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ツバメとの出会い

 その日の黒猫はのんびり空中散歩をしていました。

 空を飛ぶことが気持ちよく、それだけでご機嫌になります。

 たまにはカラスとの競争もしますが、今だけはのんびりまったり空を楽しみます。


 その時ぴゅう、と風を切る音がしました。


「わっ!」

 黒猫のすぐそばを飛んでいったのは一羽のツバメでした。

 すごい勢いで黒猫のそばを駆け抜け、あっという間に離されてしまいました。

「速いなぁ」

 黒猫は感心した様子で離れていくツバメを眺めます。

「あれ?」

 見えなくなるまで眺めていようと思った黒猫ですが、ツバメが突然旋回をしました。

 地表近くまで降りていって、くるりくるりと飛び回ります。

「何してるんだろう?」

 すごい速さで飛んで、そして空中に飛んでいたトンボを捕まえました。

「わっ! すごい!」

 それを見た黒猫ははしゃいだ声を上げます。

「あれ? こっちにやってくるぞ」

 黒猫に気付いたツバメがこっちにやってきました。

「こんにちは、黒猫さん」

「あ、こんにちは」

 ツバメはいつの間にかトンボを食べてしまっていました。

「きみ、すごいね。空を飛ぶ昆虫を捕まえるなんて。それにすごく速く飛んでる。かっこいい」

「ありがと。でも凄いっていうなら黒猫さんだってすごいよ。空飛ぶ猫なんて初めて見た。君のことはこの辺りで有名だけど、実際に見るとやっぱり感動だね」

「え? ぼくって有名なの?」

 自分が有名猫であることに全く気付いていなかった黒猫はきょとんとなります。

「そりゃあね。空飛ぶ猫なんて他にいないもの。流れ星にお願いして翼を手に入れた変わり猫だってみんな言ってるよ」

「か、変わり猫……」

 変人ならぬ変猫扱いされた黒猫は複雑な気持ちになりました。


 それからツバメと黒猫は他愛のない話を続けます。

 ツバメは黒猫の実体のない翼に興味を持ち、黒猫はツバメの高速飛行に興味津々でした。

「どうしてきみはそんなに速く飛べるの?」

「僕達が速く飛べるのは、そういう生態だからだよ、としか言えないんだけどね」

 ツバメの身体は速く飛ぶために適した形をしています。

 流線型の身体は空気抵抗が少ないですし、体重も非常に軽いのです。

 飛ぶ際に他の鳥のような羽ばたきをあまりせず、空気抵抗を上手く利用して飛んでいます。

 身体に脂肪がないので体重が少ない分、消費エネルギーが少なくて済むというのも大きな理由でしょう。

 などということをツバメは黒猫に説明します。

「なんか、速く飛ぶ為に生まれてきた存在みたい」

 黒猫は感心したように言いました。

「そうだね。僕も速く飛ぶのは好きだよ。特にすばしっこいハエとかを捕まえたときにはすごく達成感があるし」

「すごいすごい!」

「空中旋回がポイントなんだよ。尾羽と翼を上手に使って、くるっと回るんだ」

「尾羽? 尾羽も使って飛んでるの?」

「もちろん」

 ツバメは黒猫に背を向けて尾羽を見せてくれました。

 長い尻尾のような羽根しかないように見えた尾羽は、広げると十枚ぐらいの羽根がありました。

 大きさの異なる羽根が扇子のように広がって、しなやかに変化しています。

「この羽根を器用に使って飛ぶんだよ。旋回の時とかにね」

「すごいねぇ」

 身体のつくりそのものが他の鳥とは違うらしく、黒猫は少しだけがっかりしてしまいました。

「じゃあぼくがきみみたいに速く飛ぶのは無理かもしれないね。だってぼくの翼はきみとは違うもの」

「そんなことはないよ。だって君の翼は心の翼なんでしょ?」

「うん」

「実体を持たない心の翼なら、どんな形にだって出来るはずだよ」

「む、無理だよ……」

「無理じゃない!」

「わっ!」

 ツバメが力説します。

 諦めそうになっていた黒猫を見て、どうしても諦めて欲しくないと思ったのです。

「君は諦めなかったからその翼を手に入れたんだろう? 足掻いて、願い続けたから今の君があるんだろう? だったらどんなことでも挑戦しないまま諦めたら駄目だよ」

「………………」

「大丈夫。出来るって信じて。君も僕と同じように飛べるはずだから」

「飛べる……かな……?」

「飛べるよ。君の心が、僕と同じ場所を目指してくれるのなら」

 同じ高みを、同じ速度を、同じ場所を、目指してくれるのなら。

 ツバメはそう言いました。

 その言葉に励まされた黒猫は少しだけ元気になりました。

 やるだけやってみよう、そんな気持ちになりました。


熱血ツバメくん登場。

もうちょっとだけ黒猫と活動します。

後々にも大きな影響を与えたりする割と重要なキャラです。



アルファポリス絵本・童話大賞に参加中。

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