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華も嵐も踏み越えろ!  作者: ゆえ
18/52

第18話 旅立ち

やっとここまできました。

洞窟に戻った俺たちは出発の準備をしている。


でも・・・・・・


「ほんとに二人とも俺と一緒に来てくれるの?」

――もちろんだ――

モーリオンが俺の頭の上で鷹揚に頷き、

――もちろんですよ、あなた方二人だけで旅だなんて・・・・・・・・・――

狼の長・・・じゃなくてレボは俺たちから視線を外しどこか疲れたような遠い目をした。







「モーリオン、俺と一緒に行ってくれるの?」

――もちろんだ。以前の我であったらとてもお前と共に旅に出るなどできなかったが、今の我なら共に行けるであろう?――

「うんうん、俺嬉しい!」

俺はぎゅーーってモーリオンを抱きしめた。

――これこれ、透流、苦しいぞ――

モーリオンはちっとも苦しくなさそうな声でそう言い嬉しそうに笑う。

そんな俺たちを微笑ましそうにレボが見ていたけど、

――そういえば・・・お二人は旅の経験はおありですか?――

小首を傾げて聞いてきた。

「旅・・・俺は修学旅行くらいかな?」

――しゅうがくりょこう・・・?・・・黒竜様は?――

――我は5000年・・・6000年?ほど前に中央のルフ山からこの地に棲み処を移した時に移動したきりだな。ただし、旅というより一気に飛んできたと言ったほうがいいだろう――

わー・・・モーリオンていったい何歳なんだろー・・・・・・

――何歳だろうな・・・忘れた――

はい、忘れるくらいのお年ってことですね。

気にしたら負けだよね。

――・・・・・・お二方共に旅慣れていないということですね?――

「そうだね」

――うむ――

――まぁ、私も群れの移動くらいの距離しか経験はありませんが・・・・・・――

レボはちょっと考え込んで、

――この森は比較的安全ですが、森を出ると魔物や魔獣がいます――

話し始める。

――中には危険なモノもいます。そうですね・・・この近くの街道沿いに出る魔物で危険なものは亜竜人でしょうか。私たちも水辺で何度か遭遇したことがあります。単体ならばそれほど危険度はありませんが集団で襲われたら危険度はかなり増します――

レボは俺たちを真摯に見た。

――戦えますか?――

魔物と戦う・・・考えてもいなかった。

そうだよな、ここは俺のいた世界じゃない。

魔物だって魔獣だっているんだ。

――ふむ、この体の大きさでは不安だとレボは言うのだな?――

――はい、元の大きさとは言いません、もう少し黒竜様が大きく在らせられればそれほど心配は無いと思うのですが・・・――

――魔力は戻っているのだが・・・・・・試してみるか――

モーリオンは俺の腕の中から抜け出ると、森の開けた方向に体を向けおもむろに口を開いた。


え?ブレス?


魔力が高まり・・・・・・って、ちょ!それヤバイ!


俺がモーリオンの頭を無理やり空に向けた瞬間。


カッ・・・ッ!


閃光が空に向けて放たれた。


――・・・・・・透流、いきなり何をする。首が痛かったではないか――

不機嫌にそう言うけど・・・・・・

「モーリオン、それヤバイ。その威力で放ったら森がまた消えちゃう」

何でそんなに魔力込めるの!?

――これでも魔力はほんの少し込めただけのはずなのだが・・・まだ調整がうまくいっていないからか?――

モーリオンは小首を傾げ・・・あぁ可愛い・・・じゃなくて、考え込んでしまった。

モーリオンのブレスに硬直していたレボが大きく息を吐いた。

レボ、意外とパニック体質?

――驚きました・・・・・・――

――ふむ、安定するまでは不用意に使えないということか・・・・・・――

はい、モーリオンは戦力外ってことですね。

となると、俺の出番だ!

モーリオンたちを蘇生したときは無我夢中だったから魔術使った実感が殆ど無いんだよね。

なんかこう・・・わくわくする!

「んと、魔物を攻撃するには、オーソドックスに火がいいのかな?」

目標は、あの倒木でいいか。

両手を軽く前で広げて術を展開・・・・・・

――透流!――

――透流様!大きすぎます!!――

「ほえ?」

うわ!

気が付いたらチョーでっかい火の玉形成。

「うわわわわわっ!」

飛んでけー!

頭上に放って事無きを得ました・・・・・・・・・

――透流様・・・・・・――

――透流・・・お前も人のことは言えぬぞ――

「あはは・・・・・・ごめんなさい」

えと、今度は小さく小さく小さく小さく・・・

目の前にかざした右手の人差し指の先に小さく術を展開。

指の先、少し上に小さな火球。

そのまま倒木を指して放つと・・・・・・

――うわっ!――

火球は真っ直ぐ飛ばないで何故か曲がってレボの方向へ。

あわてて避けてくれたからいいけど、火球が当たった地面、なんかすっごく抉れてる?

当たってたらやばかったね。

――透流様、ちゃんと狙ってください――

「ごめんごめん、ちゃんと狙うよー」

今度は最初から指差して術を展開。


「当たれ!」


バシュッ!


当たりました、倒木じゃなくてそのずっと横の燃えカスの木に・・・


「えっとー・・・・・・?」


もう一回!


バシュッ!


もう一回!


バシュッ!


もう一回!


バシュッ!


めんどくさい!


術、いっぱい展開!


火球を20個くらい出して一斉に放つ。


ズガガガガガガガガガッ!


「・・・・・・えーーー・・・・・・と?」


狙った倒木は無傷、でも回りは大惨事。

モーリオンはちゃっかり俺の頭上に避難して、レボはがんばって避けてました!


「と・・・とりあえず修復します!」


再生の術展開ーーー!


よかった、再生系は失敗無いみたいです。

ピンポインとで狙わないからかな?


――透流・・・・・・――

「うん、俺、コントロール壊滅的?」

狙ったものには当たらないってのもある意味すごいとは思うけどね。

――透流様・・・・・・――

あぁ!レボの視線が痛い!!

「あ、でもさ!俺にはまだ精霊魔法がある!」

――・・・とりあえず、やってみてください――

レボが溜息をつきながら頷いてくれたから、

「おー!・・・えと、精霊さーん、出てきてくださいなー」

精霊を呼んでみた。


ポポポポポンッ


と、俺の周りに現れる色とりどりの光球。


――トール、ナニ?ナニ?ヨンダ?――


なんて声が聞こえてきて、光球が俺の周りをクルクル踊る。

どうしよう、可愛い。


「とりあえず、火の精霊さん、あの倒木を攻撃して欲しいんだけど、いいかな?」

頼んでみると赤い光球がふわっと目の前に来た。

――コウゲキ?――

「うん、あれをね、燃やして壊して欲しいんだ」

――魔力、モラッテイイ?――

「うん、いいよ」

そう言うと、額にある石が一瞬熱くなり、目の前の火の精霊の光球が形を変えた。

炎でできた小さな人型。

人型になった火の精霊は火球を作り倒木に向かって放つ。


俺よりずーーーーーっとコントロールいいのね。

倒木、弾けて燃えちゃったよ。

周囲もちょ~っとだけ広範囲に抉れて削れて穴開いちゃったけど、いいよねいいよね?


さて、再生しなくちゃ!

証拠隠滅証拠隠滅証拠隠滅・・・・・・俺は呪文を唱えた。


――主、コレデイイ?――

「うんうん、ありがとう」

お礼を言うと、火の精霊はくるっと回転して嬉しそうにしている。

人型から光球には戻らないみたいだ。

なんでだ?

――お前の魔力をもらったからだろう――

「え?そうなの?それじゃ他の子にもあげたらみんなこうなるのかな?」

――うむ――

「精霊さんたち、他のみんなにも魔力あげるね」

光球が嬉しそうにクルクル踊り、額の石が熱くなる。

それぞれがそれぞれの質や色を纏った人型になった。

「おおー!すげー!可愛いし綺麗!!」

――精霊には元々決まった姿や形が無い。これらはお前が想像した姿を模倣しているに過ぎない――

「そうなんだ」

火、土、光、闇の精霊は男の子っぽくて風、水、木は女の子っぽい。


うん、なんかいいね!

それに、使えるぞ!精霊魔法!!


レボが溜息をついた。

――透流様・・・使えそうで使えませんよ、それ――

「えー、なんでー」

――威力が強すぎます・・・それに、使うまでに時間が掛かりすぎます――

レボが困ったように言い、

――命令をもっと簡易にせねば使えぬな――

モーリオンが頷いた。

「呪文とか?簡潔なもの作ればいいのかな?」

――うむ。発動までに時間がかからなければ使えるのではないか?――

――いやいやいや、魔物相手に強すぎますって!使っちゃダメです!――

あわててレボが止めた。

――透流様は魔術も精霊魔法も使わないでください!――


あう・・・・・・

俺って使えない子?

無尽蔵な魔力あっても宝の持ち腐れぇぇぇぇぇぇぇっ!?


――とにかく!お二方共に、魔物とは戦わないようにしてください。戦闘は私が受け持ちます――

「え?それって?」

――お二方だけでは心配ですので私も同行します。まぁ、はじめから行動は共にするつもりでしたから・・・――

――おお、それは心強い――

「うんうん、レボも一緒だと嬉しい!ありがとう!」

あ、でも・・・

「群れのほうは大丈夫?守らなくてもいいの?群れを出たとしても外から守ることができるんじゃ・・・」


――お二方だけで旅立たせるなんて・・・そんな恐ろしいこと私にはできません!――


そうですか・・・・・・







そして冒頭に戻る。



「でもさ、冬に備えて保存食作っておいてよかったよね」

干物に干し肉、燻製、ドライフルーツ。

――そうだな。・・・それにしても、そのフロシキというものはなかなか便利なものだ――

――ただの1枚布がこのように使えるとは・・・――


ありがとう、日本の文化!

教えてくれたお母さん、ありがとう!

そして、ずるずる長いローブを来てた神官っぽい人もありがとう!

色々活用させていただいております。

安らかに眠ってね。


「えと、こんなもんかな?」

――そうですね、食べ物などは道中狩をしながら行きましょう。保存食は食料が足りなくなった時のためとして、水は・・・――

「精霊さんにお願いできると思うよ」

――確保済みってことですね――

――・・・それでだ、レボ、ここからいちばん近い人間の集落はどこにある?――

――直線距離で5日かと・・・しかし・・・――

レボは言いよどむ。

「何か問題があるの?」

俺が促すと、レボは俺の目を見返してきた。

――透流様の"色"です――

「・・・・・・色?」

――はい。黒髪はまだいいのですが、人間には・・・黒い目はありえないのです。黒い目は魔物が持つものと、人間はそう思っています――

「あぁ、なるほど、あいつらが言ってた忌み色とか双黒ってのはそれのことだったんだ」

俺たちの世界じゃ普通に大量にある色なんだけどなぁ。

俺は溜息をついた。

「あ、術を使って色を変えるとかできないかな?」

――ダメだ!――

――ダメです!!――


保護者'sに止められました。


――そんな危ないことさせられません!――

――うむ。それに、我は色を変えるのは反対だ――

――えぇ、えぇ、反対です!そんなに美しいのに・・・もったいない!――

「もったいないって・・・でもこの色だと人間に会えないじゃん。せめて目の色だけでも変えたほうがいいと思うんだけど」

――だが・・・――

――しかし・・・っ――

「浩輔と朱里を探すためには人間とも接触して情報集めなきゃならないんだよ?」

――だが、お前の術は危険だ――

「大丈夫だよ、攻撃するわけじゃないし、精霊さんに頼んでみるし・・・大丈夫だよ!」

・・・・・・・・・たぶん。

――だが!――

――でも!――

あーーーーーっ!もう!ゴチャゴチャうるさい!


無視しよう。


――透流!――

――透流様!――


無視無視、スルーだ、スルー。


――透流・・・――

――・・・透流様・・・――


二人ともなんか凹んでるけど見なかったことにしよう。

何も見えない、何も見えない!


「えーっと、この場合、光関係かな?光の精霊さん出ておいでー」


ポンッと目の前に現れる小さな光の男の子。


――主、ヨンダ?――

「うん、お願いがあるんだ。俺の目の色って黒でしょ?この色をね、違う色に変えたいんだけど・・・目を傷めないでできるかな?」

光の精霊はちょっと考えていたけど、

――水ニモ頼メバ一緒ニデキルヨ――

そう言って、くるんと回った。

「おお、そうか!それじゃぁ・・・水の精霊さんも出ておいでー」


ふわんと水色の小さな綺麗な女の子が現れる。


――主、ナァニ?――

「あのね、光の精霊さんと一緒に俺の眼の色の見た目だけ変えて欲しいんだ。黒く見えないようにして他の色に見えるようにするの。できる?」

――・・・デキルヨ――

「やった!じゃぁ、お願い!あ、俺の魔力使ってもいいよ」

そう言うと、二人は淡く光って俺の周りをクルクル踊る。

――主、何色ガイイ?――

光の精霊が聞いてきた。

「う~ん・・・何色でもいいんだけど・・・」

――似合ウ色ガイイ!光、主ニ似合ウ色!――

水の精霊がはしゃいだように言う。

見かけによらず、水の精霊はお転婆?

光の精霊はくるんと一回転すると光を強めた。

一瞬目の前がまぶしくなったけど、すぐに治まる。

「えと?できた?」

――ウンウン、デキタヨ――

――主ノ目、違ウ色ニナッタ。コッチノ色モ綺麗ネ――

俺は数回瞬くとモーリオンを見た。

「似合う?」

――ほう・・・――

――これは・・・なかなかいいですね――

「何色?」

――そうだな・・・お前の好きな泉の色だ――

泉の色・・・なんか嬉しい。

鏡が欲しいよなー

俺も見てみたいよ。

鏡、売ってないかなぁ。

よし、人里に行ったら鏡を買おう!

・・・あったらだけど。

――色はどうやって変えたのですか?――

――エトネ、主ノ涙ヲ薄ク固メタノ――

――ソレデネ、コノ色ヲ反射スルヨウニシタンダヨ――

――器用なものだな――

カラーコンタクトぽい物なのかな。

「割れたりしない?」

――大丈夫!魔法ヲ解クマデ大丈夫!――

違和感もないし・・・さすがは、魔法!

何でもありだよなぁ・・・・・・




そんなこんなで準備をし、荷物をレボに括りつけ、いくつかは俺が背負った。

モーリオンの定位置は俺の肩か頭かリュックの上。

魔力のせいかな?

重さを感じないから不思議。


洞窟を出る。

短い間だったけど・・・なんだか感慨深いなぁ。


――結界を張りなおすぞ――

「張りなおす?」

――うむ、穴が開いてしまったのでな――

「・・・俺でも結界張れるかな?」

――ふむ、どうだろうか・・・――

「なんかさ、狙って当てる~って言うのはダメっぽいけど広範囲だったらいけるみたいなんだ」

――やってみるか?――

「うん、やらせて!」

モーリオンは笑って頷いてくれた。



思いを込めて術を展開する。

この森を守りたい。

森に、森に棲む全てのものに害を与えるモノが入り込まないように。

森に受け入れられないモノが入り込まないように。

術を二重三重に展開し、結界を張っていく。



張り終わってモーリオンを見ると、呆れたように笑われた。

――森全体に張るとはな・・・――

「やりすぎ?」

――うむ。だが、よかろう。お前の思いが伝わって森も喜んでおる――

「よかった」

――では・・・そろそろ出かけますか?――

「うん、いこう」

速く移動するためにレボの背中に乗る。

「重くない?」

――大丈夫ですよ。このまま全力で走れます――

「疲れたらちゃんと言ってね。俺、歩くからさ」

――はい、そのときはお願いします――


それじゃ、行きますか!




「しゅっぱぁぁーーーーつ!」




そうして、俺たちは旅に出た。





5分後、


「レボ!速すぎ!揺れすぎ!ぎぼぢ悪・・・・・・吐きそう・・・・・・うっ・・・」


――透流様ぁぁぁぁぁ!そのまま吐いちゃダメですぅぅぅぅぅぅぅ!!!――




ついに旅立ちです。

やっとここまできました・・・・・・(T^T)



今日明日とプライベートが忙しく続きを書くことが微妙です。

次回更新は少しお待ちいただくかもです。

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