星に願いを
童話大賞向けに書いてみました。
前回の反省を活かして、今回は分かりやすく子供向けにシンプルなお話を目指したつもりです。多分。
森の中に捨て猫がいました。
雨でよれよれになった段ボールには『ひろってください』というお決まりの文句が書いてあります。
その中にいた一匹の黒猫は、雨に打たれながら自分を置いて行った飼い主のことを考えていました。
黒猫は三人兄弟の末っ子として生まれて、お母さんと兄弟、そして飼い主の傍で過ごしてきました。
しかし飼い主の家では子猫を三匹も飼う余裕はないらしく、兄たちはほかの里親へと貰われていくことになりました。
しかし末っ子の黒猫だけは里親を見つけることが出来ませんでした。
いつまで経っても里親を見つけることが出来なかった飼い主は、ついに黒猫を捨てる決心をしました。
ごめんね、という言葉が耳の奥に残っています。
小さな女の子は涙を流しながら黒猫から遠ざかっていきました。
一人きりになった黒猫は、これからどうするか考えます。
暗い森の中、一人きりで、雨に打たれながら考え続けます。
ここに居ても誰も見つけてくれないし、ずっとここにいれば死んでしまうのも時間の問題でしょう。
ならば動かなければなりません。
「でも……どこにいけばいいのか分からないよ……」
黒猫は空を見上げます。
どこに行けばいいのか分からず、迷い猫のように途方に暮れました。
「あ……」
そんな時、雨の中でも風を切って進む鳥の姿が見えました。
それは大きなふくろうでした。
ふくろうは容赦なく打ち付けてくる雨にも負けず、空を飛び続けます。
夜空を駆ける流星のように、ふくろうは飛び去っていきました。
「いいな……」
黒猫はそれを見上げて呟きます。
どこへ行きたいのか。
どこにたどり着きたいのか。
その答えが見つかった気がしました。
「ぼくは、空に行きたい。空を飛びたいよ」
小さな身体に翼はないけれど、それでも目指したい場所が見つかりました。
黒猫は破れはじめた段ボールから出て、ずぶ濡れのまま再び空を見上げます。
「空を、飛びたいな」
翼が欲しい、と切実に願いました。
あのふくろうのように、一人きりでも行きたい場所に行けるように。
しばらく雨に打たれながら、ずっと翼が欲しいと願い続けました。
やがて雨が止み、雲の隙間から月が見えてきました。
星も少しずつ姿を現します。
星々が瞬き、そして流れました。
「ぼくに翼をください……」
黒猫は流れ星に願います。
流れて、落ち行く星が強く煌めいたように見えました。
星の流れを目で追いかけて、消えるまでずっと見ていました。
「あ!」
そして黒猫の背中に光の翼が現れました。
「翼だ!」
流れ星に願った翼が本当に手に入ったのです。
黒猫はとても嬉しくなりました。
実体を持たないその翼は、黒猫の心がかたちになったものでした。
「心の翼だね」
手足が届かないので長い尻尾で愛おしそうに光の翼を撫でました。
そして力強く羽ばたかせます。
ばさ、ばさ、と翼を動かし、黒猫の身体は地上から離れます。
「う、わあ……」
空へ。
もっと高く。
黒猫は羽ばたきます。
行きたい場所、そのスタートラインに立つことが出来、そして飛び立つことが出来た黒猫は空を駆けます。
どこまでも、どこまでも飛び続けます。
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