空の世界
「ええと、こうかな?」
それから黒猫は一生懸命に心の翼の形を変えていきました。
黒猫が願った通りの形に翼は変わります。
ツバメの言った通り、実体のない翼は粘土のように形を変えてくれます。
「ちがうよ。その形だとまだ空気抵抗が大きすぎる。もっと曲線を意識して、流線型の翼にするんだ」
「ええと……こう……?」
「そうそう、もう少しなめらかになるともっといいかな」
「えい……こ、こうかなっ!」
「いいね! 翼はそんな感じ!」
などなど、黒猫の翼はツバメのように変化していくのでした。
「尾羽は……難しいかも」
もともと背中に翼が具現化しただけなので、尻尾まではイメージ出来ません。
「んー。まあ急旋回しなければそこまで必要ないかもしれないね。速く飛ぶのが目的ならこのままでいいんじゃないかな」
「そうだね。さすがに空を飛ぶ虫を捕まえようとは思わないし」
「虫は栄養価高いんだよ~」
「ぼくはスズメとかネズミの方が好きかな」
「そっか~」
「うん」
ほのぼのしているようでちょっぴり残酷な会話を繰り広げながら、黒猫とツバメは着々と準備を進めました。
「よし。翼の形はだいたいオッケー。飛んでみようか」
木の枝にちょこんと止まっていたツバメがゴーサインを出しました。
「押忍!」
まるで格闘家のような返事をしながら黒猫は気合を入れました。
そして飛び立ちます。
「う……わ……っ!」
飛び慣れない翼の形にとまどいながら、ふらふらと滑空します。
それについてきたツバメは頑張れ、頑張れと声をかけます。
「無理にいっぱい羽ばたこうとしないで。空気抵抗を把握して、滑るように飛ぶんだ」
「こ、こうかな?」
くいん、と黒猫の速度が上がりました。
「そう! 上手!」
「えへへ」
少しずつスピードを上げながら、黒猫は世界が変わるのを感じました。
飛び慣れた空の世界。
風になる感覚を今まで味わってきました。
しかし今は、風を追い越す世界を体感しています。
雲の流れ。
景色の鮮やかさ。
加速する空世界。
すべてが黒猫にとって新しい体験でした。
飛びながら微調整を終えて、黒猫はツバメと同じぐらいの速度を出すことが出来るようになりました。
疲れて木の枝に止まった黒猫は、隣にいるツバメにお礼を言います。
「ありがとう。きみのお陰で新しい楽しさを知ることが出来たよ」
「ううん。僕も君と関わることができて楽しかったよ。また一緒に空を飛ぼうね」
「うん。また遊ぼう!」
こうしてツバメと黒猫はお別れしました。
ツバメは夕日の向こうに姿を消して、黒猫は疲れた翼を癒すために木の上で眠りに就くのでした。
もっと先へ『●●』したくはないか、少年。
な、なんでもないですにゃ。
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