第50話 進まない話と報われない思い
サブタイトル、これしか思い浮かばなくなった・・・
「さて、今度こそ話をさっさと進めるぞよ?」
椅子に踏ん反り返りとってもステキな笑顔を浮かべるアリアンを前に、
「「はい、姫君」」
床に正座する俺と浩輔。
「うむ」
アリアンは鷹揚に頷き、
「まずは透流からじゃ。語るがよい」
俺を見た。
「その前に、足崩していい?このままじゃ落ち着いて話せないよ」
正座は慣れてるけど結構きついもんね。
「仕方がない、許す」
「ありがと」
俺達は足を崩して床に座りなおした。
ちょっとお尻痛いけど、ま、いいか。
「じゃぁ、俺から話すね」
俺は最初から話した。
半年ほど前の夏の始まりくらいにこの世界に来たこと、モーリオンと一緒に暮らしてたこと、レボの話、泉の話。
「透流は俺達よりも先にこっちに来ていたのか」
「うん」
「この小さいドラゴンが黒竜・・・まてよ?トゥラ山脈といったな?」
浩輔がふと考え込む。
「俺達が召喚されたのはトゥラ山脈で異常な魔力値を観測したため・・・・・・その時期は夏の季の初め・・・・・・」
「浩輔?」
「・・・透流」
浩輔は顔を上げ俺を見た。
「たぶん、これは推測だが・・・俺達がこの世界に召喚された理由はお前がこの世界に来た事によって発生したエネルギーが原因かもしれない」
「え?」
「空間に作用する系統の魔力・・・とも言っていたからたぶんあっているはずだ」
「ええぇぇぇぇぇぇっ!?」
なにそれ!?
俺がこっち来ちゃった原因は俺って事!?
そんなのってあり!?
「ちなみに・・・」
浩輔は、
「お前、魔王だって思われてるから。俺、それを倒す救世主ね」
俺を見てニヤリと笑った。
あはははははは・・・・・・はぁ・・・
もういいよ、どうでも。
「そういえば、俺と朱里がこっちに来た時だけど一回お前の気配が消えたんだよな。次の日にはまた感じるようになったけど・・・・・・」
浩輔がふと思い出したように言った。
「あ~・・・その時さ、俺、死んでたわ」
うん、たぶんあの時だ。
「は?・・・ちょ、ちょっと待て、透流、死んでた?」
ぽか~んて表現がぴったりな表情だな、浩輔。
「うん、死んでた。たぶんモーリオン倒しに来てたんだと思うけど、3人組の冒険者に殺されてた」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「浩輔、煩い」
「何時じゃと思うておる。近所迷惑じゃ、静かにせよ」
――騒がしい男だな――
「あ、ごめん。・・・じゃなくて!死んでたってどういうことだよ!」
「浩輔、大声出さなくても聞こえるって」
「透流!・・・ッ」
浩輔が俺に掴みかかろうとして、
――触るでない!――
モーリオンに邪魔された。
なんだかパターンができてきてるなぁ・・・・・・
「・・・このクソドラゴン・・・・・・」
――ふん――
う~ん・・・俺としては仲良くしてほしいんだけどなぁ。
アリアンが拳を握るのを見て俺達はおとなしく話を続けることにした。
うん、痛かったもんね、拳骨。
「・・・で、どういうことだよ」
「うん、あの日俺はレボと一緒に冬に備えての食糧確保のために釣りに行ってたんだ」
俺はあの日あったことを話した。
あとからレボやモーリオンから聞いた事も交えて。
俺が殺されるまでのこと、殺されてからのこと。
思い出すと今でも怖いけど、モーリオンがいてくれるから。
震えるたびに優しく俺の名前を繰り返し呼んでくれるから。
「なるほど、そういうことか」
浩輔は、俺に、いや、モーリオンに向き合い姿勢を正す。
「透流を救ってくれてありがとう。感謝している」
握り拳を膝横に付き深く頭を下げた。
浩輔、こういうところがかっこいいんだよね。
――気にするな――
「モーリオンは『気にするな』って言ってるよ」
――伴侶を助けるのは当たり前のことだ。お前に礼など言われる筋合いはない――
「うは・・・モーリオンてば。・・・えと、『伴侶を助けるのは当たり前のこと。礼なんかいらない』だって。・・・俺のこと伴侶だって、嬉しい」
――お前は我のものだからな。伴侶で間違ってはおるまい?――
「うん、嬉しい!ありがと!」
俺とモーリオンは頬っぺたを摺り合わせた。
モーリオン、自分の鱗で俺の頬っぺたが傷付かないようにって、すっごく優しいんだよね。
「うふふ、モーリオン大好き」
――我もだ、透流――
「・・・・・・み・・・・・・い・・・」
「浩輔?」
浩輔が俯いたまま・・・震えてる?
「どしたんだ?」
「俺は・・・俺は認めないからな!何が伴侶だ!確かにあんたは透流を助けてくれた。だが、それとこれとは別だ!伴侶だと?寝言は寝てから言え!透流は俺のものだ!」
え・・・えーと・・・・・・浩輔?
「ドラゴン風情が何を言う。そもそも種族が違うだろう?透流は俺のものだ!」
あ~・・・相変わらずの独占欲だよなぁ・・・
「浩輔、お前ってば幼稚園の頃から変わんないのな。あの頃から俺に近づく友達に、俺のものだから触るなーとか、俺のものだから話すなーとか、俺と結婚するんだーとか、男同士は無理だって言ってるのにさ、ほんと、変わってない。おかげで友達できなかったんだよなぁ。まぁ、お前と朱里がいたから平気だったけど。うん、心配するな、親友はお前と朱里だけだから!あ、レボももちろん親友だ!親友というより3人とも家族っぽいけど!」
ワホン!
――透流様、ありがとうございます!――
窓の外、下からレボ小さな咆え声と念話が聞こえる。
「妾は違うのかや?」
アリアンが小首を傾げて言った。
「もちろん!アリアンは妹って感じかな。親友って感じ全然無かったから言わなかったんだ、ごめんね」
「かまわぬぞ。・・・ふむ、ならば妾はリィンの娘か。それは嬉しいことよのう」
うんうんと頷きながらアリアンは嬉しそうに笑う。
「もちろんモーリオンは俺の伴侶ね!」
――うむ――
「俺、異世界に来てよかったかも。ラウルたちも兄さんや姉さんみたいだし、家族がいっぱい増えたみたいだ」
――透流、よかったな――
うん、嬉しいよ。
「親友・・・家族・・・・・・」
浩輔は床にうずくまってふるふる震えていた。
「浩輔?どうしたの?」
覗き込もうとしたら、
「きっと嬉しさのあまり泣いておるのじゃ。男は泣き顔を見られたくはないもの、そっとしておけ」
アリアンに止められた。
確かに泣き顔は見られたくないよね。
「うん、そっとしておこう」
俺は浩輔から離れて浩輔が泣き止むまで待つことにした。
まだまだ浩輔に話したいこと話さなきゃいけないことがあるからね。
今のうちに話を整理しとこうかな。
初めて野宿したこととか、ラウルたちのこと、アレノスに着いてからのこと。
いっぱいあるから。
――浩輔たちの状況も詳しく聞かねばな――
そうだね。
俺はモーリオンをぎゅって抱きしめた。
いっぱいいっぱい話さなきゃ!
モーリオンが頬擦りしてくれる。
もう大好き!
「浩輔、報われぬなぁ」
「・・・・・・煩い」
GWなんて!GWなんて!・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん(号泣)
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