表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

しつけをはじめよう

 

 こんにちは

 ありがとう

 すみません

 さようなら



 五文字。

 五文字だ。

 その五文字が言えない人間がどれだけいることだろう。

 どれだけ大きくなろうとも。

 どれだけ大人になろうとも。

 それが言えなきゃ、なんにも成長してないのにさ。


「こんにちは」


 あなたはだれ

 なまえはなんていうの

 としはいくつ

 どうしてここにいるの


「………」


 顔を上げたのはそう年の変わらないだろう男の子。

 どこかのパーティーで見た、シャンデリアの欠片みたいな。

 光に反射して綺麗なはずなのに、どこか冷たいガラスのような目をした男の子。

 夕暮れの、太陽は向こう側へと落ちかけて。

 夜の匂いが強くなった公園の端のブランコに座ったその子は黙ったまま。


「こんばんは」


 もう夜だからと話し方を変えてみてもその口は動かない。

 モニターの映像のほうがよっぽど動くし話すし反応する。


 にんげんじゃ、ないみたい

 ほんとのにんぎょうみたい


 にょきにょきと、どこか胸の奥から意地悪な気持ちが生まれてきた。

 なんとしてでも、話させよう。

 これ以上、人形なんていらない。


「おしえてくれないなら、かってによぶね」


 ポチ


 それでもいいなら、ワンとないてみなよ


 いやならいやだと言えばいい。

 けれどその男の子は。


「ワン」


 一声、そう鳴いたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ