#1 線路みたいに。
久しぶりに描きました。
今公開している本編中ではちょっとばかり未来のお話です。
これから書こうとする間を埋めてないので説明をつけられないかもしれませんが、何卒お願いします。
ガタンと音が弾ける。
きっと今日乗るのはこの列車だ。
高架の上に見える。
「ここでいいのですか、先輩」
「うん、そこでお願いします。」
…
「ありがとうございました。」
「いえいえ、先輩のためだったら。」
そういって、彼はバイクを走らせた。
まだ夜も明けない、青色も混じらない、ただの黒。
いや、まだパレットを洗うような、どうしようもないような日の色だ。
今日使う切符は…。
まあ、安くいろんなところにいける切符。
…ゆっくり旅をしたいからって、シーズンで買ったのをもらった。
えーっと、たしかレフィアさん。
…そんな物思いにふけながら、改札に。
「あの…」
「どうされました?」
「切符お願いします…」
少し緊張する。自分を隠さなきゃいけないから。
「では。良い旅を。」
「あ、ありがとうございます。」
顔も見えない私に、隠すためにうつむくような私に、そっと声をかけてくれたみたいだ。
…改札内。
ぽつんと自販機と椅子があるほどの駅。
あと10分後に発車するのが今日の一番列車。
まるで夜を乗せて走るみたいな名前。
きっとまだ誰もいない。
とりあえず、水買わないと…。
カラカラン。
あ、落ちた。
ころろろろ…
ああああ…
「さいあく…落とした…。」
時間があるから…まだ…。
んー、っ。
重っ…自分が…。太っちゃったのかな…。
そして見えないくらい遠くに行ったみたい。
取れなくもないけど
…うーん。
手を伸ばす。
時折私を隠すパーカーの長さが足りなくなって、金色が見える程度には手を伸ばした。
…んー、んぐ…。はぁっ…。
なかなかあと一歩で届かない…。
まあ、買えればいいし仕方ないのかな…。
ちょっと不安になってきた。
まって、時間。
時計に目を向ける。
未だにデジタル化されてないようなそれの秒針は重く、一秒を刻んで―
やばっ、あと5分…かわなきゃ
あ、あああっ…えっと。
あった 財布!
ちゃりちゃり
お水でいいや。
ガタッ。
白く透明なボトルに透けるような色が見えた。
…。
すたっ…すた…すた、すたっ
早く、早くっ。
はぁ…やっぱり急ぐと息が…。
まあ、間に合うと思うけど…。
ふー、ここがホームですか…。
まだ暗い。
それにそっと目を向けると
わっ、まぶし…。
それのヘッドはまるで深海探査みたいな、変な明るさだった。夜を裂くような、強い光。
…はぁ…びっくりした…。
…失礼します。
ぼそっと、誰も聞いていないであろうから声を上げた。
きっとこの子もずっと暗闇を見て、それを明るく、裂いたんだ。
車内はなんかよくあるローカル線っぽい感じ…。
昔テレビで見たような…。
誰もいない。4両もあればそうなのかも。
とりあえず、この向い合せのところ座ろう…。
にしてもこれ、変ですね…。
なんというかここと、あそこだけ向かい合わせなの…。
なんか、取っ手ある…。
がちこん…。
あ、動いた。
…へぇ…おもしろいです。
こんなのあったんですか…。
前向きみたいになって、向い合せじゃなくなってる。
まあ、いっか。
そういえば、この荷物どうしよ…。
リュック。
今回は終点で乗り換えるから、金網に上げないと…。
んむーっ!
届かない…。本当に届かない…。
もう一回…
んむーっ。
はぁ…はぁ…。
届かない…です。
いやまあ、上げないとだめですから…。
よしっ。
ひょいっ。
どすっ。
へへん、投げたら無事に乗りました…。ま、なんか紐ぶら下がってるし…大丈夫でしょう…。
プルルルルルルルルルルルルルルル…
早いものです…ね。
まるで夜明けみたいな声を出すかのように、ベルが鳴った。
この言葉が出てくるまでにはとっくに終わるほど、短い夜明けの音だった。
…ふー。
まだ星が起きているような、冬。
ちょっと効いてる暖房が私を眠気にまた誘おうとする。
窓に目を向けると、ただただ暗い。これはまるで夜行列車みたいに。
悠長にガタンゴトンが繰り返される。きっとあんまり使われないのか…
それとも、長く…誰かに、愛されたんですかね。
わからない。
でも、それはただただ楽しいもの。
その愛されたものは、きょうも愛されるために…って感じですかね。
窓は、ただただ暗い…。
それでも歩みが、続くように。
せっかくの高架の景色も、まだ闇の中。
私は、考える。
私が人だったころは、この時間はまだ空が青かったのかな。
おてんとさんも、もっと早く起きてたのかな。
でも、今の私は、天の下にいることができない。
醜い黄金に、金属に染まってしまったから。
…どうして、どうしてなのですか。
小銭が落ちたような音もセミみたいに蘇る。
あれが、なんで私の足音になったの。
昔は、もっと
もっと。
人間だったはずなのに。
…ごめんなさい。お母さん、お父さん。
せっかくの自由を楽しめなくて。
誰にも、見せられない、恥ずかしい子になって。
…暗闇にいると、まるでそんな…悲しさがこみ上げてくる。
私は、けたたましいような軌道の音に、どうか、私でいさせてほしいって声が出る。
でも…私は、誰かの道にはなれない。
ねえ、答えてよ。答えて。
もし、人じゃなくてもこうやって誰かに愛してもらっって助けることができる。
どうしたら、そうなれるか、教えてよ。
息がはぁ…はぁ…と
音のない、ただ車両の音にそれは見えない。
見えないほうが嬉しいけど。
そうだ、せっかくなんだ。
窓を見よう。
窓の奥を。
ほら、泣き止んで。
よく、見えない。暗くて。まるで絵の具みたいに、混じって。
もう一度。
目を、。
手を、目に当てて。
ほら、隠してたものはもうない。
…
そこには、赤い赤い
日が夜の暗い青とまじり始めていた。
周りには、ただただ田園が広がる。
それが、ただただ…きれい。
…。
よかった。少しばかり、なんとか…嬉しい。
まるで、黒が裂けたようなのが。
もう30分も経ったらしい。
変わらない景色が、どんどんと色を変えていく。
私のいなかった世界を照らすように。
どうか、私のお母さんも…同じ景色を観ていたらいいのに。
次はー、次はー
聞こえていなかった。今聞こえた。
水…美味しいです…。
ところで、次の駅…。
そう思ったら止まった。
ええええ…。
なんか、すごく沢山の人が乗り込んできた。
あっというまに、埋まってしまった。
なんというか、私より身長の大きいお姉さん…達…
というか、学生…が、私の席に座った。
早いものですね…。
なんか、話してる。
…かわいいもの。 について…。
なんというか、色々見せてる。
私はただ景色だけをみる。
そのきれいな景色の価値は、私とあの人達で違うんだろうか。
ふと言葉になった。
私も、この景色の価値を当たり前だと思えるようだったら…良かったのかな。
こーゆーのって、話したらいいんですかね…。
少し悩む。
もう12駅も過ぎた頃…かな。
でも、どうしても知りたい。
例え、その価値がわからないようになれなくても。
「あの…すみません。 楽しそうな話ですね。」
恥ずかしくて、ボソッと、声が出た。
私の、弱い声。
あ…あの、驚かせたらごめんなさい…。
「どうしたの…?」
あいては、キョトンとしてる。
やっぱり、驚かせてしまったのかな…。
ご、ごめんなさい…気に障りましたか…。すみません…。
ちょっと、気になったんです…。
ああああああああ…変なことしてしまいました…。
あああああ…。
「そう、知らないの…?」
「え、えええ…はい…ちょっと世間知らずで…。」
声が漏れる。
「そんな気にしなくていいって。」
なんか、勝手に話が進んでる…。
「私も、可愛いのが好きなんですよ…。」
なんで、声が出ちゃ…。
「そっか、じゃあ…聞いてていいよ…もちろん、話しても。」
「あ、ありがとうございます。」
景色なんかも、変わっていく。
もうすっかり青くなってる。
「ーで〜」
そんな話をするような感じに
だんだんと景色も変わっていった。
話は尽きないような、続いていく。
けれどみ
「じゃあ、次で降りるよ。」
「わ、わかりました…ありがとうございました。 お話し…加えてくれて。」
「お名前、聞かせて。」
「わ、私は…麗庶飽希です。」
「ここらへんでは、あんまり聞かない名前だねぇ」
「はい、ちょっと遠くから今日来てるので…皆さんも、頑張ってください…」
本当は本名は言ってはいけない約束なんです
でも、どうしても言いたくなってしまった。
そんな思いも発車メロディに変わり、扉が閉まる。
…もう23駅くらい…?
次で乗かえ。
気がつけば空もだんだんとビルの高さに染まる。すっかりそこそこ都会みたい。
次は終点〜
ああ、これがこの車両との今の最後なのか。
次乗れるかはわからないけど。ありがとうございました…。
あ、そういえば金網に荷物が…。
んーっ、よいしょ。
どさぁ。。
よし、これで取れた…。
そう言ってるうちに、扉が開く。
おわかれしなくちゃ。
そう、私はただ前に
少しだけお辞儀をしながらホームを踏みしめた。
なんか、ありがとうって聞こえた気がする。きっと、気のせいかもしれないけど。
すると、もう回送らしくて、ホームから少し歩くうちに、発車してしまった。
少しだけ、足音が人間っぽく思えた。
ふーっ。
ここで乗り換えっと。
人の群れというべきなのか、人が多い。
次の車両は座れないかも。
結構大きいみたいで、なんというかお店もある。
改札内の割に広くて…。
…弁当買っちゃおうかな。
別にいつ食べられるわけじゃないけど…まあ、最悪お土産でもいいし。
とことこ
すっごい…多いです…。
弁当がこれでもかとズラーッと並んでる。
弁当意外にも、おにぎりとかお惣菜とか。
ここまだ改札内なのに…。
ぬーん、匂いがいいです…本当に美味しいご飯のにおい…これだけでいっぱいおなかすいちゃう…。
シウマイ弁当とか…。
サンプルだけど…ツヤツヤしてる。
本当に、美味しそう…。
色々目移りしそう…全部一回は食べたいです…。
焼売も絶対に美味しいですけど、そぼろも捨てられません…。
本当に見てみると美味しそうな匂いが、お肉が本当に…じゅわぁーってなってるってよりかは…って感じなのがそぼろ。
それに宙に浮くような、ほわほわ卵が合わさったときの…お口は
もう本当に、宇宙みたいで経験したことがないくらい美味しいんですよ!
はああうっ
もしかして…声出ちゃいましたか?!
いや、でてない…よかった。
でも、そぼろは本当に美味しいんですけど、在来線の旅ってことを考えなきゃ。
そう、こぼれちゃうんです…。
それだと後々大変だろうし…。
シウマイにしようかなぁ…。
ん…この匂いは…。
牛丼の匂いです…。
見てみましょう…。
はうあああっ!?
何なのですかこの牛丼弁当…
こんなにシンプルなのに、もう匂いから伝わる美味しさ。
もう舌の上が高鳴っちゃうような…そんな匂い…あああああっ!
もう、買っちゃおう!!!!
こんなに美味しそうなの…久しぶりです。
しかも、卵もある…。ほわほわ卵はここでも食べれるし…。
あと、なんかもう少し欲しいですね…。
そうだ、お惣菜も少し買おうかな
…
ここのお惣菜も色々ありますね。
とんかつで良いかな…。
合わないなんてないんですよ!
美味しいんですから
でも、他のも〜
…
いっぱい買っちゃった…弁当だけでいいけど、とんかつやかき揚げ、挙げ句にねぎままで買っちゃった…。
しかも、シウマイ弁当まで…なんか手元に…。
2840円…
買いすぎちゃった…。
だって美味しいんだもん、いや…食べてないけど。
でも私が美味しいって思えそうなものですもん。
少し考える。なんというか、自分は裕福になったのかな
…人殺しという罵声。
事実なんだから受け止めなきゃいけない。
…そのお金で私は美味しいものを食べる。
ちょっと暗くなってしまう。
昔は、戦争とかで貧しくてこんなの食べれなかった。そのもっと昔はいっぱい食べてたけど…。
いいのかな。良くないかもしれないけど。
でも、今日は忘れさせて。
少しだけ昔の自分が見えたんだ。誰かと他愛もない話ができるような…私が。