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期待外しの社にて⑤
二人は社に入った。
黴の臭いが鼻腔を貫く。
十年以上、ろくに掃除もせずに放置している。
なぜなら、長居すれば魂外しの影響を受けるからだ。
この社を建てるにあたって、最も懸念されたのは興味本位で訪れる野次馬だった。
社を怖れる者は近付かないが、遊びで近付く者を止める手立てはない。肝試しに来る連中が何をするか、予測することは難しい。
策略を立てたのは烏傘だった。
まず何かいるという噂を流して、危険を楽しむ愚か者の他は近寄らないように計らった。もともと魂外しの封印はきちんとしたものなので、仮に霊感のあるオカルト好きという最悪の組み合わせが来たとしても、長くいなければ不穏な気配を感じることのできる敏感な霊感の持ち主は稀だ。
更に頃合いを見計らって、ここに何かいるという話は嘘のようだ、という噂を上塗りした。
噂の自作自演である。
これによって、初めから「ここには何もない」と偽情報を流すよりも、予期せぬ訪問者をずっと減らすことが出来た。