第1話 穴に落ちたら・・・
素人が書くお話です。
文章等、お見苦しい点もございますがご容赦をお願いいたします。
この状況は普通なら「ピーンチ!」というものなのだろうけど・・・・・・
『普通じゃありえないモノ』を前にして俺の心は高揚していた。
☆
俺の名前は西島透流。
平凡な家庭に生まれ、平凡な日常の中で平凡に育ち今に至る。
どちらかと言えばアウトドア派だけど本は別腹、ラノベから政治経済まで面白ければ何でも読む。
大型爬虫類をこよなく愛する(コモドドラゴンは俺の嫁)どこにでもいる普通の高校生が俺だ。
唯一平凡じゃなかったのが・・・幼馴染×2。
幼馴染其の1の名前は高垣浩輔。
祖父が元代議士の地元資産家に生まれ、頭脳明晰、スポーツ万能、オマケに超が付くイケメン。
何代か前に外国人の血が混じっているらしくサラッサラの茶髪に茶色の目、身長も180超えだようらやましい。
街を歩けば大半の女が振り返り見惚れるというモテ街道を闊歩する・・・が、何故か彼女いない暦=年齢という俺からして見れば謎な同級生。
でも親友。
幼馴染其の2の名前は箕輪朱里。
祖母が英国人と言うだけで普通の家庭に生まれたが、幼い頃から半端無いほどの美少女で、中2の頃まで雑誌やCMのモデルをしていた。
アイドルとしてのデビューも決まってたらしいけど中3になり何故か「私、普通の女の子になる!」と宣言し周囲の反対を押し切りすっぱりモデル活動をやめた。
ちょっとウェーブのかかった茶色の髪にブルーグレーの瞳、日焼け痕やシミなんかひとつも無い肌にピンクの唇の右下の小さなホクロが色っぽいかもしれない超美少女な同級生。
超イケメンと超美少女に挟まれた俺は幼い頃から虐められっ子だった。・・・ようだ。
引き立て役だとか邪魔者だとか周りのヤツらに散々言われてきたけれど、ンなことは幼少時に自覚しまくり。
もはや俺の中での常識よ?
子供の頃の容赦ない虐めも今現在の嫌味や陰口もスルーするスキルはばっちり。
よくもまぁ変な方向に曲がらずまっすぐ育ったもんだと自画自賛。
俺ってすごくね?
☆
その日もいつもと同じ日常だった。
放課後、一部の男子や大半の女子の冷たい視線を華麗にスルーしつつのんびりと教室を出ると浩輔と朱里が連れ立って廊下で待っていた。
この二人、付き合ってる事になっている。
お似合いのカップルだと校内新聞で取り上げられたりしてるけど、実際は利害関係。
告られたりするのがウザイってことで周りを牽制する為に恋人同士を『演じて』いる。
付き合うと決めた時、二人は俺ん家に来た。
「付き合うと言っても嘘っこなんだからね!」
朱里がにじり寄って俺の右手を取った。
「偽装だ偽装!だからお前とは今まで通りだからな!」
浩輔ががっしりと左手を握った。
「私たちが二人でいても今まで通りに話しかけてきてね」
朱里がうるうると至近距離で見上げてきた。
「今まで通りに一緒に遊ぶんだぞ?」
浩輔が真剣な目で見つめてきた。
「あくまでも嘘っこだから遠慮なんてしないでね?」
いや、朱里、顔近いって!
「遠慮なんかしたら・・・・・・わかるだろう?」
浩輔、流し目でそんなこと言われてもわからないって!
「「透流!」」
二人の剣幕に俺は朱里からもらった恐竜のぬいぐるみを抱きしめコクコクと頷くことしかできなかった。
何故かはわからないがこの二人、俺に執着している様に感じる。
喧嘩しても先に謝ってくるし、俺がこいつらを邪険にしようものなら・・・・・・泣く。
浩輔に泣かれた時には流石の俺もドン引きだった・・・・・・
あれこれ思い出しながらぼ~っと二人を見上げて(ここんとこ重要、朱里も俺より若干背が高い・・・ちょっと悔しい)いたら
「一緒に帰ろう、本屋さん行くんでしょ?」
「ついでにマックによろう、奢るぞ」
俺の両横に並んだ。
あぁ、ギャラリーの視線が突き刺さる。
ダメージは皆無だが。
3人で他愛も無い会話をしながら帰宅する日常にぽっかり開いた落とし穴。
そう、まさしく落とし穴だった。
本屋とマックによりついつい時間が過ぎてしまった夕闇迫る住宅街を3人で歩く。
浩輔の笑えるのか笑えないのかよくわからない冗談に苦笑しつつ下げた視線の先、俺のすぐ足元にぐるぐる渦巻く黒い?白い?穴。
踏み出そうとした足を降ろす前に止める。
いきなり動かなくなった俺を不思議そうに、訝しげに見た二人がそのまま視線を俺と同じように下げて穴を見る。
俺は足を戻し、穴を見る。
きっと眉間に皺がよってることだろう。
「何だこれ?」
浩輔が言葉を発した瞬間、穴は俺の足の下まで広がった。
「え?」
一瞬の浮遊感。
「「透流!」」
両脇から腕を取られて中に浮く。
朱里に負担はかけられないから朱里から腕を放して、とりあえず、でも必死に浩輔の腕にすがる。
「なんなんだよこれ!」
穴からの吸引力?が半端無い。
やばい、このままじゃ浩輔を巻き込む!
そう思い俺は浩輔の腕を放したんだけれど・・・がっしり浩輔に掴まれた。
朱里も俺の手を掴んで引っ張っている。
「放せ!」
「だめだ!」
「いやよ!透流が落ちちゃう!」
二人が思いっきり俺を引っ張りあげようとした時、穴がさらに広がった。
「「「え?」」」
俺たちは揃って穴に落ちたのだった。
☆
真っ暗な穴の中をどこまでも落ちて行く。
唸りをあげる風に翻弄され繋いだ手が離れそうだ。
すでに朱里の手は俺から離れ、浩輔に抱き留められている。
くそっ!どこまで落ちるんだよ!
息が詰まりそうな風の中、空いている腕で風を遮りつつ見回すと、俺の下方で落ちてゆく二人の先、遠くに光の点が見えた。
浩輔たちもその光に気がついたようだ。
ただの点であった光が広がりを見せた瞬間、風の流れが変わった。
渦巻く風に、ついに俺と浩輔の手が離れてしまう。
「透流!」
浩輔が、朱里が、俺に手を伸ばすが届かない。
二人との距離が離れて行く。
「浩輔!朱里!」
ちきしょう!届かねぇ!
パニックを起こし暴れる朱里を浩輔が抱きしめるのが見えた。
大丈夫、大丈夫だ。
浩輔がいるから朱里は大丈夫だ。
俺だって、絶対・・・とは言えないけどきっと大丈夫だ!
だから朱里、安心しろ。
泣きながら手を伸ばす朱里に、浩輔に、俺は精一杯笑いかけた。
「朱里、大丈夫だからな。浩輔、朱里を頼んだぞ?」
光はさらに広がり、流れを変えた風に落下速度が落ちる。
広がり光度を上げた光が浩輔と朱里を、次いで俺を包む。
そして・・・・・・・・・
投げ出されるように開放された。
☆
打ちつけた右肩が痛い。
俺は体を丸めるようにして痛みを逃す。
他に痛むところは?骨は折れてないか?
検索するが、右肩以外はそれほどの痛みを感じない。
痛む右肩も、骨には異常がないようだ。
大きく息をつき体を起こす。
ここは何処だ?
最後の強烈な光で目がチカチカして周りが確認できない。
突いた掌に感じるのは・・・・・・乾いた土?
そして・・・嗅いだ事の無い臭いと・・・大きな圧迫感。
いや、これは何かの気配・・・?
やばい・・・やばい気がする・・・・・・
俯いたまま何度か強く瞬きを繰り返していると徐々に視力が回復してきた。
まだチカチカは残っているけど何とか見える。
俺はそろそろと大きな気配がする方へ顔をあげ、固まった。
そして、冒頭へと戻る。
俺の目の前の・・・これは何だ?
いや、俺はこれを知っているかもしれない。
記憶に知識にあるモノの中に当てはめればだけど、知っている。
真珠色の光沢の黒い鱗を持ち金色の目で俺を見ているこの巨大なモノ・・・いや、生物は・・・・・・・・・
ドラゴン。
誤字脱字がございましたらお知らせください。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
4/12 副題付けてみた。