仲間の募集
冒険者ギルドでは、仲間の募集もできる。
ソロ冒険者はすぐ死ぬことが多いので、ギルドも複数人でパーティを組むことを推奨している。
当然、出会いの機会も提供してくれている。
仲間を募集しているパーティ側と、パーティ参加希望者の双方が利用可能だ。
募集方法は条件を記入して、専用の掲示板に張り紙を張り、応募者を待つ。
イーステッドの冒険者ギルドの受付施設は、この壁外地区と壁内にそれぞれある。
その二か所で、仲間の募集が可能だ。
募集に掛かる費用は、二か所分の紙の代金が銀貨二枚。
ギルドに支払う、事務手数料が銀貨二枚。
掲示板に募集要項を書いた紙を一週間張り出しておくのに、銅貨二十枚が必要になる。
俺もやってみたくなったので、受付で代金を払い募集要項を記入して、パーティメンバー募集の張り紙を張って貰う。
受付の中年女の態度が、やたらと悪かったが――
まあ、気にしないでおこう。
募集内容は――
冒険者メンバー募集
パーティ名 白銀の竜の翼
ギルドランク アイアンランク
採用条件
・メンバーは女性限定。
・リーダーの性奴隷になる覚悟があり、同意できる者に限る。
以上。
アカネルとモミジリとイルギットが、バカを見る目で俺を見ている。
レイレルは、なんと言えばいいのかわからない表情で、俺に苦言を呈してくる。
「この条件だと、……その、応募者はいないと思うわ。もっとこう――」
「いないなら、いないでいいんだよ。このパーティがどういう集まりかを知らせるのが目的だからな。これから名を上げれば、入れてくれって奴が寄ってくるだろう? そういう奴の相手を、いちいちせずに済む」
メンバーに入れたくなるような女は、あらかじめ覚悟して来るだろう。
一石二鳥だ。
それに案外、募集に応じる奴がいるかもしれない。
とりあえず、これでやってみる。
その後でスラ太郎と、小鬼族の集落で貰ったウォー・ウルフの子供の従魔、ウル助とウル坊の従魔登録をしておくことにした。
従魔は冒険者ギルドなどの行政機関で登録し、従魔カードを作っておける。
だが、登録してあるからと言って、壁内に連れて行けるとは限らない。
街にもよるが、大抵の場合は断られるそうだ。
貴族の従魔とかだと話は違ってくるそうだが、平民の従魔だとほぼ無理だそうだ。
まあ、従魔とは言え魔物だからな――
治安の観点から見れば、当然と言えば当然の処置だ。
というわけで、従魔登録にメリットらしきメリットが無いので、今までしてこなかったが――
臨時収入が結構入ったので、取り敢えず登録しておこうという事になった。
従魔登録に、三匹で金貨三枚がかかった。
まあ、大した出費ではない。
冒険者ギルドから出て、次は買い物をする。
テントや生活用品を揃えていく。
馬車も手に入ったことだし、荷物を増やしても問題は無い。
馬車の荷台をテント代わりに使うこともできるが、人員を増やすことを考えるとテントは必要だろう。大きめのを買うことにした。
十人用のテントと日用品、塩や湖沼などの調味料に、茶葉などの嗜好品。
食料品は山賊から奪った麦がまだあるが、追加で購入。
保存食は多めに持っておきたい。
パン屋を見かけたので、パンを買ってそれを麦より先に食べる。
肉は魔物を狩って食べればいいので、買う必要はない。
野菜や果物は、適当に購入しておく。
それ以外にも、馬用の干し草が売られていたので、買って与えてみる。
馬は勝手に飲み食いしているが、いい食事をさせた方が長持ちするだろう。
一通りやることを済ませた俺たちは、壁外地区の北を目指す。
たぶん応募者は無いと思うが、一週間後に仲間募集の張り紙の結果が出る。
その待ち時間に戦闘訓練もかねて、イーステッドの第一領域で魔物狩りをしようという事になった。
というわけで、俺たちは壁外地区の北方面に来ている。
イーステッドの壁外地区経験者のレイレルに聞いたところ、家出してきたような初心者冒険者は、教会の世話になることが多い。
似たような境遇の奴が、寄り集まって共同生活をする。
俺たちは初心者だが、金があるので独自に動ける。
拠点を決めて、野宿しながら魔物を狩る。
まずは冒険者ギルドの系列の不動産屋に、野宿用のスペースをレンタルで借りる。
俺たちが借りたのは、コの字に建てられた壁とその中のスペースだ。
魔物の襲撃に備えて、同じような壁が壁外地区の外周には沢山ある。
そこをキャンプスペースとして、不動産屋が貸し出しているわけだ。
ここなら馬車ごと泊まれるし、魔物を狩りに行くのにも便利だ。
規模の大きいパーティだと、宿とは別に借りることもあるらしい。
料金は一か月で、銀貨五枚。
駐車スペースを、月五千円で借りるようなものだ。
魔物の解体や焚火や料理など、好きに使っていいそうだ。
魔物や犯罪者が出る危険も高いので、寝るときは見張りを立てるように言われた。
水はギルド所有の井戸から、有料で汲んでくることが出来る。
特に割引は無いので、他で買いたければ好きにすればいいと言っていた。
俺は自分のスキルで出せるから、水には困らない。
俺たちは借りたスペースに馬車を止めて、周囲の確認作業をする。
壁は対魔物用の防壁として作られているだけあって分厚く、頑丈にできている。
風よけにもなって、役に立つ。
前にここを使っていた奴らの、置き土産があった。
スラ太郎に処理して貰う。
ちゃんと埋めておけよと思ったが、レンタル期間が終了間際なら、わざわざ手間はかけないか――
俺たちのパーティはスラ太郎がいるから、汚物の処理に手間はかからない。
特に女性陣から、スラ太郎は重宝されている。
旅の間は不思議と排泄はほとんどしないが、腹を壊した時などにはスラ太郎は必須と言ってもいい。
排泄などの痕跡を残していけば、魔物や盗賊に付け狙われる危険もある。
周囲のスペースに、チラホラと人がいる。
残っているのは、留守番要員だろう。
防犯にも気を付けなければいけない。
馬車は悪路を進む場合、乗り心地は最悪で人が乗れるものではない。
俺たちの荷馬車は頑丈だが、乗り心地はかなり悪い。
舗装された道でも、ガタガタ振動が来る。
そのため荷物運び用と、割り切って利用している。
荷物の保管場所として使っているので、旅の間にかなり強度を上げてある。
山賊から大量に手に入れたシミターを材料に、鉄でコーティングしてある。
入口に鍵も付けたので、簡単には中の物を盗めないだろう。
だが時間を掛ければ、鍵開けも馬車の破壊もできる。
馬を盗まれるリスクも考えれば、見張りは常につける必要がある。
俺以外の八人でチームを二つ作り、留守番と戦闘訓練を交互に行った。
肉は大兎を一匹狩れば、十分な量が手に入る。
塩や胡椒、旅の間で手に入れた香草やハーブで、適当に味付けをして食べる。
かなり美味しかった。
キャンプで食べる食事は、二割増しで旨くなる。
――特にトラブルもなく、一週間が経過した。
「そろそろ、結果を見に行くか……」
仲間募集の結果は、もう出ているだろう。
俺たちはキャンプ地を一旦引き払い、冒険者ギルドへと移動する。
受付に居たのは、前にも居た態度の悪いBBAだった。
運が悪い。
だが、出直すのも手間だ。
我慢するか――
俺達は、受付で結果を聞く。
パーティ加入希望者は、三名いたそうだ。
…………。
頭、大丈夫かよ。
そいつら。




