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期待外しの社にて⑨
魂外しは禁呪によって作られた魔物で、いわゆる地方信仰の神の類ではない。
帝家は古くから人を傷付けたり不幸にする呪いに目を光らせてきた。
そして、代々の仇敵となっていた呪殺を請け負う一族があった。多くの犠牲を払いつつも、忌まわしき一族はその数を減らしていった。
そして一族最後の末裔を追い詰めたとき、その女は自害による結末を選んだ。身の毛もよだつようなやり方で。
呪師は三日三晩、毒虫を生きたまま食らい続けた。
毒を体中に蔓延させて、髪を切り手首を切り血を髪に塗りつけ、「遺品」と称して帝家に送りつけた。
無論、これは帝家に呪いをかけるためのものである。
帝家では敵の形見が呪品であることは当然のように警戒されていたので、送られてきた木箱はそのまま「安置所」へと運ばれた。
厄介な呪物というものは、下手に祓おうとしても失敗して害を食うのがオチである。祓えないよう巧妙に仕組まれているから“厄介な呪物”と呼ばれるのだが。
そのようなものは大抵「安置所」に送られる。長い時間をかけて呪いの効力が失われるのを待つためだ。
ところが、その安置所送りこそが罠だった。