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魔王就任 【討伐編】  作者: 市太郎
終わりよければ
22/31

魔王様と討伐隊 □ 21

 お嬢さん方保護奪回を迎えた当日。

 軍人組とは微調整を兼ねて話し合い、ラズアルさんを通して、リオークア国側との認識合わせも済ませた。

 神官組に関しては、私の一任に任せるというのも納得済である。

 軟禁してある神官組は、勝手に自害とかされないように対処もしてあるし、お仕置きかねて情報は一切与えてはいない。

 私は、状況にも寄るけど基本、死刑には反対寄りである。

 なんでかって?

 死んで楽になろうなんて、そうは問屋が卸すもんかって思うから。

 死刑制度自体は有だと思っているけど、その辺りの賛否両論に関しては人それぞれ。

 唯、この世界では割と平気で死を覚悟しちゃう人が多いのも確か。

 事情は異なるけど、神官組も軍人組もその辺りは同じなのよね。

 でもさ? スナイさん達の勝手な行動で、助かるはずのお嬢さん達が、むざむざ犠牲になるのっておかしいと思う。

 それで、スナイさん達が自害でもしちゃって、後はお任せって卑怯なんでないかな、と私は思うのね。

 これって私個人の感情な訳だけど、何せ私ってば魔界の王様ですから!

 この魔界では、私の感情が正義でありますから!

 頑張るよ! 突き進むよ、独裁者!

 そんな訳で、スナイさん達には自害出来ない上に、外の事情も分からないまま軟禁しております。

 ウチの大公達泣かせた罪と、私を窮地に追いやった罪だ。

 篤と不安に苛まれているが良い。

 あ、ご飯はちゃんと上げてますから。

 とラズアルさんに報告しておいたら驚いていた。


 軍人組との調整は済んだのだけど、ちょっと大公達と私で揉めました。

 儀式というのがどんなもんかという好奇心もあったし、名台詞でも事件は現場でって言うじゃない?

 現場に行ってみたいと言ったら、大公達全員から猛反対されてしまいました。

「魔王様自ら赴くような事ではございません。又、魔王様が赴かれるに相応しい場所でもございません」

 断固成りませんと強気なイシュの言葉に、唇を尖らせて不満を見せる私。

「なぜ、態々魔王様自らが赴かれる必要がありますか」

「魔王様の手を煩わせる事無く、俺が一纏めで食えば済む話でしょう」

 イシュに続いてサナリとシャイアが反論してくるが、シャイアの意見は即答で却下しておく。

「妾も、魔王様には人間共の醜悪さをお見せしとうはござりませぬなぁ。魔王様の愛くるしいお目が穢れてしまいます故」

 愛くるしいは置いておくとして、無粋な物を見せたくないという大公達の気持ちは何となく分かった。

「でも、行ってみたいし。見てみたい。私、魔王だし。世間の情勢を知るとか、社会見学って必要だと思うのねっ。大体、世間知らず過ぎると思うのよ、私がっ。だから、スナイさんに対しても油断していた訳だし。人間達に対して甘過ぎるって思うなら、辛くすべきだと思わせる状況ってのを見せておくべきだと思うんですけど? 違うっ?!」

 拳を振り翳し力説する私に、イシュがちょっと怯んだ。

 けど、直ぐ立ち直った。

「ならば、ワタクシがお供仕ります」

「却下!」

 何で、本家本元を連れて行って阿呆共を喜ばせにゃならんのよ。

 ならば、と続くサナリとシャイアも、絶対食いそうだから却下。

 どちらにしても大公の誰かを連れて行かなければ納得しそうに無いので、ビシリとガルマに行儀悪く指を指して勅命。

「連れて行くなら、ガルマにする」

「確と心得ましてございます」

 膝を折って優美に私へお辞儀した後、他の大公等へは勝ち誇った眼差しを向けて、挑発するのは止めるべきだと思う。

 そんなごたごたを遣り過ごし、夜を迎えたのであった。


 用意させた十二分な広さを持つ部屋は温めてあり、魔界に住む人間の女性とケネアイラさんにリーデアルさんが既に待機している。

 私の侍女も少し離れた場所で、いつでも手伝えるようにスタンバってくれている。

 隣の部屋には軍人組の男性陣と、ウチの居残り組である大公達だ。

 今回の召喚で赴くのは、こちらも女性の姿をしている淫魔族の侯爵家の人達が五人。

 侍女のリリアーレの父親であるステアーナ侯爵も、柔らかな雰囲気の美人に化けている。

 胸の谷間が艶めかしいローブ・デコルテなドレスだというのに、濃いクリーム色と白い肌、穏やかな風貌と相まって、淑やかそうでチラリズムな妖艶といった雰囲気を醸し出している。

 女装じゃないんだよ? 本当に女の体してんだよ?格好良いお父さんなはずなのに、素敵な美青年だったというのに、腰の括れとかヒップの丸みとか、肩のなだらかさとかさ、淫魔族恐るべしってヤツですよ。

 人間だった頃の私よりも、怪しからん有様の胸を羨ましく見つめていたら、ガルマに抱き上げられた。

「魔王様。そのような瞳で侯爵殿を見つめておられては、折角の装いが剥がれてしまいますぇ?」

「だって、綺麗なんだもの」

 顎先を軽く摘まれ、ガルマに目を向けさせられながら答える視界の隅で、誉め言葉を受けたステアーナ侯爵が、少々頬を上気させながらも優美に膝を折っているのが見えた。


 そんなガルマの本日の装いは、デザインはチャイナドレスっぽく、ガルマの瞳の色と同じ濃い青で、左右に深いスリットが入っている。

 白い素肌を露にしているかと思う位、薄く網目の細かい白いレースの蛇が、仙骨の辺りから背骨を這い上がり、右肩を通って鎖骨から胸の膨らむ所で左右に大きくうねり、巨乳な谷間へ頭の先が埋まっている。

 こっちはこっちで、やはり怪しからん訳でして。

 蛇の頭を模した透かしから見える谷間を見ると、何かしら挟み込みたくなる気分に駆られる。

「妾を妬かせるおつもりであらば、お止めは致しませぬがのぅ……あぁ、召喚が始まるようでございますなぁ」

 ガルマの言葉に軽く頷いた侯爵達は、人間界からの喚び掛けに応える為、扉となる陣が浮き上がる。

 床に薄く浮き上がる陣は光を帯びていて、其々の種族で使用されている言語の文字とは異なる文様をしていた。

 術で使用される文字は、また独特な物であるらしい。

 分散された光のように、プリズム色の輝きが一層増して室内を明るく照らし、その眩さは思わず目を細める程だ。

 やがて光の出力が抑えられ、残るは控えめに輝く召喚の陣。

「扉が開きました。参ります」

 ステアーナ侯爵が静かに告げ、それを合図にお嬢さん達を保護する侯爵達が、同時に陣の上に乗ると瞬く間に消えてしまった。

「では、妾達も参りましょうかぇ……後は任す故に、魔王様の意に沿うよう篤務めよ」

 魔族組に告げると、私を片腕に座らせているガルマも、侯爵達に続いて陣の上に乗ったのである。

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