリームとカロリーメイトとういろうと饅頭とお餅とロンドン焼、それぞれ一個・・・ご注文承りました」

「「あったよ!!」」

ここの品揃え凄すぎるだろ!!

・・・てあれ? なんか今聞き覚えのある声が。っていうか、

「・・・交野?」

「・・・先輩?」

「・・・朽木光男?」

制服姿の交野勝と黒崎浅葱がそこに居た。





「・・・どうしてここに」

「デートだ」

即答した。浅葱が即答した。

「今日は久しぶりにデートをしている」

浅葱は俺を睨みつけながら。

「邪魔したら・・半殺しにする」

「殺すんじゃあ無いのか」

「お前は御姉様の獲物だ。手出しはしない」

ああ、そこらへん弁えてるのね。

「御姉様の温情に感謝することだな・・・まあ、精々足掻いてみろ」

浅葱は一転して、凄惨な笑みを浮かべながら言った。

「お前が御姉様に殺されるのを見るだけで満足だ。それに」

そう言いながら浅葱は交野の首根っこを掴んだ。

「私には交野が居る。こいつを殺すことの方が、私にとって重要だ」

交野が眼で「先輩助けてください!!」と訴えかけてるが、しかし、

(すまん交野、俺は茜の対応で精一杯だ・・・)

耐えてくれとしか言いようが無い。

「では、我々は用件があるので先に行かせて貰う。明日また学校で・・・最も明日も生きていればの話だが」

(生きているっつーの)

浅葱は交野を先に行かせながら、代金を支払い、そのまま出て行った。

(交野の背中にナイフを当てているように見えたのは気のせいだろうか・・・)

気のせいじゃないな、うん。

「しかしお前の妹、変わったなあ。あった時は冗談なんて全く通じない奴だったのに」

「ほんと、交野君には感謝してるよ・・・獲物になってくれて」

「恋人じゃないんですね」

ええ、と言いながら茜は周囲を警戒した。

「どうだ?」

「いない。外に出た浅葱からも合図が無い。ということは大丈夫」

「相変わらず凄いコンビネーションだな」

「まあね。で」

茜は本題に入った。

「アレサのその体・・・何?」

「・・・さあな。骨格が強化されている事を除けば、こいつは人間だ」

「人工的に人間の体を、ほぼすべて作ったってことだよね・・・それってかなり高度な事じゃない?それに」

茜は一泊置いて、言った。

「・・・どうやって魂を載せたの? 人間の体を作る事といい、それらは禁忌に近い事だけど」

「分からん。が、これも戦生研の研究結果の一つだろう」

「戦生研の、研究成果?」

ああ、と俺は続ける。

「あそこで行われているのは生体研究のみならず、聖術の研究もしているようだ」

「聖術?」

「陰陽道に近い。形式は同じ魔方陣でも、見たことの無い構成の魔術式があった。恐らく魂に関連している」

「えらく大きな話になってきたね。それで」

「それで研究し、得た技術を応用したんだ」

「アレサちゃんの魂を、この体に入れたと」

「ああ。体については、生体研究の技術を応用したんだろう」

「でもなんでそんな事を」

「それが問題だ。この技術を応用して何を作ろうとしているか、だ」

「生体兵器・・・人造人間、或いは魂に関する何か、か」

一瞬の沈黙、ややあってアレサが、

「何れにせよ、私の体は訳あり、という認識でいいですか?」

「そう言う事だ・・・まあ、この場ではっきりするかもだが」

「? どういうことですか」

俺は言う。

「総司令、英字新聞なんか読んでどうしたんですか?」





「いやー、いつから分かっていたのかな?」

そう言って、レオス総司令は英字新聞を畳んだ。

「ここに入った時からなんとなく」

さっきから俺が警戒していたのはこっちだ。それでいて何故茜に、周囲の状況を探らせたかと言えば、この人以外に誰かいないかを調べてもらったのだ。この人だけならまだいける。

「嘘・・・なんで気づかなかったの?」

茜が驚く。無理も無い。気づかなくて当然だ。気配を完全に隠していた。もっとも、

「記事の内容ではっきりしましたよ」

「記事・・・あっ」

気づいたようだ。そこに書いてあるのは、

「ゲームやプラモのレヴューしか書かれていませんよ」

「・・・アラストリアからそのまま持って来たのがまずかったのかな?」

そう言いながら総司令は向かい側、アレサの横に座った。そしていきなり本題を話し出した。

「君の予想は当たっている。あそこで行っているのは生体研究と魂の研究、そして・・・遺跡の研究だ」

「遺跡?」

「そう。旧世代のね、もっともそれしか言えないが」

「・・・アレサのこれは『訳あり』なんですか?」

「まあね。戦生研の技術の結晶と言えば、そうなるね」

総司令は続ける。

「あそこで行われている研究は、極東連合の首脳クラスと、各国研究機関の局長クラスしか知らない」

「そんな研究、何に使うんですか?」

「いや、もう使った」

・・・使った? 使っただと?

「使ったってそれはどういう・・・アレサですか?」

「いや、アレサ・・・アレサ君は二例目だ」

「二例目・・・という事は、前にもあったんですか、魂を人工的に作った『人間』に入れることが」

「うん。そしてそれに関係する事を、君に依頼しに来た」

・・・依頼?





「明日、2235。富山軍港にHAK(聖アラストリア王国)の航空輸送艦が入港する」

「HAKのですか? 何でまた」

「問題は積み荷の方だ」

積み荷?

「・・・何かとても重要な物なんですか?」

「ああ。HAKレバリスクベースからの直送だ。完全封印されている。表向きは『HAKの高級食材』という事になっているけど・・・」

「実際は違うと」

「ああ。詳しい事は言えない」

「・・・アレサに関係する事ですか」

「・・・一応」

マジかい。

「で、それをどうしろと」

「それを護衛してもらいたい」

何故か、と聞こうと思ったが、同時に答えを得た。

「・・・アレサですね」

「そういう事。君はアレサの体についてよく知っている。そして積み荷もコレに関係する物だ」

「生体兵器・・・ですか?」

「いいや。さすがにそこまでは」

「そうですか・・・」

よかった。取りあえずバイオハザード的な事態は免れそうだ。

「やってくれるね?」

「はい」

まあこれぐらいやらないとな。

「で、詳細は?」

「作戦の詳細は明日、富山に行く前に伝える」

「そうですか」

「ああそうそう」

総司令は何か思い出したように言った。

「この作戦、結構ヤバイよ」

「と、言うのは?」

「本作戦はFEUA(極東連合軍)から戦略機動隊への要請によって行われる極秘輸送作戦だ。JSHQ(統合幕僚本部)の承諾済みだ」

「確かにそれって結構ヤバ・・・あれ?」

おかしい。

「何故JSHQの承諾があったんですか? いやそれ以前に、よく考えたらおかしいですよ」

「・・・いい所に気がついたね。自分の考えを言ってみて」

俺は言う。

「JSHQ、正式にはFEUAJSHQ(極東連合軍統合幕僚本部)ですが、これはFEUAの全ての作戦を統括、立案しているFEUAの司令塔です。戦略機動隊も、FEUAの一部隊なのでコレの指揮下に入ります」

今、総司令が言った事をこれに当てはめて言うと、

「FEUAが司令塔であるJSHQの承諾を得て、FEUAの一部隊に要請する作戦」

それはつまり、

「JSHQの指揮下にあるFEUAが、JSHQの承諾を得て、FEUAの一部隊に要請した作戦」

つまりこれは、

「JSHQが発案していない作戦、FEUAが発案した作戦って事ですか?」

「そういう事。本案件についてJSHQは一切感知しない。承諾も非公式な物だ。ついでに言うなら」

総司令は言った。

「それを発案したのはHAKに駐屯している部隊だ。そして、レバリスクベースを所有しているのはFEUAでは無く、HAKga(聖アラストリア陸軍)、HAKの国軍だ」

「!!!」

それはつまり。

「これは、HAKからの要請で行われる輸送作戦」

「そう。だがこれには裏がある」

裏?

「大陸に潜ってるうちの諜報員曰く、その前にFEULC(極東連合首脳会議)、極東連合の最高意思決定機関からJSHQに通達があったそうだ」

「通達?」

「内容は恐らく、『協力せよ』だろうな」

「・・・それって、もしかして」

「別の諜報員の報告で確信した。この作戦の真の裏方はFEULCだ」

「・・・・・」

事が重要すぎて笑えん・・・

「まあそういうことだから、明日よろしく。もちろんアレサも一緒に、出来れば茜君も来て貰えれば助かる」

「分かりました、検討します」

「私の本作戦に同行、了解しました」

俺が言うより早く、茜とアレサは礼儀正しくそう言った。

「そう。じゃあまた」

そう言って、総司令は席を立ち、代金を支払い、店のドアを開け、

「・・・そうだ光男君、一つアドバイス」

ふと何か思ったらしく、立ち止まってこちらを向き、総司令は言った。

「友達を頼るのも、アリだよ」

・・・俺達は同時に言った。

「「「総司令、後ろにメアリー副司令が」」」




聖暦3017年5月2日午後5時46分。

浜大津商店街、喫茶『ろまねすか』前にて、戦略機動隊総司令が大量出血する事案が発生した。





第十五話、いかがでしたか。

今回はちょっと短いです。

そして急な話ですが、『アルファポリス』との二重投稿を始めました。

『小説家になろう』に投稿している分と、異なるところもありますが、基本的な内容は同じです。よかったら見てください。

この物語を読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。

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