~真由~
ピッ!
先生が吹く笛の音が校庭に響く。
クラスの班ごとに一列に並ぶ。強い日差しの中で既に汗をぬぐっている生徒もいる。
真由は短パンの裾をそっとひっぱって直した。
男子の列の前の方に弥生が見える。体操服の裾をぎゅっと両手で下ろし、下着を隠そうとしていたが、真由には弥生の白い下着に包まれたお尻がしっかりと見えていた。クラスの他の者も、弥生のをちらちらと見ている。
「はい、じゃあはじめます。体操服はきちんと中に入れて」
先生が言うと、みんなごそごそと体操服のシャツを短パンの中に入れた。真由もきっちりとシャツをねじこむ。
「気をつけ!」
斉藤先生の鋭い声に、みんなの背が縦に伸びる。
「安め!」
弥生もみんなと同じように腰に手をあて、
「気をつけ!」
手をきっちりと伸ばしてまっすぐ立つ。
「座れ!」
弥生がゆっくりと腰を地面に下ろすのが見える。
(弥生・・・パンツのまま座らなきゃいけないんだ・・・)
体操座りをした真由は喉元が少しだけ熱くなったように感じた。
先生はゆっくりと生徒を見回すと、静かに言った。
「辻本君。前にきなさい」
真由はどきっとして弥生に目を移した。
弥生の後姿が震えているように見える。
「辻本君、きなさい」
もう一度先生が言うと、弥生はゆっくりと立ち上がった。
白い下着のお尻は、校庭の砂で黄色くなっていた。
(着替えたはずなのに・・・お漏らしの後みたい)
みんなの前に立った弥生の目は既に赤くなって、体は震えていた。
「辻本君、シャツを中に入れなさい」
「・・・」
「入れなさい。返事は?」
「ハイ・・・」
弥生の声は、既に泣き声だった。
(弥生、がんばれ・・・)
真由はぐっと手に力を入れて念じたが、弥生の目からつーっと涙がこぼれるのが見えた。
(泣くな・・・)
真由の願いとは裏腹に、弥生の目からは次々に涙がこぼれだす。
弥生は涙をぬぐおうとする。
「気をつけ!」
先生の言葉に弥生は体をビクっとさせ、手を体の横にぴったりとつけた。
嗚咽を抑えることもできなくなり、「うっうっ」としゃくり上げている。
「シャツを中に入れなさい」
弥生は震える手で体操服のシャツを下着の中に仕舞い込んだ。下着のゴムが、腰周りにきっちりと見える。
「恥ずかしいかもしれないけど、しょうがないよね。」
弥生の涙が足元へと落ちていく。
「返事は?」
「・・・ハイ・・・」
搾り出すような高い声で返事をした後、弥生は顔をぐしゃっと歪ませて声をあげて泣き出した。
先生が弥生の頭をなでる。
真由の喉の奥に、また、苦い何かが湧き上がった。