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華も嵐も踏み越えろ!  作者: ゆえ
14/52

第14話 E=mc²

いじめのシーンがあります。

お気をつけください。

浩輔と朱里、俺の親友。

小さい頃からいつも一緒だった。

幼稚園の頃は3人じゃなく一人一人としか会ってはいなかったが小学校に入り3人一緒になった。


そして気が付かされた。


二人が特別だということに。



浩輔も朱里も当時から飛びぬけて綺麗で、大人びていた。

子供らしい我儘とかヤンチャとは無縁の二人とどこから見ても典型的なお子様な俺。

周囲から見たら俺たちはちぐはぐだったんだろうな。


浩輔の家族も朱里の家族も、もちろん俺の家族も俺たちが一緒に遊ぶのを微笑ましく見ていてくれたけど、他人は違った。


俺を邪魔だと言ったんだ。



確か小3の時だったかな。

何があったかは忘れたけれど俺が一人担任に呼ばれて、一緒に帰る約束をしていた浩輔たちは校門で待っていた。

先生から開放されて児童玄関を出ようとした時、5年か6年の人たちに囲まれた。


自分より大きな人に囲まれてすっげー怖かったことを覚えてる。

でも、負けん気の強かった俺はそいつらを下から睨みつけてたけどね。


そいつらが言うには、


あの二人は特別なんだ。

お前なんかが一緒にいられるような人じゃない。

連れまわすなんてあり得ない。

綺麗な二人に汚いお前は近づくな。

移ったらどうする。

お前は邪魔だ。

迷惑なんだよ。

どっかへ行け、帰ってくるな。

死ねばいいのに。


散々なことを言われた。


言葉の一つ一つが俺に突き刺さった。


悔しいと思うより悲しかった。


でも、何故か泣けなかった。


手を出されることはなかったけれど、先生が来て「帰れ」と散らされるまで俺はそいつらの言葉のナイフを受け続けていた。


開放されて校門に向かうと浩輔たちがニコニコ笑いながら俺を迎えてくれた。

そんな二人が本当に綺麗で。

俺は、あぁそうなんだと気が付いた。

この二人は特別なんだと。


様子のおかしい俺を気遣ってくれる二人が優しくて。


一緒に帰りながら俺は二人に聞いてみた。


「もしも・・・だけど、俺がいなくなったらどうする?」


「「探し出す!」」


即答だった。


「急に引越し・・・」

「「透流だけでも残るようにする」」

「転校・・・」

「「転校先の学校燃やす」」

「誘拐・・・」

「「犯人殺す」」

「神隠し・・・」

「「神様消す」」

「死んじゃ・・・」

「「生き返らせる」」

「俺が一緒にいたくな・・・」

「「閉じ込める!」」


俺の意思は?


「「絶対誰にも渡さない」」


・・・・・・無いんですね。


「じゃぁさ、世界中が俺の敵だったら?」

「「世界を滅ぼす」」


何かこの二人ならやりそうです。



俺、この二人が大好きだ。

誰がなんと言おうと絶対に離れない。

絶対に離れちゃいけないような気がする・・・・・・・・・



別な意味でも特別だって気が付いた、小3の夕暮れだった。







死ぬ時って過去の出来事が走馬灯のように駆け巡るって言うけど、よりにもよってこのシーンを思い出すってどうなんだろう。


どうせならモーリオンのことをいっぱい思い出したいよ。


最後に聞こえた声、すごく悲しそうだった。

ごめんな、悲しませてごめん。

俺もあんたと離れるのがすごく悲しい。

みんなと会えなくなるのが悲しい。


嫌だ・・・死にたくない・・・死にたくないよ。


――大丈夫だ透流、お前は死なない――


モーリオン?


――大丈夫、ずっと、ずっと、我がお前を守る。だから安心しろ――


モーリオン・・・なんか変だ・・・・・・

血が無くなってあんなに寒かったのに、今はひどく熱いんだ。

契約の時・・・ううん、それ以上に熱い。

熱くて苦しいよ、モーリオン。

細胞の1つ1つにモーリオンがいる。

体中がモーリオンでいっぱいで、作りかえられているようだ。


怖い、怖いよ・・・


――透流、大丈夫だ。我にゆだねろ。大丈夫、大丈夫だ――


うん、うん、モーリオンを信じる。

モーリオン、大好きだよ。


――我もお前が好きだ。透流、愛している。我の全てをお前に・・・・・・――


内側から、外側から、モーリオンに包まれる。



モーリオンに包まれて・・・・・・・・・



あぁ、意識が浮上する。








目を開けたとき、最初に見えたのは青空。

秋の高い高い空が見えた。


体を起こそうとしたけれど、金縛りにあったように動かない。


こんな時はゆっくり意識を全身に行き渡らせればいい。


目を閉じる。

意識を巡らせて体の覚醒を促す。

全身にモーリオンを感じる。

なんだか嬉しい。


ピクリと指先が動いた。

これで自由に動く事ができる。


刺されたお腹を確認。

服は破れてるけど傷も痛みもない。

ゆっくりと起き上がる。

ふらつく頭を軽く振り、辺りを見渡し愕然とした。


消えた森。

焼け焦げた大地。

倒れたまま動かない血まみれの狼の長。


そして、あれは何?


黒い小山がある。


あれは・・・・・・何?


嫌だ・・・嫌だ・・・わかりたくない!


でも、俺はあれが何か知ってる。



モーリオン・・・・・・・・・



「モーリオン!!!」


輝きを失った鱗、閉じられた目。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


俺はモーリオンに取り縋る。


「モーリオン!モーリオン!お願い、目を開けて!!」


俺の中にモーリオンがいるのに・・・何で?どうして?何故鼓動が聞こえないの!?


まさか・・・・・・



――・・・・・・我の全てをお前に・・・・・・――



あの時そう言ってた。


まさか・・・自分の命と引き換えに俺を?


ダメだ、そんなこと、許さない!


どうしたら生き返る?


・・・・・・どうしたらいいかなんて・・・・・・俺は全部知ってる。

俺の中にはモーリオンの全てがある。

モーリオンの命と魔力の全て。

そして、その叡智も・・・・・・・・・


冥府の王になんか渡さない。

モーリオンは俺だけのものだ!


モーリオンの中を探り、ドラゴンの生命の核ともいえる竜珠を探す。

心臓が止まってても、これさえ無事なら何とかなるはずだ。


・・・・・・・・・見つけた。

弱々しい力しか感じないけど、まだ間に合う。


俺の中のモーリオンの命を、魔力を返すんだ。

魔力を帯びた術の構成が展開される。


「蘇れ・・・っ」


俺を包んだ光を伸ばしモーリオンを包み命と魔力を返そうとするけど思うように行かない。


これは・・・拒否?

拒否されてる?

返していらないってこと?


どうしよう、どうしよう、どうしたらいい?


考えろ!考えろ!・・・考えろ!!




「E=mc²・・・・・・」




いきなり浮かんだ式。


質量とエネルギーは等価である・・・ってアインシュタインも言ってた・・・よね?


やってみよう。

こっちの理論が異世界でも通じるかなんてわからない。

通じなくても・・・・・・


ごり押しでやってやる!


術の構成を二重三重と増やし重ね、広げていく。


モーリオンの巨体をエネルギーに変換して、それで俺の中の魔力をコーティング。

うん、無茶苦茶なことやってるとは思うよ。

でも、もうこれしか方法が思い浮かばない。


自分自身をエネルギーにしたものなら受け付けてくれるかもしれない。

だからそれで魔力を隠してわからないようにして戻すんだ。


「絶対に死なせてなんかやらないから!」


一気に術を発動。


どれくらいの魔力を込めたらいいかなんてわからない。

最初っからフルパワーだ。


よし!竜珠と繋がった!いける!


もっと・・・もっと・・・もっと・・・・・・っ!


俺とモーリオンを包む光が強さを増し広がっていくのがわかる。


ヤバイ・・・・・・拙いかも。

なんて言うか・・・・・・・・・・・・・・・暴走?

術を発動しながら俺の背中に嫌な汗が流れる。

マジでなんか色々やばいかも。

でも、今止めるわけには行かない。

意識がぼーってしてきた。

まだダメだ、まだもってくれ、俺の意識!


俺の目の前でモーリオンの体が光になり、俺が送り込むというか際限なく放つ魔力を取り込みつつ収束していく。

その中心は竜珠だ。

もう少し、もう少しだからがんばれ、俺!


でも・・・

あぁ、もうだめだ、目が霞む、力が抜ける・・・・・・

傾いで行く体。


完全に意識を失う寸前。



――透流・・・このバカ者が・・・――



優しい声が聞こえた。



やっとここまできました。

次回はいちゃこらできるかな。

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