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期待外しの社にて③
「待てるなら、そうすべきだろうね。オレはまだ未熟な若造だしね」
老人が掘った穴にバイガンという若者が札を置き、老人が埋める。作業しながら話がこじれている。
「言葉が過ぎました。しかし…」
烏傘老人は気付いた。今、穴を掘っているところが指示された場所と異なっていることに。
「お父上お母上の無念を晴らしたいのも、痛いほどわかりますが…」
そこまで口に出して、烏傘は失言を繰り返してしまったことに。
「…烏傘爺、実はこの話にはいわゆる大人の事情というものが絡んでいるんだ」
烏傘はてっきり、バイガンを怒らせたとおもった。しかしながら、そうではなかった。
「ここにショッピングモールを作る計画があるのは知っているか?」
知っているもなにも、官僚からその相談を受けたのは烏傘なのだ。
この土地は今のところ何の役にも立たないただの田舎だが、いつまでも役立たずでいてもらっても困る。ということで、傍目には遊んでいるとしか思えない期待外しの社の建つ土地が邪魔になるというわけだ。