第7話 日本人はお風呂民族
トイレ完成。
・・・・・・風呂に入りたいなぁ。
キャンプとか家族でよく出かけてたけど、不便だ不便だといいつつ恵まれてたんだよな。
ここには何も無い。
俺は太陽を見上げた。
この世界の太陽も1つだ。
西(・・・なのかな?)に傾いて夕暮れももうすぐだ。
――透流、どうした?――
洞窟の入り口にモーリオンが現れた。
夕日を浴びて鱗がキラキラと光っている。
綺麗だよな。
――透流?食事はできたのか?――
「うん、桃を食べた。狼の長っていいヤツだよな。俺の言ってること理解してるのかな、水場にも連れて行ってくれた」
――そうか、よかったな――
「うん」
――帰りが遅いから心配したぞ。何をしていたんだ?――
「あー・・・・・・うん、トイレ作ってた」
だって必要なんだもん。
――・・・・・・・・・・・・・・・そうか――
なんだか居た堪れない。
ギクシャクとお互い視線を外し夕日を眺めた。
あぁ、綺麗だな。
――帰るか?――
「えー・・・と、汗と土でドロドロなんだよな。流せるところってあるかな?」
――その向こうにある泉で流したらどうだ?――
「・・・・・・いいのかな?」
あんな綺麗な泉で体洗うのってなんだか申し訳ない。
――構わないと思うが?・・・気になるなら水が流れ出ているところを使えば良い――
「おお、そうだね!早速行ってくる」
――うむ――
モーリオンは頷くと、
――長、足労ついでに付いて行ってやって欲しい――
茂みから出てきた狼の長に俺の付き添いを頼んでいた。
「一人でも大丈夫だよ」
――だめだ、もう日が暮れる。長が付いていれば危険も無い――
心配性だなぁ。
――仕方がないだろう。お前は小さく弱い。身を守る牙も爪も無い――
「短剣持ってるよ」
――心許ないのだよ。次に外出する時は防御の魔法がかかったあの装飾品を身に付けてくれ――
「う・・・・・・わかった・・・」
――では行っておいで。長、頼む――
狼の長は頷くと俺を促し泉に向かった。
「んじゃ、行ってくるね」
俺はモーリオンに手を振ると狼の長の後を追いかけた。
洞窟とは反対側に泉の水が小さな小川になって流れ出しているところがあった。
どうせ誰も見てないし、見てるとしても動物だけだし。
俺はさっさと制服も下着も脱ぐと、制服はそばの木の枝に引っ掛けて、Yシャツとパンツ(ちなみに俺はボクサー派)とTシャツを持って泉に入る。
「冷てぇーーーーーーーっ!」
浸けた足先がジンジンする。
とりあえず膝まで入るとパンツを洗った。
・・・・・・・・・・・・なんだかなー・・・
ふっ・・・異世界トリップなんて言っても現実はこんなもんさ。
パンツをギュゥゥゥゥゥッと絞る。
あ、プチって言った。
どっかの糸が切れたかも。
Yシャツも洗ってパンツと一緒に枝に干し、冷たいのに耐えながら腰まで水に浸かる。
慣れれば何とかなるもんだ。
Tシャツをタオル代わりに体を洗う。
トイレットペーパーどうしよう。
・・・そういえば、神官っぽいローブ残してたんだよな。
結構柔らかくていい生地みたいだしあれを小さく切って使うか?
洗って使えば十分足りる。
よし、そうしよう。
髪も洗ってさっぱりすると絞ったTシャツで簡単に水気を取る。
岸に上がる頃はあたりは真っ暗、ちょっとのんびりしすぎたかなぁ。
明かりが全然ないから本当に真っ暗。
そういえば、異世界にも月ってあるのかな?
あれこれ考えながらブレザーとズボンを身に付ける。
素肌に制服・・・ものすげー違和感。
裏地が張り付く感じとか、ズボンの擦れ具合がちょっとイヤ。
下着って大事なんだな。
まだ乾いていない洗濯物を手に取ると狼の長がすぐ傍に来て、空いているほうの手に擦り寄った。
「何?掴まれって言うの?」
俺を見上げる目は肯定しているようだ。
背中の毛を引っ張らないように気をつけながら掴むと、狼の長は暗闇の中ゆっくりと歩き出した。
なんかもう、モーリオンも狼の長も優しすぎだよね。
マジで泣きそう、涙腺弱すぎ。
☆
そんなこんなで1ヶ月。
モーリオンや狼の長とその仲間にお世話されつつ俺は野山を駆け回り順調に野生化している。
川も見つけ魚をゲット。
鳥やウサギくらいなら捌けるようになった。
もちろん自力で獲る。
アウトドアの知識が生かされまくる。
知識を与えてくれた野生児な父さんありがとう。
竹っぽい木と布から引き出した糸をよりあわせたもので釣竿をつくり、鳥の羽根や狼たちのもふもふな抜け毛、棘のある小枝で毛ばりも作った。
投石器も作って今では狙った的はほぼ外さない。
最初はまぁ・・・・・・うん、誰にだって初心者な時はあるのさ。
獲物を調理するための火はモーリオンに出してもらった。
モーリオンと契約している俺にも魔力はあるらしいんだけど使うための知識が無いから使えない。
調味料は岩塩を狼の長にもらった。
なんでもミネラル確保のために動物も舐めるとか?
詳しくはわからないけど、ま、いいか。
必然的に狼の長と一緒に行動することが多くなる。
モーリオンは大きすぎて森の中を動き回ることができないんだ。
一度だけ、真夜中にモーリオンの背中に乗せてもらって夜空を飛んだ。
夜空に浮かぶありえないほど大きな異世界の月がすごく綺麗で楽しかったからまた乗せてもらいたいんだけど、はしゃぎすぎて落ちかけた所為でそれっきり・・・残念だ。
狼の長に不便だからって名前をつけようとしたらモーリオンに全力で阻止された。
その日丸1日俺は洞窟の外に出してもらえなかったんだよな・・・・・・トイレには行けたけど。
俺が名前をつけるのは自分だけでいいんだって。
モーリオンのイメージがだんだん変わって行くよママン。
・・・・・・・・・そうだよ。
俺はこのでっかくて綺麗でかっこよくて優しくて心配性で独占欲の強いドラゴンが大好きなんだよ悪いかゴルァッ!!
すみません、後半端折りました><。
拘りすぎてもだれてきちゃうかな~とか思ったりして・・・
詳しく書け!と言われたら書かせていただきます。