山賊の懸賞金
『冒険者の町』と呼ばれるイーステッドは、このラムダドーラ王国のちょうど中央にある。
新人冒険者が集まる街として知られているが、この国の二大都市の中央に位置することから、交易が盛んな都市でもある。
イーステッドから見て西に旧王都ラムダールがあり、東には現王都ラムドラルスがある。そこから東にアルトレプス山脈が連なっており、ラムドラルスはこの大陸の国々の間では、極東とされている。
現在工事中のアルトレプス山脈を貫通するトンネルが完成すれば、大陸の極東はさらに東の、チリーズ王国ということになるだろう。
チリーズは海に面している国だ。
そこと交易が行われるようになれば、海産物も輸入されるようになるし、塩の価格も下がってくれるかもしれないと、期待されている。
俺達の暮らすラムダドーラ王国は、取るに足りない田舎の小国に過ぎないが、山脈を貫くトンネルが完成すれば、その位置づけにも変化があるだろう。
この世界の都市は、まず中心となる街を作り、それを囲むように新たに町や村、農場を構築していく。
そうすることで、女神の加護の効果エリアを重複させて、人の居住地として利用できるエリアを、より広く確保するようにしている。
しかし、このイーステッドには、中央を囲む周辺の町は存在しない。
元々ここは、西から東へと開拓を進めるための足掛かり――
そんな位置づけの街だった。
そのため当時の為政者が街の発展には熱心でなかったのと、魔物狩りを行う上で、周辺に町を作らない方が利便性が良いというメリットもあったので、女神の加護の無い壁外地区が拡大される形で、独自に発展していった。
イーステッドの壁外地区は、北側が平民出身の冒険者が多く住み、南側は貴族階級の騎士や傘下の兵士が暮らすエリアになっている。
取り決めたわけではないが、自然とそう別れていったらしい。
俺が目指すのは北側の、平民エリアだ。
イーステッドの壁外地区は、サイザルと比べるとかなり大きい。
北に向かって、縦長に伸びている。
壁外地区の一等地は門の周囲で、北に行くほど治安と建築物は悪くなる。
「さて、まずは拠点を決めないとな」
「お金もたくさん手に入ったんだし、いい宿に泊まりましょうよ」
山賊を討伐した時に手に入れた金と、それとは別に冒険者ギルドからも報奨金が貰えるらしいので、スタートしたばかりなのに金は潤沢にある。
アカネルの意見は妥当なものだし、他の皆も概ね同意している。
だが――
「いや、俺は初心者らしく、底辺からスタートしたいんだよ」
「――は? 馬鹿なんじゃないの?」
……やはり、俺のこだわりは理解されないか――
旅行でも体験型が人気だったりするじゃないか、俺は前世で碌に旅行なんてしてないけど――
せっかく、異世界転生したんだ。
いろんな体験をしてみたい。
…………。
このパーティのリーダーは俺だ。
俺が方針を決める。
俺が自分の意見に固執していると――
「取り敢えず冒険者ギルドに行きましょう。ギルドカードの更新や、私達のパーティ登録もあるし――」
レイレルが仲裁するような、提案を出してくれた。
――そうだな。
まずは冒険者ギルドだ。
この世界では口約束も有効で、ちゃんとステータス情報に反映される。
だから、レイレルとラズとリズは、もうすでに俺のパーティの正式メンバーだ。
だが、冒険者ギルドに登録していないと、その情報はギルドシステムには反映されない。
この辺りは少しややこしいので、冒険者はこまめに冒険者ギルドに顔を出して、情報を更新したほうが良い。
――くらいに、把握しておけばいい。
ギルドの場所は、レイレルが知っているので案内してもらう。
俺たちは馬車を、冒険者ギルドの側に停めて中に入る。
従魔三匹は、馬車で留守番だ。
イーステッドの壁外地区の冒険者ギルドは、サイザルのものと比べても大きく、利用者も多い。
ギルド内は人でごった返すほどではないが、いくつかのパーティが訪れていて、活気は感じられる。
まずは、ラズとリズの冒険者登録をする。
入会金はサイザルと同じで、一人銀貨一枚。
その後で、レイレルとリズとラズのパーティ登録を行い、ついでにモンスター討伐情報の更新も行う。
ギルド貢献度が一気に、2390ポイントまで増加していた。
1500を超えたので、俺達『白銀の竜の翼』はアイアンランクに昇格した。
5000ポイントを超えれば、シルバーランクになるらしい。
街道沿いにいた、ウォー・ウルフの特殊進化個体の討伐と、山賊団の壊滅が評価されたようだ。
特別報奨金も合計で、金貨百十枚が振り込まれていた。
ついでに、山賊から回収した硬貨を、ギルドカードへと振り込んでおく。
大量の硬貨を持ち歩くのは重いし、防犯上の懸念もある。
街にいる間は、冒険者ギルドの系列店ならカード払いが可能だ。
硬貨は金銀銅をそれぞれ、一通り揃えて持っているだけで良い。
ギルドカードを見てみると、まだブロンズのままだ。
受け付けに行って、どうすれば良いのか聞く。
聞いた通りにカードの変更を行ってみる。
まずは胴で出来たブロンズランクのカードを、カウンターの上の魔道具に差し込む。それでブロンズカードは回収されて、引き替えに、鉄で出来たアイアンランクのギルドカードが出てきたので受け取る。
ラズとリズは、ブロンズからいきなりアイアンランクに昇格だ。
「わ、私がアイアンランク……」
――レイレルが地味に感動している。
この後は、冒険者ギルド内にある、賞金稼ぎ用のエリアへ足を運ぶ。
罪科ポイントの超過者には、女神から懸賞金が懸けられている。
山賊を討伐した、追加報酬のようなものだ。
確認しておこう。
山賊討伐の懸賞金の合計は、金貨千八百枚だった。
――すごいな。
山賊狩りの方が、モンスター退治よりも稼げるじゃないか。
そう思ったが、懸賞金は罪科ポイントの多さで変わってくるようだ。
賊の戦闘能力が高くても、罪科ポイントが低ければ、討伐してもほとんど稼ぎにならないので、賞金稼ぎは当たりハズレが大きいらしい。
漫画のように、懸賞金の金額=強さ。
――みたいなノリではないようだ。
俺たちが退治した山賊団は、かなりの『当たり』だった。
しかしこれだけ稼いだとなると、金の心配は当面しなくていいだろう。
次はこの町で、仲間探しをすることにした。
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名前 ユージ
HP 230/230 MP 284/284 FP 220/220
冒険者パーティ 白銀の竜の翼 アイアンランク
ギルド貢献度 2390
幸運力
058~-011×2
スキル
空間移動 危険感知 ウォーター・クリエイト
所持品
魔石値 0073110
回復薬 8個
避妊薬 6個
性奴隷
アカネル モミジリ イルギット サリシア ナーズ ラズ リズ レイレル
預金 金貨100枚 パーティ資産 金貨2330枚 所持金 金貨50枚
才能
大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器
職業
勇者Lv19 魔法戦士Lv02
戦士Lv33 剣士Lv34 武闘家Lv29 弓使いLv26 槍使いLv30 盾使いLv03
教官Lv15 指揮官Lv03
魔法使いLv37 魔術師Lv38 魔物使いLv25
冒険者Lv20 旅人Lv19 探索者Lv30 斥候Lv28
隠密Lv32 暗殺者Lv35
遊び人Lv40 ギャンブラーLv37 ハーレムマスターLv42
山賊狩りLv10 賞金稼ぎLv15
薬師Lv28 錬金術師Lv35 鍛冶師Lv34
農夫Lv15 薬草採取者Lv25
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所持金の銀貨や銅貨は見やすいように、金貨に換算して表示されるようにしている。
そういえば職業に魔物狩りとかは付かないんだろうか?




