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華も嵐も踏み越えろ!  作者: ゆえ
25/52

第25話 冒険者ギルド

しばらく街の中です。

ギルドはレンガ造りの3階建てで、1階はロビーと受付と事務所、2階の半分は食堂で、残り半分と3階が宿屋になっている。

セキュリティは万全だけど割高なので利用するのは一部のお金持ち冒険者とか貴族の旅行者くらいらしい。


ギルド内は大型の動物は禁止ということなのでレボは表で待つことになった。

「ごめんね、レボ」

――構いませんよ、こうやって人の波を見ているのも面白いものです――

レボは本気で面白がっている。

「んじゃ、行ってくるね」

――はい、行ってらっしゃいませ――

俺はレボをひとしきり撫でた後、中に入っていった。


ロビーに入ってすぐ左側にテーブルが3つあり、椅子が各テーブルに3脚づつ。

冒険者らしいごつい男が何人かいた。

右側に紙?羊皮紙?布?が何枚も貼り付けられた掲示板らしきものとその奥に2階に続く階段がある。

そして正面は受付だ。

真ん中のブースでセレンが受付嬢?となにやら交渉中。

サラとラウルは掲示板の前で何か話してる。

新しい依頼を受けるのかな?


依頼・・・

あ、そうだ!


俺は右側のブースに向かった。


「あの、すみません」

恐る恐る声をかけると、

「はい、ようこそアレノス冒険者ギルドへ」

受付のお姉さんがにっこりと笑う。

「あの、依頼なんですけど、俺でも出せますか?」

「ご依頼の申請ですね。手数料と冒険者への報酬さえきっちり支払うことができればどなたでも可能です」

「俺、まだギルドに登録してないんだけど・・・」

「一般の方でも可能ですよ」

再びにっこり。

「手数料はいくらなんですか?」

「そうですね・・・依頼にもよりますが、最低で銅貨30枚からですね」

えと、日本円にしたらいくらなんだ???

俺が戸惑っていると、お姉さんはくすっと笑い、

「とりあえず、依頼内容をこちらにご記入ください。手数料の計算はそのあとでいいと思いますよ」

優しく教えてくれた。

見積もりってことなのかな。

俺は渡された・・・これは紙かな?繊維が荒いけど、うん、紙だ・・・に、内容を書こうとして・・・困った。

字、読めるけど書けねぇ!

「すみません・・・俺、字が書けなくて・・・」

「では、代筆希望ですね。読むことはできますか?」

「はい、読むことはできます」

俺が申し訳なさそうに言うと、

「大丈夫ですよ、読み書きができない人はよくいますから代筆も私たちの業務のうちです」

またまたにっこりと笑いかけてくれた。

「それでは、ご依頼内容は?」

「えと、俺のギルドへの紹介と・・・」

「え?紹介?」

「あ・・・俺、忌み色なんです」

そっとフードをずらすとお姉さんはちょっと驚いた後、またにっこりと笑ってくれた。

「大丈夫ですよ、冒険者には黒髪の方がたくさんおみえです。私たちは黒髪に偏見はございません」

俺の怯えがわかったのかきっぱりと、でも優しくそう言ってくれた。


対象レベル:Lv5以上

依頼内容:依頼者のギルドへの紹介と目的達成までの護衛

依頼者:トール

期間:目的達成までの長期

報酬:金貨1枚および必要経費

依頼詳細:依頼者がギルド登録するために紹介者となること。

     行方不明の依頼者の友人を探す旅への同行。

     無事に故郷へ帰れるように依頼者およびその友人を護衛。

備考:依頼者は黒髪。

   同行に子竜と狼。


「こんな感じかしら」

「ありがとうございます。それで、手数料は・・・?」

「そうね・・・長期の護衛が主な内容になるから銀貨1枚になります」

代筆してもらいながら少し雑談したからかな?

お姉さんの口調が少し砕けた感じになってきた。

雑談内容は、金貨を払えるのか~とかどこで手に入れたのか~とか・・・正直に死んだ冒険者から頂いたと言うとすんなり納得していた。

そういう人は多いと言うか、当たり前のことみたいだ。

「今すぐに払える?」

「はい」

俺は財布から銀貨を1枚出しお姉さんに渡す。

使える銀貨かどうかわからないからちょっとドキドキ。

でも、何事もなくお姉さんが受け取ったから・・・OK?

「依頼を受理しました。あとはこれをそこの掲示板に貼るだけなんだけど・・・受けてくれる人が現れるかどうかはわからないわよ?」

お姉さんは少し困ったように言う。

うん、そのことはよくわかってる。

・・・てか、すぐ受けてくれそうな人たちがさっきから俺のことガン見してるんだよなぁ・・・・・・

「はい、代筆ありがとうございました」

俺は苦笑を浮かべ、もう一度お姉さんにお礼を言うと掲示板に向かった。


依頼を掲示板に貼り付けるとすぐに横から手が伸びて、セレンが破りとった。

「トール、どういうことですか?」

ちょっと怒ってるっぽい?

「うん、どうせなら正式な依頼のほうがいいと思ったんだ。そのほうが達成時にポイントもらえるでしょう?」

「それはそうだけど・・・」

「みずくさいぞ」

「でもさ、このほうが・・・俺も都合がいいんだよね」

「都合?トール?」

訝しげに俺を見るセレンを見返す。

「で、依頼受けてくれるの?」

「・・・・・・受けましょう」

3人は頷き、俺が依頼書を作った受付へ行った。

俺が手続きをしたお姉さんがびっくりしたように俺を見るからにっこり笑って手を振る。

お姉さんも笑い返してくれた。

セレンがお姉さんと2~3言葉を交わすとすぐに俺が呼ばれた。

そのまま俺の登録をするらしい。

「この人たちがいるならギルドの詳しい説明は不要ね?」

「はい」

「それじゃぁ登録に入ります。紹介者は?」

「俺だ」

「いや、私たち3人全員です」

「ほえ?」

「全員よね」

「え?あ?でも・・・?」

「3人だ」

「はい、承りました」

お姉さんはにっこりと、本日最高の笑顔を見せたのだった。


ギルドの登録はなんと言うか・・・不思議だった。

魔法って何でもあり?


お姉さんが取りだしたのは水晶でできた立方体?

――ほほう、これほど大きな魔宝石は珍しいな――

モーリオンが頭の上から覗き込んだ。

魔宝石!?

これが?

お姉さんはその魔宝石を普通に台に置くんじゃなくて、角で立たせた。

てか、角、ちゃんと尖った角だったぞ?

それを難なくバランスよく置くってどうよ?

それも無造作に!

魔法か?

魔法なのか!?

――いや、この女には魔力は感じられない――

それじゃぁこの魔宝石が自立してる?

――それも無い。強い魔力は感じるが、それで自立しているわけではない――

と、いうことは?

――この女が立たせたのだろう――

お姉さん・・・すげぇー!

俺はキラキラと尊敬の目でお姉さんを見た。


いや、それはともかく。


俺はお姉さんの言うとおり、角で立つ立方体の上に手をかざした。

くるくると上下の角を軸に回る魔宝石。

そして、ラウルたち3人も魔宝石に手をかざす。

くるくる回る魔宝石の中央に光が集まりゆっくりと上へ上がってくる。

それが完全に上がりきった時、俺の手の中に1個の石があった。


オパールのような輝きの石。


これって・・・

思わず額にある石に触れる。

――似ているな――

モーリオンが面白そうに見る。


「それがあなた個人の石になります」

お姉さんは魔宝石を片付けて次に銀色の腕輪を取り出した。

ラウルたちが付けている物と同じだ。

ただし、石がはまっていない。

「こちらにその石をはめ込みます」

「へ?どうやって?」

「この穴の部分に置くだけでできますよ」

渡された腕輪の穴が開いている部分に石を置くと腕輪と石が淡く発光し、その形状を変えた。

銀と燻し銀の2匹のドラゴンが絡み合い、威嚇するように向かい合って開いた口の間に石が挟まっている。

ドラゴンのデザインなのに繊細なつくりですごくかっこよくて綺麗だ。

「まぁ!あなたは魔力が強いだけじゃなくて竜の加護を持っているのね」

お姉さんの言葉に思わずモーリオンを見ると、

「その可愛いドラゴンかしら?」

お姉さんもニコニコとモーリオンを見た。

ラウルたち3人も面白そうに腕輪を覗き込んでいる。

「トール、はめてみて」

サラに促され左手を通すと腕輪は俺の手首にあわせて収縮し、しっくりと馴染んだ。

「何だかすごいね」

嬉しくなってきた。

シルバーアクセとか結構好きなんだよね。

いくつか持ってるけど、これ最高だ!

だってこの燻し銀のほうのドラゴン、モーリオンにそっくりなんだよね。

「トール、嬉しそうだな」

「うん、俺、すっげー嬉しい!」

思わず腕輪に頬ずりした。

「よかったですね」

セレンが俺の頭を撫でる。

そんな俺たちをお姉さんはしばらく見ていたけど、

「コホン」

咳払いを一つ。

「ギルド証の説明に移ってもよろしいでしょうか?」

「あ、はい、すみません」

畏まる俺にお姉さんはにっこり笑い、説明をしてくれた。


ギルド証である腕輪は魔力の量によってその形状を変え、今後も劇的に魔力量が変わることがあれば形状を変えることがあるらしい。

3人のギルド証を見せてもらうと、ラウルとサラの物は最初に渡された物と変わりががなく、セレンの物は表面に炎と風を表すような文様が刻まれていた。

埋め込まれた石は、ラウルが透き通った青、セレンがヒスイのような緑、サラが濃いピンクの不透明の石だ。

石には個人の情報が詰まっていて、見ることができるのは自分自身のみ、俺の場合は俺と紹介者の3人で、他人は見ることができない。

情報の管理はギルドが行い、情報は見ようと思いながら石に触れると頭の中にウインドーが開く感じに開示される。

見たい情報が拡大される感じかな。

ギルド証を各都市の門や国境の関所で提示することで出入りが自由になる。

ほぼ紛失することは無いけれど、不慮の事態、腕が斬られるとかで紛失した場合、再発行が可能。

ただし金貨5枚が必用。

本人が死亡した場合、ギルド証の石が砕ける。

腕輪の部分は、拾った者や同じパーティーの仲間の責任で速やかにギルドに返却することが義務付けられている。


掻い摘んで・・・こんな感じかな。




ギルドを出て、プランどおりに宿を探す。

レボがいるからちょっと条件キツイかもーって思ってたけどあっけなく決まった。

3人が定宿にしてるとこ、レボOKでちゃいました!

女将さん曰く、

「あたしゃ犬が大好きなんだよ」

レボ、おいしそうなご飯もらって嬉しそうだ。


そして部屋なんだけど・・・


「なんで俺、サラと一緒?」

「二部屋しか取らなかったからよ」

「でも!俺、男だし、ラウルたちの部屋に・・・」

「無理よー。この部屋と一緒の作りだもの、ベッドが足りないわ」

「あうー」

「大丈夫、安心しなさい。襲ったりしないから」

「いやいやいやいや、普通は女性が警戒するもんでしょう!?」

「トールは私のこと襲ったりしないもの。でしょ?」

「・・・・・・はい」

そんな怖いことできません!

「まぁ、あの二人も私を襲ったりはしないと思うけどね」

サラがくすくす笑う。

うん、絶対襲わないと思います!

「どうせ寝るだけの部屋だしいいじゃない」

「まぁ、サラがいいなら・・・」

「よし、買い物に行きましょう!」

「え?もう?」

「早くしないと日が暮れちゃうわよ。トールも装備一式揃えるんでしょ?」

「あ、うん。あと着替えも買わなきゃ」

パンツ売ってるかな?

とりあえず、財布とモーリオン!

――我は財布と同等か・・・――



部屋を出たらちょうどラウルとセレンが来た。

「先に飯食ってから行くぞ」

「お昼には少し早いですが混む前にとってしまいましょう」

俺たちは連れ立って宿に併設されている食堂に向かった。


メニューはよくわからなかったけど・・・

俺が食ってるのはナンにトマトソースつけてレタスと鳥肉を乗っけたような感じ?

不味くは無いけど・・・舌の肥えまくった現代人には物足りない。

こうやって食堂とかで食べてるから余計に感じるんだろうけど、香辛料欲しいよな。

効きが悪いのか殆ど使ってないのか・・・薄い塩気しか感じないよ。

しまったなー、森にいるときに作った乾燥ハーブとか持ってくりゃよかった。

かさばるからって置いてきちゃったんだよね。

でも、何で香辛料とか発達してないんだ?


モーリオンに鳥肉食わせながら考える。


冷凍冷蔵の技術はなさそうなんだけどなぁ。

肉とか保存する時どうしてるんだろう?

干すだけ?


などと考えてたら、

「ほい、これはおばちゃんからの奢りだよ!」

目の前に木製の小鉢が置かれた。

この世界では木製の食器が一般的だ。

陶器やガラスはまだ見たことがない。

「セレンのとこの新しい子だろう?まだ小さくて細っこいじゃないか。たんと食べて大きくおなり!」

気風のいい女将さんだ。

セレンたちが何か話してるけど、

「あ、ありがとうございます」

俺はお礼を言うのがやっとだった。

だって、俺の目の前に置かれたのは・・・

「あいすくりーむ・・・?」

添えられた木製のスプーンですくって食べてみる。

「冷たい・・・甘い・・・」

乳臭い、冷たくて甘いだけのアイスだけどなんだか涙が出てきた。

「あらら、感動して泣いちゃったのかい?」

おばちゃんが満更でもない顔をして笑う。

「久しぶりに・・・甘いもの食べた・・・・・・」

甘味に飢えてたんだな、俺。

――それはなんだ?――

「モールも食べる?」

すくって差し出す。

「あーん」

素直に口をあけるモーリオンが・・・可愛い。

――ほう、なかなか・・・――

お口にあったようです。

もっとーって口あけるのが・・・可愛い。

「これ・・・どうやって作ったんですか?」

「う~ん、それは教えられないねぇ」

「いえ、材料とかじゃなくて・・・どうやって冷やしたのかな~って」

「あぁ、そっちかい」

おばさんは意表をつかれたような顔をした。

「そっちを聞かれたのは初めてだよ」

あははと大口を開け笑いながら、

「氷の魔法さ」

さらっと言った。

「え?おばさん魔法使いなの?」

「いやいや、魔法使いというほど魔法は使えないよ。なんだい?この子の世間知らずッぷりは?」

「集落を追われて森でずっと暮らしていたからなのよ」

「あらあらまぁまぁ!だからこんなに小さいのね!可愛そうに、苦労したのねー」

おばさんは俺をムギューーーーーって抱きしめてきた。

かなり苦しい・・・・・・・・・

豊満なお腹とお胸に圧迫されて息が・・・

俺がジタバタ暴れてるのをラウルが笑いながら救出してくれた。

「魔法が使える人は全体の2割くらいでしょうか?それ位はいるはずです。簡単な、火をつけたり、灯りをともしたり、氷の魔法を使える人も少数ですがいます」

「あたしはその少数派だね」

氷の魔法かー・・・

術だと強過ぎになるかなぁ。

でも、アイスが作れたらいいよなぁ。

他にも色々おやつとか作りたいし・・・

よし!ひそかに練っていた計画を実行しよう!

「おばちゃん、おいしかった、ありがとう!」

「いえいえ、どういたしまして」

俺はおばちゃんに挨拶を済ますと3人に向き直り

「んじゃ、買い物行こう!すぐ行こう!」

急かすのだった。



目指せ食事の充実!



これ、必須だと思うぞ!




人生斜め下。


変なところがあったら教えてください。

話自体が変?

デフォルトです。


ちょっと微調整。

お金の設定間違えてたっぽい・・・

あと、書き忘れを追加。

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