第3話 尾骶骨直下型ボイス
展開遅くてすみません。
やばい・・・マジやばい・・・俺って・・・・・・やばいよ!
「う~・・・・・・」
俺は唸りながらドラゴンを見上げた。
――透流・・・?――
だからやばいんだって!
両手で耳を押さえて恨めしくドラゴンを見上げた。
――透流、やばいとは何だ?――
「その声だよ!」
耳をふさいでても聞こえてくるし・・・もうどうしたらいいんだよ。
好みのヤツが・・・いや、この場合ドラゴンなんだけど。
好みの声で・・・いや、テレパシーと言うか念話?なんだけど。
囁くように耳元で・・・いや、むしろ脳内なんだけど。
優しく穏やかに名前を呼んだりなんかしたら・・・・・・
「気持ちよくって腰が立たなくなるんだよ!」
ああん、言っちゃった。
・・・って、俺は女子かよ!
――・・・透流・・・――
あきれたような声がした。
☆
「とにかくさ、名前が無いと俺が困るんだよ」
――何故だ?――
「だって、ドラゴンて呼ぶのもアレだろ?」
――アレ・・・とは?――
「だから・・・」
なんて言ったらいいんだよ。
「ドラゴン・・・てのは種族とか種類とか・・・学術名?」
あれだけ本読んでるのに何このヘタレ加減!
ドラゴンはうーうー言いながら頭をかかえる俺を黙って見下ろしている。
その優しい視線に顔を上げてその目を見たら・・・・・・
「ドラゴンて、個人名じゃないだろ?俺、あんたのこと名前で呼びたい」
うん、簡単なことだった。
俺はこのでっかくて綺麗でかっこよくて優しいドラゴンを名前で呼びたいんだ。
――・・・・・・そうか――
ドラゴンが優しく笑った。
――ならばお前が名を付ければいい。お前が呼びたい名を我に付ければいい――
優しくて甘い声。
反則だ。
俺は別の意味で頭をかかえることになった。
☆
名前・・・名前・・・名前・・・・・・
気を取り直して考える。
考える・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寒い!
興奮状態が沈静してきたらなんかここ寒いぞ!
てか、よく考えたらここってどこよ!?
改めて周りを見る。
うん、洞窟だ。
天上高くて広いよね!
終わり。
・・・そうじゃなくて!
――ここは、人間がモルヴァーナと呼ぶ大陸の最北にあるトゥラ山脈の一角だ――
ドラゴンが笑いながら教えてくれた。
「モルヴァーナ?」
問いかけるといきなり頭に地図らしきものが浮かぶ。
「え?」
思わずドラゴンを見ると頷き返してくれた。
イメージを念話(って呼ぶことにした)で送ってくれたらしい。
画像も送れるって便利だな、これ。
大陸の形とか、まったく見たことが無い。
地球じゃない、やっぱリアル異世界!
――ほう、透流はこの世界とは別のところから来たのだな――
「うん、どうもそうらしい」
――どうやって?――
「わかんねー」
――・・・・・・・・・そうか――
「だってさ、友達と一緒に歩いてたらいきなり穴に・・・・・・って、浩輔と朱里は!?」
すっかり忘れてた。
浩輔と朱里は無事なんだろうか・・・・・・
それでも友達か!って浩輔に怒られそうだけど、だって目の前にドラゴンだぞ!
こんな美人なドラゴンだぞ!
理想が綺麗な鱗まとって存在してるんだぞ!
忘れて当たり前だ!
あ、朱里の怒りながら泣いてる顔が浮かんだ・・・・・・・・・
あー・・・・・・・・・うん、いまさらだけど心配だ。
まぁ、浩輔も朱里も俺よりずっとしっかりしてるし、浩輔はなんだかんだで剣道柔道空手合わせて5段だし・・・たぶん大丈夫だと思う。
「なぁ、俺がここに来た時っ・・・・・・・・・ックシュン」
くしゃみがでた。
やっぱ寒い!
でもこんな洞窟の中だから着る様な物ないし・・・・・・
――その奥を見てみろ、何かしら羽織る物が残っているかもしれない――
残ってる?
どゆこと?
疑問に思いながらもドラゴンが示す場所に行ってみると・・・・・・・・・
うん、俺、固まった。
だって目の前、干からびたりなんかしたりしてるけど死体の山なんだもん。
俺、涙目。
名前とか地名とかカタカナで考えるのが苦手です。
漢字だったらすぐ浮かぶのに~・・・・・・そんな私は生粋の日本人。