もっと悪くなってやる(改訂版)
むかしむかし、日本の何処か、山奥に、いろんな動物たちが仲良く暮らす、「動物村」がありました。
が、どの集団にも必ずと言っていいほど、意地の悪いものがいます。この動物村だって、例外ではありません。
自分より弱い動物たちをいじめることを毎日の娯楽にしてる性根の腐ったオオカミがいます。
ある日、流石にそのことに嫌気がオオカミにいじめられている動物たちが、 月に一度開かれる動物村会議でそのことを取り上げました。
しかしオオカミは性質の悪いことに、自分より弱い動物たちには、傲慢に振る舞いますが、自分より強い動物たちには、犬のように従順なので、動物村のお偉いさんたちには、とても気に入られています。
動物村会議で、村長のサルは言いました。「オオカミだって根は悪いやつじゃない」と。
副村長の獅子もこう言いました。「非暴力、非服従が大事だ。誰かがあなたの右の頬をぶつのなら左の頬も差し出しなさい」と。
もう一人の副村長のゾウも続けてこう言いました。「怨みは怨みによっては静まらず、怨みを捨ててこそ消える。だからオオカミを怨まず、もっと優しくしてやろう」
もちろん、オオカミにいじめられてる動物たちは抗議して言いました。「罪を許して、罰しないということは、悪を看過する。見て見ぬ振りをする。もう一度悪いことをしてもいいという許可を与えてるのと同義じゃありませんか?」と。
しかし、会議の結果は、「オオカミにもっと優しくしてやる。そうすればオオカミだって改心をして、善い動物に生まれ変わるだろう」と。
会議の様子を木陰でこっそりと聞いていたオオカミは、にんまりと笑って、心の中で叫びました。「悪いことをすれば、もっと優しくしてもらえるのか!なら、もっと悪くなってやる!」
翌日からオオカミのいじめは日に日にエスカレートしていきました。
もう我慢の限界だ。と、思ったオオカミにいじめられてる動物たちは、翌日の動物村会議で、再びオオカミの件を取り上げました。
その結果は、オオカミを動物村から追放しようというものでした。
翌日、動物村の兵士たちに身体を引きずられて、村から追放されるオオカミは、その間際にこう叫びました。「おれは悪いことをしてないのに、差別をされて、動物村からも追放される。なら、もっと悪くなってやる!」と。