第11話 召還した者された者(side朱里)
浩輔&朱里サイドをちょっとだけ進めてみます。
「救世主様・・・・・・」
その女の人?少女?がそう呟いた瞬間、浩輔くんの口角が持ち上がった。
この顔は、何かを企んでいる時の顔。
そして、その企みが何なのか、おおよその見当が付いている私がいる。
ただ付き合いが長いわけじゃない。
私たちは共犯者なんだもの。
この世界についてからずっと感じている透流くんの気配。
遠くにいるのか、それはとても薄いものだけど・・・・・・
絶対に見つけ出すんだから!
女の人は浩輔くんを水色の瞳でうっとりと見上げている。
ふぅ~・・・ん、なるほどね。
浩輔くんのうまぁ~~~く和洋がミックスされた美貌は、日本人には王子様、外国人には神秘的に見えるらしい。
異世界人にもそれは当てはまるみたいね。
「私の言葉がわかりますか?」
浩輔くんだけを熱く見つめて女の人、巫女さんかしら?かなりの美少女だわ・・・が問いかける。
聞いた事がない言葉なんだけど、何故か何を言ってるかわかるのよね。
・・・この分だと話すこともできそう。
それは浩輔くんも同じらしく、
「わかります。僕の話す発音は正しいですか?」
逆に異世界の言葉で問いかけている。
「は、はい。大丈夫です」
「そう・・・それはよかった」
にっこり。
その瞬間、巫女さん・・・だけじゃなく、その後ろに控えていた騎士っぽい女の人まで真っ赤になった。
落ちたな・・・・・・
浩輔くんにはまったくそのつもりはなくても周りの女性を落としまくるそのスキル。
今回はとっても役に立ちそうだわ。
今度は私の口角が持ち上がる。
浩輔くんがこっちを見た。
「なぁに?」
にっこり
「いや・・・・・・なんでもない」
「そう」
あら、日本語はこっちの人には通じないみたい。
不思議そうな顔をしてる。
オープンで内緒話ができそうね。
「救世主様、どうか私たちをお助けくださいませ」
「その救世主様とはいったい何なのですか?僕たちをここに呼んだのはあなたですか?」
「はい。ご説明いたしますのでどうぞこちらへ・・・・・・」
さらりと銀色の真っ直ぐな髪をなびかせて巫女さんが立ち上がると後ろにいた7人が分かれて道を明けた。
右側の3人、真ん中の男の人は20代後半位かな、金色の髪を首のところでひとつに結んだ濃いブルーの垂れ気味の目の艶っぽい顔立ちの・・・豪華な衣装を着ているから王族ってとこかしら。
その両脇にいるのは白い鎧を身に着けた騎士っぽい男女。
男のほうは短く刈り込まれた茶色っぽい髪に茶掛かった緑の瞳の美丈夫で、女のほうはストロベリーブロンドって言うのかしら、長い赤毛を高い位置でポニーテールにしたエメラルドグリーンのきつめの瞳の美女。
左側の4人、いちばん手前にいるのは灰色の短めの髪を綺麗にセットした茶色の瞳のナイスミドル。
眉間のしわが気難しそうね。
濃紺に派手な金の刺繍の長いローブを着てる。
その横の人は今度は白いローブに金の刺繍、同じ意匠のローマ法王とかが被ってるような帽子?を被っているから神官長かも。
すばらしく見事な淡い金の腰まで長い髪を背中の中ほどでゆるく結んだブルーグリーンの瞳の美人な男の人。
観察してる私に気が付いて軽くウインクしてきた。
見た目はいいのに中身はチャラ男?
そのさらに横の二人は・・・他が美形すぎるからものすごく凡庸に見える。
着てる衣装もシンプルな神官風で、そうね、ただのモブってとこかしら。
チャラ男の付き人なのかも。
巫女さんに導かれて神殿を出ると目の前に長い上り階段。
ここって地下だったのね。
でも、この階段・・・長すぎじゃない?
溜息を隠しつつ巫女さんの後について階段を上る。
その途中だった。
いきなり・・・
透流くんの気配が消えた。
「え・・・?」
あわてて全方向に心を研ぎ澄ませるけどまったく感じられない。
浩輔くんを見るとひどく難しい顔をしている。
浩輔くんにも感じられないんだ。
「浩輔くん・・・」
「あぁ、気配が消えた。なんか嫌な予感がする」
「うん・・・」
透流くん・・・どうか無事でいて。
「どうかなさいましたか?」
私たちが急に立ち止まったため訝しげにみんなが見ている。
「あぁ、僕たちと一緒にこの世界に来た友人の事が気になったものですから・・・」
「お二方のほかにも・・・?」
「はい。ここに来る途中ではぐれてしまいました」
「それは・・・・・・心配なことです」
代表で話すことになっているのか、会話をするのは巫女さんだけ。
「とりあえず、落ち着く場所で話しましょう」
私たちは頷くと少し足を速めた巫女さんの後について階段を上っていった。
☆
通された部屋は華美ではないけれど豪華な調度品の応接室のようなところ。
ソファを薦められ座る。
私たちの正面に巫女さんと王様(暫定)とチャラ男・・・じゃなくて神官長。
入り口に男の騎士。
ナイスミドルは一言王様に声をかけ女騎士と一緒に出て行った。
モブ神官はここにくる途中でいなくなった。
「先ほどのご質問に・・・」
「その前に!」
巫女さんが話そうとしたのを遮って浩輔くんが言った。
「僕たちの友人を捜していただきたい」
うん、それが一番先よね。
「僕たちを無理やりこちらに召還したのはあなた方だ。その過程で僕たちは大切な友人と離れ離れになってしまった。これはあのような無茶な方法をとったあなた方に責任がある。何のために呼ばれたのかはわかりませんが助けが必要というなら僕たちのできる範囲でお手伝いします。ただし!すぐにでも僕たちの友人を捜していただきたい」
きっぱりと言い放つ浩輔くんに3人は驚いた表情をしていたけど、
「確かにそうだな、責任は私たちにある」
王様が頷いた。
「すぐにでも捜索隊を派遣しよう。一緒に召還されたのならはぐれたとしても国内にいる可能性がある。友人の容姿を教えて欲しい」
王様は入り口に立つ美丈夫の騎士を視線で呼んだ。
「友人の名は透流といい、男です」
浩輔くんは透流くんの容姿を説明し始めた。
「身長は・・・」
立ち上がり透流くんの背を示す。
「これくらいで黒髪、黒い瞳をしています」
浩輔くんがそう言った時、4人はそれぞれ違う反応をした。
王様はひどく驚き、神官長は驚きはしたが興味深そうに瞳を輝かせ、騎士は眉を顰め、巫女さんは・・・嫌悪感をあらわにした。
どういうこと?
黒髪とか黒い目って・・・何かあるの?
浩輔くんは剣呑な表情をし
「捜して・・・いただけますか?」
いつもより低い声で言い、3人を見た。
王様は大きく息をつき、
「もちろんだ、すぐに捜索隊を派遣しよう」
しっかりと頷いてくれたけど、巫女さんの反応が気になる。
なんだかすごく嫌な感じ。
騎士の反応は微妙だったけど、王様と神官長も驚いていたし・・・・・・・・・
「本当に捜していただけますか?」
私は王様をじっと見据えて聞いた。
「今、その人は透流くんの髪の色や瞳の色を聞いたとき嫌悪しました。お二人もひどく驚かれていました。黒髪黒い瞳はそれほど嫌なものなのでしょうか?そんな色を持つ透流くんを本当に捜していただけますか?」
王様は私を見返して
「責任は果たさなければいけない」
頷いた。
「確かに黒は忌み色であり、魔に通じるものとされ忌避されている。しかし、あなた方を召還した責任は我々にある。捜索隊には厳選したものを当てよう」
王様の目をじっと見る。
浩輔くんも王様を見ている。
王様は、もう一回しっかりと頷いた。
私たちは立ち上がり、
「「宜しくお願いいたします」」
深々と頭を下げた。
黒さがあまり出なかった!
それよりも問題は、一気に増えたキャラの名前です。
ファンタジーな名前って、皆さんどうやってつけてるんだろう・・・・・・