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幻想機動輝星  作者: sabuo
序章 ある研究員の記録 『ZERO』 IS SLEEPING
15/74

第11話 古城荘(前)

第十一話です。

恐怖を逆手にとって、身を守る。

直感を信じる。

と、いうのが7歳のころアフガニスタンに行った俺の持論である。

そして正に、今やっていることも同じようなことだった。

俺はカメラを見た。

「・・・棺桶が空いている」

増えやがった。

警備室から、ホールを見る。

(ホールまでは来ていないか)

現時刻、聖暦3017年、4月20日、土曜日、深夜2時

俺は古城荘で警備をしていた。






発端は先日、タリヌの言った言葉だった。

『古城荘の警備のバイトをすることを勧める』

最初は何かと思い、エルメス局長に聞いてみれば、あった。

古城荘の警備

日給一万G、日本円に換算して一万円と悪くなく、興味本位で応募したわけで。

エルメス局長が雇い主に連絡してくれて、見事に採用されたのが日曜日のことだ。

履歴書は必要なかった。

そんな訳で、4月19日、午後9時ごろ、俺は古城荘に向かっていた。

場所は稲荷山の山科盆地側に位置すると思う。

と言っても、あたりは雑木林、見事に山の中である。

おまけに日が暮れているため視界はライトの光が当たる範囲だけだ。

ちなみに、服装はジャージにパーカー、はんてん。いつもの部屋着である。

「一回行ったことがあるが・・・ここまで木は生い茂ってなかったぞ」

竹が一つもない。

『地脈の影響、だろうね。地形は同じでもバイオームは別みたい。釧路基地があれだから』

「そういえばそうだった」

平均気温がマイナス100度って、氷河期か。

『まあがんばってね、私今お金無いから』

「どうして?」

『このロザリオ、一万Gしたから』

「そのロザリオ一万Gもしたの!?」

日曜日、茜が帰ってきて俺は違和感を覚えた。

茜が首から銀のロザリオをかけていたのだ。

ロザリオ、十字架、

茜曰く、『おしゃれ』らしい。

前は絶対にそんな事をしなかったのだが。

しかし、

「なんで一万Gも出したの!?」

『ついうっかり』

「クーリング・オフ制度はこの世界にありますか!?」

なんてことしてくれてんだよ。

いったい何冊本が買えると思っている。

『まあそういうことだから、がんばって働いて私に貢いでね』

そう言って茜は通信を切った。

いや、そもそもなぜお前に金を渡す必要がある。と、突っ込みたかったが。

まあ今までのあいつを思い返してみて、そんなこと言っても無駄だと思う俺だった。

そうこうしている内に、

「・・・着いたか」

『古城荘』と書かれた表札、そしてその向こうには、

城があった。

(・・・・・そのままだなおい)





「ファアアアアアアアアアアッ!!!」

そう言って部屋着姿のメルト・ランズデイは受話器を床に叩き付けた。

「あんの馬鹿ペアレンツッ!! 絶縁してやらあああああ!!」

(なんか荒ぶってらっしゃるううう!?)

ていうか誰だお前、メルトの皮を被った何かか!?

「そうとなったら・・・ん?」

睨んでる、すごい睨んでいる。ヤバイ。このままでは野郎オブクラッシャーされかれない。

こういう時どうすればいいのか、

決まっている。対話だ。

つまりあいさつだ。

広告機構も推進している。

「ネイホウ(こんにちわ)」

「なぜに広東語?」

やっちまった。

というか何故に広東語と分かったし、

「雑学よ、で、なんの用で?」

「警備のバイトに来たんだが・・・」

「ああ、警備のバイト。やっと見つかったの」

「やっと見つかったと言うのは?」

「古城荘が出来てからここには警備員が一人も居なかったのよ、理由は知らないわ。つまりあなたが古城荘初の警備員ってこと」

「なるほど・・・で、一ついいか」

「なによ」

「前に会った時と言葉使いが違う気がするけど」

「その件についてこれ以上言及するならばアクシズを落とすわよ」

「アクシズ!?」

お前はシャアか。

「ああそうだ、それで思い出したけど、前との決闘、なんであんなことやったんだ?」

「決闘? ああ、あの事。よく覚えていないわ」

「よく覚えていない?」

「ええ、記憶がぼやけていて、あなたに決闘を申し込む前だったと思うけど、同じクラスの黒崎茜って人と話したのは覚えているわ」

「下手人特定にご協力頂き誠にありがとうございました」

帰ったら話し合い(銃火器を投入する程度の)をしなければ。

「まあ、そんなことだから。よろしく」

そう言ってメルトは階段を上がって、二階のほうに行ってしまった。

(案外素っ気無かったな)

まあいい。

俺は持ってきたリュックの中から資料を取り出す。

「えーと、警備室は本館一階にあるホール?」

本館一階のホールってここじゃないか。

左右にある階段、そしてホールを見下ろせる二階のテラス、

そしてその下に、成程、奥に続く廊下があり、ホールと接している曲がり角に窓の付いた部屋があった。

窓は自由に開けられるようで、窓の下にはカウンターがあり、ドアの上には『警備室』と書かれている。

俺はその中に入り、ドアを閉めた。

現在時刻、21時7分。

バイト開始時刻である22時まで、残り53分。





さて、今更ながら『古城荘』について説明しよう。

古城荘はアパートだ。

月額10G

うん、どう考えても安い。部屋は広いほうだと言う。

ただ、その分利便性はゼロに等しい。

最寄のコンビニまで、約15分。

辺りには民家一つ無く、雑木林の囲まれている。

場所は人間界で言えば稲荷山。その山頂から北東に一kmほど行った所だと思う。

名前からも分かる通り、この古城荘は元々あった城を改装したものだ。

城といってもそんなに大規模な物ではなく、むしろ小さい方で、城壁の中に塔が二つ、それらがある長方形の四階建ての建物一つと小さな別館が一つ、それらがL字型に並んでいて、その中に申し訳程度の庭がある。イメージとしては中世の城だ。

それを改装して住めるようにしたのが古城荘の成り立ちだ。

城自体は第三次神魔大戦より遥か昔、第二次神魔大戦よりも前。少なくとも築200年は経過しているらしい。

結構歴史が長い。

まあ、そこを警備する訳だが。

しかし、いくら小さな城とはいえ、一人で警備するには無理がある。

そこで使うのが、

「えーと、ここか?」

テレビの電源を点け、壁際にテレビの下に設置されているコントロールパネルのスイッチを入れると、テレビに映像が流れ出す。

写っているのは、本館前のリアルタイム映像だ。

別のスイッチを押すと、映像が変わった。今度は裏口の映像。

「問題はなさそうだな」

そう、監視カメラを使うのだ。

カメラの数は分からないが、この城の敷地内全てを監視出来るらしい。無論、死角もあるが。

まあ、それら以外にも色々と道具を使って、明日の6時までこの古城荘を警備する、というバイトだ。





「あれ?もしかして光男君?」

窓ガラスの向こうに居たのは

「オール?」

21時55分、警備室。

窓ガラスの向こうにいたのは普段着姿のオールだった。

リュックを持っている。

俺は窓を開けた。

「何故ここに?」

「いや、僕ここに住んでいるんだ」

「ここに?」

「うん。光男君こそどうしてここに?」

「警備のバイトで。条件よかったし」

「なるほど・・・あ、そうだ」

そう言ってオールはリュックからノートを取り出した。

「さっきまで図書館で宿題やっていたんだけど・・・帰る途中で調べ忘れがあることに気づいたんだ」

「調べ忘れたこと?」

「うん、航空戦艦の等級の付け方なんだけど・・・光男君、知っている?」

「航空戦艦の等級の付け方? ええと確か」

俺は記憶を辿る。

「確か100m以上がヘス級、200m以上がタロス級、500m以上がアルマダ級、1000m以上がガラトス級、1500m以上がバハグスク級、2500m以上がノドル級、5000m以上がイラトナス級、10km以上がウルバナス級、15km以上がリナイ級、

それで20km以上がアイランド級だった筈だけど」

「ありがとう!! 本当に助かった。これ、明日提出なんだ」

「WG整備科のか? 明日は学校無い筈だけど」

「担当の先生の都合で明日学校に直接提出なんだ。ほら、三日前の侵攻」

「ああそういう事」

三日前のフリークス侵攻、

その被害は浜大津総合学校にも出ていた。

結果、学校が再開したのが今日、あれだけ被害を受けといて三日後に再開って。

まあ結果として授業も超圧縮状態になった訳で。

授業が全て終わったときのルース先生の目は死んでいた。比喩ではない。

「そっちも同じか」

「うん。今日もこの後部屋で宿題するつもりなんだ。光男君も、もし分からないことあったらいつでも電話してくれていいよ」

「ああ、分かった」

「じゃあ、また今度。よろしくね、光男君」

「ああ、そっちこそ徹夜はやめとけよ」

「そうするよ」

そう言ってオールは廊下の向こうに行った。

現在時刻、22時00分、警備開始。





23時55分

「えーと、ここがこうか?」

にしてもこのコントロールパネル、誰かが使用した形跡がある。証拠にスイッチの文字が消えかけている。

長く使っていないとこうはならない。

「警備員・・・では無いな」

メルトの話があっていれば俺がこの古城荘初の警備員の筈。

アパートになる前にここがなんらかの施設だったというのならば納得するが。

(というかそうなんだろうな)

警備室の壁に備え付けられていた箱、中には、

「散弾銃?」

見たことが無いタイプだが、形状は散弾銃に似ている。

散弾銃って、どこの銀行だよ。

おまけにこのガラス、よく見ると防弾ガラスじゃないか。

(いくらなんでも過剰すぎるだろコレ・・・)

いったい前はなんだったのか。

そう思った時、端末にメールが届いた。発信者名は書かれていない。内容は、

『13番カメラ』

「13番カメラ? ええと13番13番・・・?」

無い。

13番カメラが無い。

正確に言うなら13番のカメラを選択するスイッチが無い。

12番の横は14番になっている。

(欠番か?・・・いや)

俺はコントロールパネルを隈なく調べる。

あった。

パネルの一番下、赤色のカバーを上に開けると、そこに13番と書かれたスイッチがあった。

押してみる。テレビに映ったのは・・・

「棺桶?」

どこかは分からない。だが見た感じ地下のようだ。天井にある電灯の下に、たくさんの棺桶があった。

気味が悪い。

そう思って俺はテレビを消した。

そして時計を見た、

時刻はまもなく0時になろうとしていた。

残り5秒・・・3・2・1





午前0時




(bokuwa kokoni iruyo)




「!!!」

体を、何かが貫いた。

寒気だ。

何かを、感じた。

これはなんだ?

なんなんだこの感覚は、

違和感?

いや違う

「嫌な予感だ」

いそいで俺はテレビを点け、迷わず13番を選択する。

そして、

(あ、超ヤバイ)

見ていた。いや、

見られていた。

二つの赤い目によって、

見られていた。

「・・・よし、落ち着こう」

恐怖という感情は大切なものだ。しかし、だからと言って慌ててはいけない。

心身を落ち着かせる。

よし、

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」





『光男君? 今君の叫び声が聞こえた気がするんだけど。大丈夫?』

「大丈夫だ、問題ない」

オールが電話をかけてきたが、適当に解答する。

本当は問題大有りなんだが。オールを巻き込むわけにはいかない。

俺は映像をよく見る、赤い目、正確にはソレが赤い目をしているだけだ。

人間だろうか。仮面を付けている。成人男性のようだ。しかし、

服装は・・・貴族?

カメラの映像をよく見れば、棺桶が一つ空いている。

「なあ、オール。ここの住人に棺桶で所持してる奴、または棺桶を大量における部屋を持っている奴はいるか?」

『そんな人はいないと思うけど・・・というかここの部屋で棺桶を大量に置けるところなんてホールと地下の倉庫ぐらいしか無いけど」

「だよな」

じゃあやっぱりこれは地下か。

「ありがとう。じゃあまた」

「あ、うん。また」

通信が切れ、テレビを見ると。

居なかった。

(動くの速ッ)

スイッチを切り替え、どんどん見ていくと。居た、

地下倉庫、様々な物が置いてある。その向こう側に、

仮面をつけたヤツが写っていた。

(地下倉庫は・・・別館の下だな)

地下倉庫へ向かう階段も別館にある。

だが念のためドアと窓の鍵を閉める。トイレは警備室の中にあるので大丈夫だ。しかし、壁際にある通気口から侵入してくる可能性もあるので、

(塞いでおこう)

これで足止めぐらいは出来る筈だ。

うん? なんで襲ってくる前提で行動しているかって?

ははは、そんなの襲ってくるに決まってるじゃないか。このシチュエーションで襲ってくる来ない訳が

「ありそうだ」

地下倉庫、さっきのヤツがエロ本らしきものを読んでいる。おまけに周りにはエロ本の山が出来ている。

・・・こいつ、もしかしてエロ本を徹夜で読み漁る気か?

「違う」

これは違う。

読み方に情熱(?)らしきものがない。

これは・・・陽動だ。

急いで13番を見る。

当たりだ。さっき開いていなかった棺桶が開いている

そしてその近くに。居た。

さっきとは別のヤツ。二人目だ。甲冑を着ている。顔にはさっきのヤツと同じ仮面。目は赤い。

ということは。

(さっきのあれは仲間から注意をそらすためか)

完全にやる気だ。

俺を殺すつもりだ。

なぜ俺が殺されるか、理由は無い。だが、俺の直感が、魂が言っている。

「俺を殺す気だ」

・・・・・そうかそうか、そっちがそういうつもりなら。

(やってやろうじゃないか)

俺はリュックからソーセージやらポテトチップスなどの食料、飲料水、サブマシンガン(実戦部隊が制式採用しているやつ)

そして個人携帯型の魔力砲。

現在時刻 0時5分

バイト終了まで、のこり5時間55分

「対茜戦で培った技術・・・見せてやろうじゃないか」





・・・と思ったけど、二人目もエロ本を読み出したので、こいつらただエロ本を読みたいだけなのかもしれない。





1時25分

地下倉庫のヤツらは相変わらずエロ本を読んでいる。

どうやら、いやかなり高確率でずっとエロ本を読んでいるつもりらしい。

(いちおう警戒だけはしとくか)

そう思った時、端末が鳴った。通信、オールからだ。

『光男君、まだ起きてる?』

「起きてなきゃ通信に出られないだろ。それに警備してる訳だし」

『そうだったね・・・ところで光男君、気になったんだけどさ』

「なんだ?」

『もしかして・・・光男君裏から来た?』

「裏って?」

『山科盆地の方から』

「ああ、本当に大変だった。お前いつもあんな道を上り下りしてんのか?」

『いや、別にそこを通らなくてもここには来れるよ』

「どうやって?」

『京都盆地の方から』

「・・・・・・・・」

すっかり忘れてたアアアアアア!!!

そうだよ!! 稲荷山は京都盆地と山科盆地に挟まれているよ!! 山城基地から直接来たほうが早いよ!! 山越えなくていいよ!!

「・・・なんで俺が裏から来たと?」

『いや、玄関に土があったからどうしたのかなと』

「そういうことか・・・でもそっちから来ても急なのは確かだろ?」

『まあね。でもあそこ町が出来ているから道路も整備されていて。意外と歩きやすいよ」

「町? 町があるのか?」

『そんなに大きくはないけどね。山の斜面に出来ているんだ。いつも夕食はそこで食べるよ』

「食生活は充実してそうだな・・・でもなんでそんな所に町が?」

『戦技研とIMT社、そしてギガル皇国が共同開発した地脈整流機構があるんだ』

「地脈整流機構? あるのかここに」

『うん。超高度魔法術式、魔力整流器、そして本物の『神』とその(しもべ)が地脈を制御しているんだ』

「本物の『神』? どこの?」

『ギガル皇国さ。ギガルには多くの神様が居てね。山城基地を建造する時にも協力してもらったって聞くけど』

「そうか。神の名前は?」

『そこまでは知らないけど・・・確かギガルの方では『鉄神』って言われてた気がする』

「・・・・・」

どっかで聞いたなソレ。

「ちなみにそこは稲荷山のどこら辺に位置するんだ?」

『ええっと・・・確か人間界の、伏見稲荷大社?辺りに位置するらしいけど』

「!!!」

そうだった。

伏見稲荷大社だって地脈整流機構だ。






伏見稲荷大社。

一般には知られていないが、あそこは京都の下を流れる三つの大地脈の流れを整える地脈整流機構だ。

いや、俺に言わせてみれば、京都という町そのものが一つの地脈整流機構だ。

神社や寺というものは、それ自体が周辺の魔力を整える働きを持っている。大抵はそれでうまくいく。

だが京都の場合が違う。京都の下に流れる地脈は通常の十倍かそれ以上の魔力を持っている。

おまけにそれが三本。支流まで数えたらきりが無い。

俺は一万まで数えて諦めた。

その流れを整える地脈整流機構の一つが、伏見稲荷大社にはある。

なぜそんなものが伏見稲荷大社にあるのか説明したいところだが、この際、京都の地脈整流機構の話も交えよう。

どうせいつか話す嵌めになるだろうし。

ここからは俺の研究で分かったことと、そこから導き出した俺の推測を入れて話す。研究発表らしきものと思ってくれ。

確証の無いことも混じっているので、そこらへんは踏まえて欲しい。




当初、京都の地脈を整えようとしていた誰か(恐らく俺の本家の祖先)は、伏見稲荷大社だけでなんとか地脈の流れを整えようとしたらしい。伏見稲荷大社が建っている稲荷山自体、地脈の上にある。故に古代の魔術師達の関心を集めていただろうし、当然といえば当然だ。

方法までは分かっていない。一応完成はしたらしい。完成は、

だが、いざ運用してみると、さすがに無理があったらしく、見事に地脈が暴走(京都にある地脈すべてが)

大惨事っていうか大爆発寸前の状態に陥ったが、なんとか収めることに成功した。

失敗していたら、少なめに見積もっても核攻撃並みの被害が予想される。

もちろん計画は失敗。この事は本家の記録からも抹消されいる。

その後、今の京都に出来たのが平安京だ。

そしてそこに目をつけた魔術師がいた。



平安京は碁盤の目のような町、そして当時の政治、儀式、行事が行われた大内裏によって構成されていた。

だが重要なのは、碁盤の目のような町を分け隔てる大小の(みち)。そして大内裏の門だ。

調査の結果、平安京の路はそれ自体が一種の魔力回路だったようだ。つまりは整流機構を造った魔術師が路を魔力回路化、一種の魔力回路に変えたことになる。

自然に出来た物ではない。しかし、どうやって路を魔力回路化させたのかは分からない。

というか、そもそも誰が造ったかすら分かっていない。

どうも魔術師らしいが、俺の本家が関わっているのは間違いない。

調査した結果、路には一種の概念的な何かが働いていたらしいが。具体的な仕組みは不明だ。

とにかく、その魔術師は、平安京にある全ての路を魔力回路化し、一種の魔力コンデンサーとも言うべきものをこの時点で完成させた。

具体的には、魔力回路を格子のようにすることによって地脈の流れを整え、更に地脈からでた魔力を適度に吸収し、地脈を流れる魔力の圧力(魔力圧)を抜き、地脈の決裂を防ぐことが比較的安全になった。

平安京の路をすべて魔力回路化したら当然そうなるが。

しかし、比較的安全になっても、それだけでは結構、いやかなり危ない。

第一、地脈からの魔力吸収はやりすぎると地震やら気候変動的な何かを起こすから調整が凄く難しい。ソースは俺の父親。

一歩間違えば、平城京に魔力が満ちすぎて飽和し、侵食現象やら怪異現象を引き起こした挙句、平安京そのものが爆発する。

分かりやすい例として、風船がある。

風船に水を入れ続けると、風船は破裂する。それと同じことが平安京に起こる物と考えてもらったほうがいい。

建物に蓄積された魔力が物質を『侵食』し始め、ある限界に達したとき、それは中から破裂する。

平安京の場合、それが連鎖反応を引き起こし、瞬く間に崩壊する。

半径十キロは更地になる。

国土地理院が泣く。

そうならないために、整流機構を造った魔術師は門を使った。

大内裏の周りにある門。それらに御所と外部を隔てるだけではなく、平城京内にためられた魔力を流れを調節し、外に放出する役目を持たせた。

平城京全体を覆っていた結界の中心としての役割も持っていたらしい。

更に、伏見稲荷大社に残っていた地脈整流機構を復活させ、それらに連動させた。

その体制が出来たのが、大体千年前だ。

結果的に、この機構は正常に稼動し、京都の地脈は安定した。

以来ずっと京都は地脈が安定しており、そこから出る潤沢な魔力は魔法術式の創造や、様々な魔術実験に適しており、

多くの魔術師達がその土地の有用性に惹かれ移り住んで来た。門の機能は、さっきの伏見稲荷大社や北野天満宮や清水寺などに移設され、

今に至る。

以上、駄文&長文でした。

未だにこの整流機構については分からない事が多い。

誰が、どうやってこの機構を完成させたのか、まったく分からない。

第一、魔術師はこの整流機構について、昔からあったとしか思っていない。真面目に研究したのは俺が初めてだろう。

だから俺は思う。

本当に、よくやったと思う。

(もっとも、整流機構は俺の弟によって完全破壊されたがな・・・しかし、そうするとこの世界の地脈の分布も同じようなのか?)

そうじゃなきゃ伏見稲荷大社の辺りに地脈整流機構がある理由が見つからない。

詳しく調べる必要がある。

それはそうと、

『光男君? 聞いてる?』

「聞いてる聞いてる・・・で、話変わるけど、そこらへんでおいしい料理店教えてくれないか? 」

『・・・・・へ?』

「いや、だからおいしい料理店」

『・・・光男君が興味あるのって・・・そっち?』

「そっち」

何事も、まずは食事だ。




現在時刻、1時30分

バイト終了まで、残り4時間30分





第十一話、いかがでしたか。

今回もまた前後編になりました。

正直言って、光男君の説明が長いような気がするので、

もうちょっとスマートに出来れたら、また改稿しようと思います。

そしてその改稿ですが、また一部設定と描写を改稿しました。

最後にブックマークに登録してくださった読者の方、ありがとうございます。これからもこの物語に付き合っていただければうれしいです。

この物語を見てくださった読者の皆様、ありがとうございました。


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