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みんなで食べよう

 カラスとのスカイレースに見事勝利してゴミ捨て場漁り権を半分だけ手に入れた黒猫は、次のゴミ捨て日にもやってきました。

「ごっちそうごっちそう~♪」

「なんだ、今日も来たのか」

 今日はカラスの方が先に来ていたらしく、黒猫に声をかけてきました。

「うん。ええと、漁ってもいいんだよね?」

 五匹のカラスはちょっと面白くなさそうでしたが、それでも勝負の結果には忠実らしく、しかめつらのまま頷きます。

「好きにしろ」

「うん」

 カラスと黒猫で半分ずつのゴミ漁りが始まりました。

 八時にはゴミ収集車がやってきますし、その間にもゴミ捨てに来る人がいるので、ゴミ漁りを出来るのはほんのわずかな時間だけです。


 黒猫は美味しそうな食べ残しを探し続けました。

 そして素敵なお宝を見つけたのです。

「はわあっ!」

 それはケースに入ったままのシュークリームでした。

 六つ入っています。

 恐らくは賞味期限が切れていたのでしょう。

 人間ならお腹を壊すところですが、黒猫やカラス達にとっては些細な問題です。

 食べかけでもない、まるまる六個入っているシュークリームはとても美味しそうでした。

「あわわわ……」

 もちろん黒猫はシュークリームを取り出します。

 さっそく食べようとしたのですが……


 じー……


 五つの視線が黒猫に……もとい黒猫が食べようとしているシュークリームに注がれました。

「あ……」

 とてもとてもうらやましそうな視線です。

「じゅるり」

 リーダーはよだれを垂らしています。

 シュークリームは黒猫の縄張り(?)から出てきたものなので、食べる権利は黒猫のみにあります。

「………………」

 しかしこの状況で独り占めしようなどとはとても考えられない黒猫でした。

「み、みんなで一個ずつなら食べていいよ」

 そう言った瞬間、カラスたちがシュークリームに群がって来ました。

「わあっ!」

 このままだと自分の分も食べられてしまうと危機感を抱いた黒猫は慌てて自分の分の一個を口にくわえて退避しました。

「うめーっ!」

「あまーい!」

「がつがつ!」

「スイーツ最高ーっ!」

「うまーっ!」

 カラスはあっという間に五個のシュークリームを平らげてしまいました。

 あっという間の出来事でした。

 ちなみに黒猫の口にはまだシュークリームがあります。

 唖然とした黒猫はもぐもぐとゆっくり咀嚼します。

「あ、おいしい」

 甘くて口の中でとろけるクリームがたまらなく幸せでした。


「おいしかったねー」

 食べ終えた黒猫が満足そうに言いました。

「ああ」

 リーダーのカラスはちょっとだけ気まずそうです。

「どうしたの?」

「いや、その……あり……ありありあり……」

「アリ?」

 蟻のことかな、と首をかしげる黒猫でした。

「ちがーう!」

「わあ!」

 カーッと怒鳴られた黒猫はびっくりして後ずさります。

「そうじゃなくて!」

「?」

「あ、ありがとうって言いたかったんだ!」

「………………」

 リーダーは照れ照れ状態でした。

 黒いのに真っ赤になっていそうなぐらい照れ照れでした。

 ありがとうの一言を言うのにすごく照れてしまったようです。

「その、お前の縄張りから出たものなのに、俺たちに分けてくれたから……ありがとうって言ったんだ」

「あ、うん」

 黒猫は嬉しくなって笑顔でうなずきました。

「美味しいものはみんなで食べた方がもっと美味しくなると思うんだ。だからぼくもありがとう!」

「………………」

 その言葉にリーダーたちはぽかんとなりました。

 お礼を言ったつもりがお礼を返されてしまい、戸惑ってしまいます。

「その……なんだ……」

 リーダーが言いにくそうにもごもごしています。

「今度俺たちの方から何か美味しそうなものが出たらお前に分けてやるよ。今日のお返しに」

「ほんと!? ありがとう!」

「れ、礼は言わなくていい! あくまでもお返しなんだからなっ!」

「ぼくの方もまたいいものが出たら分けてあげるねー! みんなで食べようよ!」

「あ、ああ……」

 黒猫とカラスたちは少しずつ仲良くなっていくのでした。


ツンデレカラス(T_T)


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貴方の清き一票をどうかっ!

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